何故「親友」にお金を貸してはいけないのか?
もしあなたが、親友から「お金を貸して欲しい」と言われた場合、どうするでしょうか?
「アイツは親友だから裏切るはずがない」と思って貸すでしょうか?それとも「貸した金は返ってこない」と思い、貸さないでしょうか…
家族の同意を得るのは難しい
もしあなたが男性で、奥さんにこれを相談した場合、ほぼ間違いなく反対されるでしょう。
「貸した金は絶対返ってこない!」
「いきなりお金を貸すなんて非常識!」
こんな感じで反対されるかと思われます。
男の友情に口を挟むな!
これで「そうだな、やっぱやめとこう」と考えることもあるでしょう。しかし一方で、
「アイツが裏切るはずがない!」
長年の親友に対し、それを知らない人間から「怪しい」「絶対信用するな」と言われた場合、どうでしょうか?おそらくあなたは親友を怪しむよりも前に、奥さんに対して怒りを覚えるのではないでしょうか?
本人としては長年付き合っていた親友で、その人の裏も表もよく分かっているはず…にもかかわらず、突然現れた見知らぬ詐欺師みたいに言われた場合、言われた側の胸中は決して穏やかではありません。
むろん、奥さんの側からすれば「貸した金が返って来なかったらどうすんの!」と言いたいわけです。しかし、相手が親友ということで信頼している旦那さんからすると、
「そんなことは絶対に有り得ない!」
いや、それだけならまだいいんです。問題はその後、
「生意気な口を聞く妻を見返してやりたい!」
自分の親友のことを、何も知らないのに詐欺師か何かのように疑っている。そんな妻に対し、親友が約束をしっかり守って返済したとした場合、どうでしょうか?
「ほら見ろ、俺の言った通りじゃないか!」
「お前は俺みたく人を見る目がないんだよ」
「知らない事にいちいち口出しするな!」
そうやって勝ち誇りたい。いわば、
マウンティングしたい
のです。
「親友」はお金を返してくれるのか?
では、家族の反対を押し切ってお金を貸した場合、お金は返ってくるのでしょうか?
「それでも親友なんだから…」
「返さなければ大事な親友を失うだろ」
「借金を踏み倒すなんて非常識だろ」
そも思われる方も多いかもしれません。しかし現実問題として、
やっぱり返ってこない…
のです。例えば1000万円を貸したとして「800万円しか返せない」「返済時期が1年遅れる」というのならば、まだよい方で、
1円たりとも払わず、連絡がつかなくなった
こういったケースは決して少なくありません。
では、連絡がとれるのはマシな方かといいますと、必ずしもそうとは限りません。「すぐ返せ!」「いつ返すんだ!」と相手を急かしても、のらりくらりとかわすだけであったり、挙句の果てには、
「言い方が悪い」
「そんな言い方をするから返す気がなくなった」
などと因縁をつけられ、まるでこちらのせいでお金が返せないかのように逆ギレをする…そんなケースが決して珍しくないのです。
「貸した金」はどこに消えたのか?
いくつか可能性はあるのですが、最も多いケースとして、
他の借金の返済に充てた
このケースが高いといえるでしょう。このように書くと、あなたはもしかしたらこのように思われるかもしれません。
「そんなバカな!」
「他に借金があるなんて言ってなかったぞ!」
実はこれが「大きな落とし穴」なのです。もし、あなたの親友があなたに対して借金を申し込むとします。そして要求額が例えば1000万円だとしましょう。
・今、借金が1億円ある
・消費者金融(サラ金)からもかなり借りてて…
・実は、一番の問題は闇金融なんだ…
このような事情を伝えられた場合、どうでしょうか?当たり前ですが貸さないでしょう(というより、怖くて貸せないです)
この状態ですと、1000万円のお金が手に入ったところで「焼け石に水」です。さらに性質が悪い事に、1000万円を急に返した相手に対し、債権者(=お金を貸した人)はどう思うでしょうか?
「もっと借りて来い」
おそらくこのように言うでしょう。その結果、
あなた以外の「親友」にも借りまくっている
この可能性が高いです。そしてこれが「貸した金が返ってこない真相」なのです。
「バカ」「非常識」「世間知らず」
親友と思っていた人物からの、まさかの裏切り…当然ですがあなたは非常に悔しい思いをするでしょう。
それだけではありません。
妻を見返してやる
このような目的でお金を貸した場合、それが返ってこなかった時の奥さんの反応は果たしてどうでしょうか?
