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救えないけど救われた日々

‌ ‌2022年最後のお祭りが幕を閉じた聖なる日。
ケンタソーヤング主催の漫画脳展拡大号において少数派である被写体としての出展者が、熱の冷めないうちに記憶と記録を書き記すこととする。


ダイナマイト生成

‌ ‌2022年1月に開催された「漫画脳展」が帰ってきた。前回より出展者が増えたにもかかわらず、何故か爆発的な個性に溢れる表現者しかいない。写真好きから漫画好きを抽出するととんでもないダイナマイトが生成されることが改めて判明した瞬間である。

漫画脳展拡大号 DM

‌ ‌出展メンバー全員を知った時、かなり感情が昂った。いち芸術好きとして「絶対に面白いものを見られる」と確信。早くも来場者視点で会期が楽しみであった。

出展にあたって

奇跡のブース割り


 ‌今回出展するにあたり、私に表現者としての絶好のチャンスが回ってきた。出展ブースの割り当てがそれである。

  1. 前後左右に他の出展者のブースが無い独壇場

  2. 照明が暗い

  3. 人ひとり分の狭い通路のため、来場者に長時間の鑑賞を臨みづらい

‌ ‌これは私にとって三重苦ではない。特大物のラッキーが一気に3つも舞い込んできたと思えた。1に関しては、イコール好き勝手できるということなので無問題。2に関しては、主催者から闇が深いと言われて久しい私にとって無問題。3は…まあ何とかしよう!チャレンジ!ということで作品づくりに挑んだ。


セリフを読み取る

‌ ‌テーマにするセリフは1年前から決まっていた。仮に展示が無くてもこのセリフをテーマに作品をつくる予定だったのだ。そんな折に決まった出展、悩む余地は無かった。

ただの通信手段の機械に人の絆の強さを試されたくなんかないのに

NANA・9巻

‌ ‌NANAという漫画を初めて読んだのは高校生の時だった。出版されている全ての巻を一気に読破し、深夜に大きな絶望感に襲われ群発頭痛を発症。翌日まで具合の悪さを引きずったものである。だからこそ記憶に残り、大切で大好きな物語だ。
‌ ‌このセリフは令和の時代こそ共感できる方も多いのではないだろうか。NANA9巻の発刊は2003年。SNSが発達していない時代にこのセリフが浮かんだ矢沢あい氏はきっと未来人に違いない。

‌ ‌今を生きる我々は、他者とのコミュニケーションの際、対面よりも電波に乗せた方法を採ることが圧倒的に多い。生活する上で無くてはならないツールである携帯電話は、片側で我々の心を砕く凶器となり得る。
‌ ‌年賀状で近況報告をすれば友人関係を保てていた時代は終わり、数ヶ月LINEが返って来なければ “疎遠” であるという認識がニューノーマルとなった。“疎遠” の対象が増えれば増えるほど(実際にはたったの数名であっても)、全世界から疎外された気持ちになり孤独を感じやすくなったと考える。

‌ ‌そんな感情になってしまえば、SNSのアカウントを消したり、Twitterの呟きを全消去したりしたくなる衝動に駆られるのも無理は無い。私はそれを絶対に受け止めるし尊重したい。メンヘラだと馬鹿にしたりは決してしない。

‌ ‌私はひとつのセリフから上記のようなことを漠然と感じ取った。実際のところ「あー、わかるわかる、そーゆーことあるよねぇ」といった感じであったが格好つけさせて欲しい。
 ‌ともあれ誰しも感じたことがあるであろう、電波の海に取り残される孤独感。それを作品に落とし込むことにした。


展示作品について

ブースを活かす展示

 ‌先に挙げたブースの特徴をプラスで活用する方法は、割り振られた場所を見てすぐ3つ思いついた。

  1. 独壇場で好き勝手できるなら壁の色を作風に合わせて変えてしまおう

  2. 照明が暗いなら光らせればいいじゃない

  3. セリフとリンクしていることがひと目で分かる1枚絵にして、通路で来場者を深く悩ませないようにしよう

この3つである。私はこの条件をいかに精度高く作品に反映させるかに最も注力した。その結果仕上がったのが今回の展示作品だ。直接作品をご覧頂けなかった方々には申し訳ないのだが、直接目で見る以外にあの展示の見方は無いと考えている為、今回は作品データも展示を写メったものもSNSには載せないつもりである。

 ‌本当は超直感型の私とカメラマンyamaが初めて撮影の打ち合わせをした(しかも5時間も!)ことなども記したいのだが、普段どれだけ勢いだけで作品を作っているのかと呆れられかねないのでここでは伏せさせて頂きたい。


ブックのマジック

 ‌最も精神を注いだのは1枚絵の展示作品だが、最大に時間をかけブラッシュアップし続けたのがブックである。カメラマンyamaとは3年半様々な作品をつくり続けてきた。どの作品においても共通しているのは、「救いようのなさ」である。そして図らずも、どの作品にも携帯電話が登場していた。

友情出演カツヤくん

 ‌これまでの作品たちと新たなカットを数枚入れて、携帯電話の陰と陽の部分を走馬灯のように駆け巡らせたのが今回のブックである。

こんなに気持ちに波が生まれるなら、
いっそ携帯電話なんていらない

‌ ‌そのような感情が芽生えた主人公が、展示作品のような行動に出るまでの気持ちの機微がより色濃く出るよう、選定・配置を工夫した。

 ‌セリフと展示作品を分かりやすくリンクさせたと前述したが、それだけだと「分かりやすい作品だな」で終わってしまう。20ページのブックを読んだ貴方だけが、「あぁ、こういうことがあったんだ」と、再び展示作品へと顔を上げる。その時、顔の写ってない主人公の表情を想像できたら…。そのような魔法をブックに込めた。

タイトルは3日目にマッキーで書いた


おわりに

 ‌これまでちんたらと2000字以上も作品について説明をしたが、要は

がんばったよね私たち!!!

ということである。漫画脳展に始まり漫画脳展に終わる2022年、表現者として魅せ方に磨きがかかったと信じたい。

 ‌そして何より想像を超える圧と、1週間新たな発見を与え続けてくれたダイナマイトによる作品たち。私はあれらを毎日目にすることができた最高の幸せ者である。ひとりひとりnoteで語りたいくらいだ。



 ‌1回観るだけでは足りない、もはや住みたいとすら思える空間づくりをしてくれた主催者ケンタソーヤング、運営のみぞさん・もーりーまん・こなみさん、総勢42名のダイナマイトとたくさんのご来場の皆様、そしていつもSOSに応えてくれたカメラマンyamaに深く深く感謝の意を示し、私の漫画脳展拡大号を閉じることとする。

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