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「誰もが休むことに罪悪感を感じることなく、人の手を借りながら子育てできるように」 助産師YouTuber・シオリーヌさん

「HOTEL CAFUNE」のオウンドメディアでは、出産・子育てを経験しながらそれぞれの人生を歩んでいる方々にお話を伺い、さまざまな家族・育児のあり方について考えたいと思います。

今回ご登場いただいたのは、性教育YouTuberのシオリーヌさん。ご自身も助産師、思春期保健相談士、性教育YouTuberとして、妊娠・出産にまつわる情報発信を続けているシオリーヌさんは、今年ご自身も出産を経験されました。そこで、助産師としての経験やご自身の出産などを踏まえつつ、家族・育児について、幅広くお話を伺いました。



きちんと話し合い、評価し合う家族のあり方

(画像左)シオリーヌ(大貫 詩織):助産師/性教育YouTuber 総合病院産婦人科、精神科児童思春期病棟にて勤務ののち、現在は学校での性教育に関する講演や性の知識を学べるイベントの講師を務める。性教育YouTuberとして性を学べる動画を配信中。オンラインサロン「Yottoko Lab.」運営。著書『CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識』(イースト・プレス)、『こどもジェンダー』(ワニブックス)、『やらねばならぬと思いつつ〈超初級〉 性教育サポートBOOK』(ハガツサ ブックス)他

ーーはじめにシオリーヌさんの結婚観についてお伺いをしたいと考えています。現在、事実婚などを選ばれる方もいる中で、パートナーであるつくしさんと入籍をされた理由について教えていただけますか?

結婚するときに、パートナーシップの形について話をしましたね。私は一度結婚をして離婚をした経験があるのですが、その際に苗字が変わることの大変さを思い知らされました。フリーランスなので、仕事の名前と口座の名前が違っていることで初対面でも結婚していることを伝える流れになってしまうことにずっと違和感がありまして。だから、もしまた私が苗字を変える必要があるなら法律婚はしたくないと考えていたんです。

ーーつくしさんのご意見はどうでしたか?

つくしが姓を変えることを構わないと言ってくれたのは大きかったです。また、事実婚だと、子供を認知しなければならず、それが寂しい感じがすると言っていましたね。法律婚だと当然のように二人の子供として認められるのに、事実婚だとわざわざ認知をしなければいけない立場にあるのだということを知り、改めてこうした選択肢が全ての人に与えられる社会にならなければいけないとも思います。

ーーシオリーヌさんはご家族内での話し合いを大切にしている印象を受けるのですが、ご家庭ではどのようにコミュニケーションをとっているのでしょうか。

毎年、結婚記念日に家庭運営会議をやっています。健康やパートナーシップ、家事、仕事、経済などの評価項目を作って三段階で判断をしていて、議事録もちゃんととっています。会社でも定期的に人事評価がありますよね。でも、コミットに対して評価してもらえる仕組みが家庭にはないよねという話になって、頑張ったことが認められる機会を作ろうということがきっかけでした。今年は結婚式を挙げたレストランで二人で2時間くらい話したんですが、その会議がすごく楽しいんですよ。しかも、こうしたタイミングを作ることで、日常生活でも思ったことを溜め込まず伝えられるようになりました。伝える時にも相手を責めるようなことがなくなり、喧嘩も減ったなと思います。

ーー妊娠・出産などのライフプランについてもお話をされていたのですか?

自分自身30歳で子供がほしいという希望があって、それを付き合う前からつくしに話してもいました。つくしは5歳年下なので、もしも私のライフプランが重荷になるなら付き合うこと自体も慎重に考えてねと伝えていましたが、それでも付き合うことを選んでくれました。

ーー人工授精なども行ったと伺いました。ご経験を踏まえて感じたことはありますか。

私が働いていたのは産婦人科の入院病棟だったので、不妊治療などは経験がなく、私としても知らないことだらけでした。大変だということは知ってはいましたが、当事者になるとこんなにしょっちゅう病院に行くんだという驚きがあります。多い週なんて2日に1回くらい病院に行くんです。じゃあまた明後日ね、なんて言われて、仕事の調整ができない人はどうするんだろうって。でも、休みをとって、治療のために有給を消化しちゃうなんて方も少なくないんです。


知っていても体験したら全然違う、それでも知識はある方がいい

ーーその後妊娠されて、つわりにも苦しんだとのことで。

つわり、しんどかったですねぇ。とは言っても、入院も必要はなく、平均的な経過の範囲ではあったのですが、やっぱりしんどくて。編集作業も気持ち悪くなるから全然できない。そんな時期が2カ月くらい続きました。いつ終わるか分からなかったのがつらかったですね。一番しんどかったのが、今まで通りの自分でいられないこと。もともとテキパキしているというのが自分のアイデンティティだったので、それが失われたことで、「お風呂に入りたくない」みたいなことでメソメソ泣いてばかりいました。でも、つくしからすれば「そうは言っても、できることめっちゃやってるよ」と。子供を育てるという大変なことをやっているわけだから、生きてるだけでいいんだよ、と毎日諭されていました。

ーー専門職として知識もあったと思いますが、予想と違ったことはありましたか?