「バカじゃないの?」
「どんだけ非常識なの?」
「あなたって本当に世間知らずね!」
お金が返ってこない以上、完全に「あなたの負け」です。それでも1000円とか1万円程度、いわば「お小遣いの範囲内」ならばまだよかったのかもしれません。
それが100万円、500万円。あるいは1000万円を超える金額だとしたら…
もしかしたら、あなたの家庭は崩壊してしまうのかもしれません。あなたとしては友情、あるいは親友を守りたい一心で行った。いわば「男気を示した」つもりだったのかもしれません。ところが完全にそれは裏目に出てしまった…
残念ながら、あなたに対する世間の評価は残酷です。
・無知なおバカさん
・世間知らずの非常識
そしてあなたはこれに対し、何も言い返すことが出来ない…
「親友に裏切られた」「家族から見放された」。そして「世間からバカにされた」。あなたのプライドはズタズタに引き裂かれ。世間体も完全に丸潰れ。
精神的なショックが原因で、酷いうつ状態になってしまってもおかしくありません。では、こうならないためには一体どうすればよかったのかといいますと…
失敗の原因は「相談者」
失敗の原因は何でしょうか?親友と信じた人間に裏切られた事でしょうか?あるいは親友の裏切りを想定できなかったことでしょうか?
実は、
最初に相談したのが家族だったこと
これが一番の失敗原因なのです。親友にお金を貸そうか、もっといってしまえば「お金を貸したい」。即ち「親友を助けたい」と思っていたあなたに対し、胡散臭い詐欺師か何かのように否定されたことに対し、
プライドが傷つけられた
そう思ってしまったことが全ての不幸の始まりなのです。結果、親友が置かれている状況(返済能力、他の借金の有無等)を冷静に考えることが出来ず、
俺をバカにした人間を見返してやりたい
そうなると方法は1つしかありません。「親友にお金を貸して、無事返済させる」です。
あなたがお金を貸す目的は何だったのでしょうか?本来であれば「きちんと返済してもらう」ですよね。だとすれば、返済能力を審査するのは当然のことです。
しかし、家族に否定されたことで、その目的はいつの間にか「返してもらう」から「プライドを保つ」になってしまっていた…これが一番の失敗原因なのです。
実は、こういった場合、最初に相談すべきは家族ではありません。もしかしたら、あなたは「大事な事だからこそ」最初に相談すべきは家族だと思われたかもしれません。
しかし実際はそうではありません。「大事な事だからこそ」最初に家族に相談してはいけない。では一体誰に相談すればよいかといいますと…
第三者
です。
最初に相談すべき相手は「第三者」
実は、私の下にもこういった依頼をされる方が少なくありません。依頼内容は「金銭消費貸借契約書」あるいは「借用書」の作成です。
しかし残念ですが、多くの場合、こういった形。即ち「親友にお金を貸す」という形での依頼はお断りしています。理由は前述のとおり、
「踏み倒される可能性が極めて高いから」
です。とはいえ、依頼された内容を一方的に断るわけにもいきませんので、この場合どうするかといいますと、
「お金を貸す相手の財産状況を一度調べてください」
このようにお伝えしています。先ほど申し上げましたように、他に借金がある場合、依頼者の貸したお金がその返済に使われる可能性が高い。そして依頼者への返済は後回し、というより踏み倒される可能性が非常に高いです。
とはいえ、信用調査機関のように厳格な調査が出来るわけでもない。あるいは探偵のように張り込んで、他の債権者と会っている現場を押さえるわけにもいかないでしょう。
では、一体どうすればよいのか?方法は簡単です。
「何故、金融機関で借りないのか?」
「何故、個人から借りる必要があるのか?」
このように尋ねてみるといいです。そしてその理由が、
「いちいち書類を揃えるのが面倒だから」
「わざわざ金利を支払うのがバカらしいから」
このように言われた場合、基本的には「クロ」です。何故ならこの場合、借りようと思えば借りられるのではなく、
借りたくても借りられない
これが現状だからです。極端な話、担保(不動産等)があり、収入も十分いある。あるいは事業が順調であれば銀行や信用金庫等から借りるのがベストです。また、銀行で借りすのは難しくても他の金融機関(ノンバンク等)、あるいは公的機関からの借り入れは可能です。
一方、そういった状況でない場合はどうでしょうか?残念ながら他の機関で借りなければならない。例えば借りるのは簡単な代わりに利息が高い。即ち消費者金融(サラ金)等が一つの方法でしょう。
さらに、それでも借り入れが厳しい状況となってくると…
つまり「無担保」「無審査」でなければ借りられない。当然ですが、そんな状況で借りられるのは、よほど怪しい機関。そして全く逆。
身内や親しい人間
です。
即ち、あなたにお金を借りる人間の多くが「返済能力がない」人なのです。しかし、これを専門家に言われた場合、どうでしょうか?おそらく相談者の多くは納得するでしょう。実際に私自身、本人に返済能力がないことを知った後で契約書作成の話を白紙にされるケースが大半です。
嘘も方便では?
