脱毛症の元彼との夢を見た②
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彼とはその後も頻繁にやり取りをして、2ヶ月に一度は会うようになっていた。
その頃私と彼は19歳。
私は高卒ですぐ就職していたが、彼はまだ学生だったため、基本的には私が彼の所へ行っていた。
新幹線だけで往復5万円はしていたので、当時の私からしたら高い出費だったなと思う。
2回目のデートも彼は相変わらず髪に触られるのを嫌がり、私も2度目なので何も感じなくなっていた。
3回目会う約2週間前、彼は電話越しにぎこちなさそうにこういった。
ずっと隠していて悪かった、と。
そしてぽつぽつと歯切れ悪そうに、自分が幼い頃から全身脱毛症を患っていること。
治療法も効かず、今も治っていないということ。
髪に触れて欲しくなかったのは、ウィッグである事を私にバレて幻滅されたくなかったからだと、半泣きになりながら私に告げた。
そりゃ、正直驚きはした。
身近な病気ではないからそのような症状の人に会うのは初めてだし、ウィッグって事は髪の毛1本もないという事で、想像がつかなかったのもある。
だからといって、見た目以外は何も変わりのない気の合う素敵な彼だったのだから、今更カミングアウトされたところで気持ちは何も分からない。
私はただ、辛かったね、大丈夫、それでも好きである事を伝えた。
彼は幻滅されるのが本当に怖かったのか、電話越しにずっと泣きじゃくってたのが今でも最近の事のように感じる。
それから彼は私の前でウィッグを外し、ありのままで接してくれることが増えた。
スキンヘッド彼氏なんてものも、
まぁなかなか新鮮で、割と似合ってたので
こちらもしてもありがたかった。
時には彼の実家に泊まらせてもらったり、彼の家族と食卓を囲んだりで幸せな時間を過ごす事もあったが、彼との付き合った期間はたったの1年だった。
原因は私にあるし、彼にも何かしらあったのかもしれない。
しかし一番の原因はコロナによる非常事態宣言だった。
必要最低限でしか外出してはならないというルールにより、私は彼の住む仙台へ行けなくなってしまった。
彼を含め、彼の家族は皆医療関係者であり、特にその辺は厳しかった。
最初の数カ月は我慢できたが、あまりにも会うことを拒否られた事により私は我慢の限界で。
最終的にはLINE、Instagram、Twitter、SNSアプリを全てブロックされてしまい、もう二度と会えなくなってしまった。
SNSで出会ってしまった以上、共通の友達なんていなかったし、感情だけで駆けつけられる距離でもなかった。
音信不通になってから最初の数ヶ月は狂ったように自分を失っていた。
復縁工作してもらおうと水商売に手を出した事もあったし、
もういっそこの世から消えてしまおうともしたし、
仕事でも毎日のように泣きながら作業した。
今でも時々、彼がどうなっているのか考える時もある。
そんな彼が、先日久しぶりに夢に現れた。
相変わらずウィッグを被り、私に優しく笑いかけてきた。
あれだけヒステリックになっていた女に向ける顔じゃないでしょうに。
ちょっと皮肉のような事を思いながらも、内心とても嬉しかったんだと思う。
夢の内容はあまり覚えていないけれど、お互いの今の様子について語っていた気がする。
「あれからどう?いい人はいた?」
「もちろん、お前と別れてから4人くらいと付き合ったよ」
「いやいや、私と別れてまだ3年位しか経ってないやん、笑」
「お前と違ってまともでいい彼女達だったよ」
「悪かったですね、ヒステリックな元カノで」
昔の友達が久しぶりに再会して話すようなノリで笑いあった。
そっか、4人もの女が君を認めて受け入れてくれたのか。
自分の病気で苦しんできた彼が、彼女がたくさんできたとそう自慢げに語れるまでになっていたのが嬉しかった。
目を覚ますと、私の今の彼が気持ちよさそうに隣で寝ていた。
彼がいるのにこんな夢を見てしまった罪悪感を少し感じた。
彼は私がもぞもぞ動いてしまった事で、寝ぼけながら私に抱きついてきた。
そしていつものように寝ぼけながら、
大好き
という言葉をくれるのだ。
私も、今はちゃんと幸せだ。
脱毛症の元彼との事は、もちろん私の夢の中の話だから、実際はどうか分からない。
でも、本当である事を私は心から願いたい。
大好きだったあなたが、今どこかで誰かからたくさん愛されていますように。