一番実感したのは、人に言うのと自分がやるのとでは全然違うということでした。助産師としては「ちゃんと息して生活しているだけで十分ですよ」って心から思っていたのに、自分に対してはそれで良しとは思えなくて。日常を手放さなきゃいけないことを当事者になってはじめて実感しました。

ーー産む病院はどのように決めましたか。

分娩台に乗らないフリースタイル分娩で産みたいと考えていました。もともと、助産師の実習で伺った病院がフリースタイルOKなところで、自分が働いていたところは分娩台で出産するところだったんです。それらを比較してフリースタイルがいいなと。だけど、医師のいる医療機関でフリースタイルOKというところはすごく少ないんです。最終的にはその中でいいと思えるところを選んで、望んだ形で出産することができました。

ーー無痛分娩などの選択肢も考えられましたか?

これまで何百人というお産を見てきて、自分も経験してみたいと思っていたんです。だけど、それは一回でいいかなと(笑)。もしも今後二人目三人目があれば、無痛分娩にすることも考えています。陣痛が来て、まだまだ痛くなるだろうと思っていたら「子宮口全開です」と言われて。これがマックスなのかという驚きがありました。自分に課したハードルが高すぎたみたいです。なので、正直に言うと、もっと痛いと思ってた、というのが一番の感想なんです。初産婦にしては経過もすごく早くて、その分出血が多くて大変ではあったんですが。

大きなトラブルがなかったということも大きいですが、実際にこれまでの知識やイメージとのギャップがなくて、知っているということはこんなにも強みになるのかと実感しました。一方で、妊娠中にもっと知識が得られる場所は必要だとも感じました。だからこそ、YouTubeを通じて私は配信をしていますし、妊娠・出産を考えている方や学生の方からもコメントをいただきます。私自身のプロセスを公開することで、見てくれる誰かが今後当事者になった時の情報のストックとして、記憶の片隅に置いていただけると嬉しいなと思っているんです。


罪悪感を感じず、とことん休んで

ーーお子様が生まれて、家族観など変化したことはありますか。

夫とのチーム感は増しました。育児って大人二人いてもギリギリだと感じるんです。現在はシフト制で夜中の授乳なども交代しながらやっているのですが、どうしても眠たい時にパートナーが変わってくれたりすると、後光がさして見えるくらい(笑)。もう一人一緒にやってくれる大人がいることのありがたさを感じていますし、子育てが始まってより対話をすることの大事さを感じています。

ーー情報収集はどのようにしていますか。

監修している先生の顔が出ていたり、自治体が出していたりと、根拠のある情報を頼るようにしています。口コミや体験談が得られる情報もたくさんあって、それも参考にはなりますが、あくまでそういうものに左右されすぎないようにしています。そうした体験談は「この家庭のケースだな」と捉えて、自分も同じように進むとは限らない、と考えるようにしています。

ーーこれからの育児において意識していることはありますか?

教育という意味でそれほど決めているわけではないのですが、子供がやりたいということを、やる前から否定するような声かけはしたくないと話しています。やりたいことはなるべくやらせてあげたい。もしも経済的な事情などで難しい場合も、「向いていない」などと子供のせいにして断ることはしたくない。子供も家族の対等なメンバーとして接していきたいと思っています。

ーー産後ケアというものに対する印象もお伺いしたいです。

世の中的にも需要があるという認知が広がってきたように思います。そもそも、病院で働いていた頃から、入院期間が短すぎると感じていました。詰め込むように沐浴や授乳、おむつ替えなど全てのことを5日間で説明されて、そこからいきなり自宅へ帰されるわけです。だからこそ、自分が自信を持てるまでみてもらえる場所として産後ケア施設はとても必要だと思います。そして、そうした情報にもっとアクセスしやすい社会になってほしいとも思います。私のように知識がある場合でも、育児に疲れてきたころに利用して、しっかり休んで、また育児を頑張ろうと思える。そんなふうな仕切り直すための場所としても利用できるのではないかと思います。

ーー最後に、今後出産を控えている、考えているという方にメッセージがあればお願いします。

休むことに罪悪感を感じないでほしいと思います。私自身も妊娠中、つわりで休むことを謝っていたのですが、子どもを望むことは謝らないとならないことなのかとも感じてモヤモヤしていました。育児や出産に関わらず、いろんなタイミングで今まで通り動けないことは誰しも出てくるはずで、そういう時はお互い助け合っていくことも必要だし、休むという選択に罪悪感を感じないでいただきたいんです。産後ケアのようなサービスにおいても、子供を預けることに罪悪感を感じる必要は一切ないし、多くの人の手を借りながら育児に取り組んでいけるといいのではないでしょうか。




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