ただ、このような状況でも、親友にお金を貸すことを「断れない」という方がいらっしゃいます。例えば、あなたが親友から1000万円のお金を貸して欲しいと言われたとします。そしてあなたはその金額を用意できるとしましょう。
この場合、断る方法は簡単です。
「そんな大金、用意できない」
これでOKです。ところがこれを断れない方が一体、どのように考えていらっしゃるかといいますと、
「嘘をついてはいけないのでは?」
「親友に対して不誠実なのでは?」
繰り返し申し上げますが、相手は貸したお金を返せない可能性が極めて高いのです。仮に親友という方の提示した希望額が「少ない」「はした金」と思っているのであればそれでも構いません。
例えばもし、あなたが「1億円なんてポケットマネーみたいなもの」という考えの方であれば、それを気前よく貸す。あるいは「いっその事、貸すのではなく、あげてしまえ」ということでも一向に構いません。
しかし現実問題として、そういった方はほとんどいないでしょう。したがって大半の場合は「貸さない」。あるいは1,000円とか、10,000円といった少額のお金を貸して「お引き取り願う」のがベストな選択なのです。
それでも相手が「お金がないはずはない」「何故、そんなケチな事を言うのか」と、しつこく食い下がってきた場合、
「実は今から起業する予定で」
「家族で豪華な旅行を計画している」
つまり、自分も大金が必要としていくことを伝え、うまくその場を逃れた方が賢明です。相手としても、本人の事情を無視してまで自分にお金を貸すのが優先だとは、さすがに言い難いですので。
もし断ったら、親友はあなたを恨むのか?
せっかくお金を貸した親友が、返さないどころか、あなたに対して逆ギレをしてくる…このような状況に遭った場合、あなたは非常に大きなショックを受けるのかもしれません。
しかし、実は逆もまた然りなのです。一体どういうことかといいますと、
断ったあなたを、相手は思ったほど気にしていない
のです。
あなたがお金を貸すのを断ったことにより「アイツのせいで人生台無しになった」とか、あるいは「会社が潰れたのはアイツのせい」とか、そういったことになるかというと、実際問題としてそういったケースは思ったより少ない。というより、ほとんどありません。
逆に、その時、思い切った断った親友がしばらくすると、再び現れて、
「あの時は大変だった」
「ようやくピンチを脱した」
あるいは、
「自己破産して、大変だが何とかやっている」
このような報告をしに来ること、決して珍しくはないのです。
だとすれば、その時にやってきた親友を、あなた自身は快く迎え入れてあげるべきではないでしょうか。そして、その時に「家族に言わず」お金を貸さなかった場合、もしかしたら奥さんからこのような小言を言われるのかもしれません。
「何で私に相談しなかったの?」
「こういうのって最初に家族に言うべきじゃないの?」
もし、あなたが「最初に」第三者に相談した。そしてその結果、家族に相談せずに親友にお金を貸さなかった場合、このように答えればよいのです。
「結局、貸すなって言うだろ?」
そして親友が無事借金を完済する。あるいは破産や再生という事態を受け入れたことをもって、
「やっぱり俺の考えたとおりだろ?」
このように言えば大丈夫なわけです。
もし、あなたが「奥さん」だったら?
逆に、あなたが女性で、旦那さんが「親友にお金を貸そうかと思っている」と言われた場合、どうするべきでしょうか…
前述のとおり「絶対返ってこない」「お金を貸すなんて非常識」といった場合、逆に相手のプライドを逆撫でしてしまい、あなたに内緒で親友にお金をしてしまうなんとことになりかねません。
そしてこういったケースの大半が返ってこない…実際に返ってこないことが分かった後に「何故貸した?」「だから私は反対した」と言ったところで、お金が戻ってくるわけではありません。
結局、不毛な言い争いで終わってしまうのです。
では、この場合どうすればよいのか?これは旦那さんのケースと全く同様、家族よりも第三者に相談する事。というより、
第三者の相談をすすめる
これがベストです。そして第三者、即ち専門家の相談を受けた結果、その親友に返済能力がないこと。そして他にも多くの借金がある可能性があることが分かった場合、それによってお金を貸すことを諦める可能性が非常に高いといえます。
大事なことは「夫婦のどちらが勝つか?」あるいは「家族の誰が勝つか?」ではありません。
お互いに協力して、リスクを回避する事
です。
そしてそれは、必ずしも当人達で全てを解決しようとしない…実はこれが一番安全、かつ堅実な方法なのです。