は、◯、た、の、塩!(ダークネス)
9歳の頃までずっと信じていた。
自分は風とおしゃべりできるんだと。
風は自分には見えない。
自分も自分には見えない。
だから似たもの同士。
気も合うし、話しかけてくれると思ってた。
風が吹くたびに、風の気持ちがわかるような気がした。
ビューと吹く日は、機嫌がわるいの?と話しかけた。
落ち込んでいる日には、やさしくそよそよと話しかけてくれたりもした。
10歳も近づくおり、学校で授業があった。
「今日は、なぜ風が吹くのかを考えましょう」
私は自信満々に、話しかけてくれるから。と思った。
プリントに書いてあったのは、それとは全く関係のない、雲の絵。
上昇気流と下降気流と。気圧の話を、先生がしていたように思う。
教室は静けさに包まれていた。
黙々と聞くみんな。
その時からだ。
風の声は、全く聞こえなくなってしまった。
風は、現象の一つに過ぎなかった。
みんな、それを知識として受け取った。
先生がそう言っていたから。
プリントに、そう書いてあったから。
学校で、そう教わったから。
みんなが平等に共有できて、考えるタネになってくれるありがたい「知識」。
それのせいで、大切な友達を失った気がした。
それからは勉強、勉強、勉強につぐ勉強。
風はもう吹いたかどうかも覚えてはいない。
風はどう思ったろう。
何年も無視して。
風に、あやまらなきゃ。
あやまってこなくちゃ。
今日は強風だ。
怒ってたかな。
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