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町田洋『砂の都』について

 町田洋の漫画を読むのは3冊目である。これもとても面白かった。

 まず設定が面白かった。移動する大地の上にある町。しかもその町の建物は人々の記憶がもとになって自然現象のように建つという。どんな発想やねん。すごく良かった。

 テーマも面白かった。俺が勝手に思うに、この漫画のテーマとして「時間の経過」とか「喪失」というものがある。例えば、ある老人が亡くなる話が俺はすごく好きなんだけど、実はその老人は名だたるチェロ奏者で、死後に当時一緒に演奏した仲間がやってきたり、その老人が名演を行ったホールが町にできたりするんだけど、「じいさんすげえな」と思うと同時に、もう戻れない全盛期みたいなものになんだか切なさも感じる。他にも、ヒロインのお姉さんが小説家なんだけど、表現の源泉だった「怒り」が消え失せて小説が書けなくなったという場面がある。人間は変化していくものだから仕方ないけど、なんだか切ない。多分、俺も知らず知らずのうちに失ったものがいくつかあるんだろうなと思う。

 そして、そんなテーマの中でも、失わない方がいいものもあるよっていうのを表現しているのがこの漫画のラストなのではないかと思う。爽やかな読後感だった。

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