カバー曲『secret base〜君がくれたもの〜(ZONE cover)』と、曲にまつわる思い出について
今回、表題の曲をカバーした。この曲は、歌詞にも出てくるように、夏の終わりの曲であり、今の時期にぴったりの曲である。そして、自分は1987年度生まれだが、その辺の世代にとってはすごく馴染みのある曲だと思う。
ZONEが大流行していたのは、自分が中高生だった2000年代初頭だった。自分はそんなに大ファンというわけではなかったが、テレビによく出ていたので有名な曲は知っていた。当時の自分は、スピッツ、奥田民生、ウルフルズ、ブルーハーツなど、ちょうど今の音楽的趣味につながるような日本のロックが好きだったので、あまり流行りの曲を積極的に聴いていなかったが、ZONEの曲はいい曲だなと思った。あと、当時仲が良かった友達がZONEのベースの子が好きやったなとか、友達とメンバーの中で誰が好みやとしゃべってたなとか、そんな思い出もある(ZONEのメンバーも、ニキビづらの薄汚い中学生に、そんな話のネタにされるのは本意ではないだろう)。
とまあ、ZONEが一番大流行していた時には、いい曲やなと思う程度だったのだが、自分がZONEに感じ入ることがあったのは、それから10年の時を経た23、4歳のころだった。
当時自分はサラリーマンを辞め、教員免許を取るためにもう一度大学に通っていた。一度大学を卒業して就職してからの進路変更だったため、両親の金銭的援助は得られず、自分のサラリーマン時代の貯金とバイト代で生活費と学費を賄っていた。そのため、なかなかの極貧生活であり、さらに他の同級生は着々と社会人としての経験を積んでいっているであろう中、自分は目的があるとはいえ、このように燻っていることにかなりの焦燥感を抱いていた。早い話がちょっと病んでいた。
いつもは朝から夕方までバイトし、大学の夜間の授業を受け、帰宅後は単位取得や教員採用試験に向けて深夜まで勉強するという毎日だった。しかしその夜は、なんかやる気が出ず、だらだらとYouTubeで懐かしの曲を試聴していた。そこで久しぶりにZONEの曲を聴いたのだ。懐かしいなと思いつつ、関連動画で当時のZONEが出演しているバラエティ番組の動画とかもあったので、何気なく見ていた。その動画の中で、メンバーが自分の年齢だか学年だかを言っているシーンがあった。
それを見ていて、「待てよ」と俺は思った。当時で中高生ってことは、俺とほとんど年齢変わらんのちゃうかと。すかさずwikiってみると、メンバー全員俺と同世代だった。
当時、ちょっと病んでいたというのもあろうが、俺はその事実に衝撃を受けた。なんてこった、俺が田舎でのほほんと薄汚い中高生をやっていたころに、この人たちは大舞台で必死に頑張っていたのだろう。生馬の目を抜くような芸能界でサバイブするにはとんでもない努力が必要だっただろうし、人気の陰で、いわれのない中傷などで嫌な思いをすることもあっただろう。繰り返すが、俺が香川のクソ田舎のクソ薄汚い中高生としてへらへらしていたときに、彼女たちは必死に戦い、自分を表現し続けていたのだ。
なんか、だらだらしてる自分が情けなくなり、それからはちょっとしっかりしよう、ちゃんと勉強しようという気になった。ZONEのみなさんも、こんな形で聴いた人に影響を与えるとは思っていなかろうが、少なくとも当時の俺のケツを蹴っ飛ばしてくれたのは事実だ。その時俺は薄汚い中高生ではなく、薄汚いクソ貧乏な青年だったが。
あの貧乏生活から10年以上の時がたち、今の俺は教員としてそれなりにやっている(と思う)。しかし、そこに向かうための数ある原動力として、あの夜ZONEに喝を入れられたというのがある。今でも、ZONEの曲を聴くと、あのしんどかった貧乏生活と勉強の日々と、そんな中で与えてもらった希望を思い出す。