シンガポールでの旅行ユーザ体験
この記事では2019年10月頭に約5日間シンガポールに滞在し、そのときに得られたユーザ体験や、シンガポールの個人的な見どころについて、ざっくばらんにお伝えします。
決済について
シンガポールでは、クレジットカードが現金を除く主流の決済方法として広く使われています。ショッピングモールやコンビニ、その他チェーン店など、POSをレジに導入しているような場所では、ほぼ確実に使えます。また、日本では馴染みが薄いクレジットカードの非接触カード決済(VISAならpayWave, MasterCard ならContactless)にもほぼ対応しているため、対応クレジットカード、もしくはApplePayやGooglePay(日本のコンビニでりようできるようなGooglePayとは別物)があれば、タッチで決済が完了します。
(自動販売機での非接触決済)
そのため日本人が旅行する際は、非接触カード決済対応のクレジットカードや、ApplePayの決済設定をしていくだけで、タッチ決済ですぐさま決済が済み、非常に快適に過ごすことができるでしょう。
QRコード型決済
シンガポールでのQRコード決済は、使っている人も少なく、またまだまだ対応店舗も少ないかったです。方法はSGQRとして統一されていますが、店舗のシステムによって使えるベンダーはまちまち(例としては、日本でいうと、店頭QRでLINE Payとメルペイは対応しているが、PayPayでの支払は対応されてない感じです)のようでした。
いくつかのホーカーズ(数十店舗の屋台のようなお店が集まる場所)に行ってみましたが、感覚的には対応しているお金は5%程度といった感じで、クレカ決済システムを導入していない店舗では一気にQRコード型決済が進んでいるのかと思いきや、そんなことはありませんでした。
また、後述のGrabアプリを使ったQRコード決済GrabPayも、いくつかの店舗では使えましたが、沢山の店舗で導入が進んでいるかというと、そうではなかったです。なお、日本発行のクレジットカードでも、GrabPayに入金でき、普通に利用が来ました。
GrabPayでの支払画面
そのため、まだまだ現金がいらないかというとそんなことはなく、要所要所で現金が必要になりました。QRコードでの支払いは、店側の導入コストが低いことが多いため、今後一気に広がる可能性もあり、そうするとさらに旅行者は便利になりそうです。
両替所とATM
国際的はハブ都市であること、また陸路ですぐマレーシアに渡れ行き来が盛んなことから、街中の至る所に両替所がありました。日本円を持っていってもすぐシンガポールドル(SGD)に替えることができます。
また、ATMもそこら中にあり、簡単にクレジットカードからキャッシングで現金を引き出せるため、現金化に困ることはなさそうです。ただ、ATMによっては5SGDと高い手数料を要求してきたATMもあったため、その辺は注意が必要そうです。
公共交通機関
シンガポールでは、車の所有に非常に高い税金をかけていたり、混雑時間帯の道路利用に課金をするなど、自家用車を利用すると高い税金がかかるため、一般の人は車を持つことは難しいです。ただ、そのために非常に公共交通機関が発展していると感じました。
帰宅ラッシュ時間帯の課金案内
Googleマップでのルート案内も、とても充実しています。バスならバスがどの場所を走っていて何分後に到着予定なのかリアルタイムに更新され、さらには混雑具合も表示されるため、ルート選びの参考になり、鉄道もバスもとても利用しやすいです。
また、公共交通機関の支払いには、日本で言うとsuicaにあたる交通系非接触カードez-link がよく使われています。ez-link は、カード自体が10SGDで、そこにお金をチャージして使う、suica同等のお馴染みの仕組みです。ただ、今回シンガポールに来て思ったのは、今は ez-link がなくてもまったく問題ないと言うことでした。
コンビニで購入したez-link カード実物。LINE のキャラクター物もあった
理由としては、VISAやマスターカードの非接触決済が店頭のみならず、交通機関も乗れるようになったことです。マスターカードの非接触決済のコンタクトレスはそこそこ前から、VISAの非接触決済payWaveも2019年10月にはすでに対応され、各種交通機関の乗車口で、ez-linkに変わってこれらの対応クレジットカードをかざすだけで乗り降りができます。
ApplePay に対応クレジットカードを登録すれば、iPhoneだけでも同等のことができます。私はAndroidなのですが、妻はiPhoneで乗り降りしていました(ただ、日本のようにエクスプレスカード指定ができないため、毎回FaceIDが必要でめんどくさそうでした)。
なお、Android + GooglePay でも同等のことが本来はできるのですが、日本発行のクレジットカードでは、海外のGooglePay非接触決済への設定が、私が持っていた複数のカードでは、カード自体はpayWaveやコンタクトレス対応ながらも、どれも残念ながらGooglePay上の非接触決済カードとして登録できませんでした。
また、公共交通機関に広告がほぼないことにも驚きました。民営ではなく国が公共交通機関を運営しているためなのでしょうが、本来収益(国の歳入)に直結しそうなことなのに、収益化をあまりしていないとすると、どのような考え方なのか興味深いです。
地下鉄車内の模様。この車両には営利広告が一切ない
また、禁止条項の中で、ドリアン禁止があるのも、ドリアンがその辺で売られている国ならではですね。
ノードリアン
Grab
シンガポールでは、いわゆるUber系の配車アプリとしてはGrabが一番使われているようです。Googleマップのルート検索でもGrabが表示されます。また、例えば空港でGrabを使うと、アプリのUIに「ターミナル3の出口2の場所」等の乗車可能な場所のセレクトボックスが表示されるなど、きちんとシンガポールへのローカライズもされていました。なお、タクシーは深夜料金がかかるのですが、Grabは深夜料金がかかららず空港から安価に移動できました。また、Grab自体の利用料金も、シンガポールの所得を考えると、とても安価です。
空港でGrabを使うと、適切なエリアを選択できるよう、セレクトボックスが表示される
また、他にもGrabはUberEatsのような宅配食事サービス(街中でも時々見かけました)や、電動キックボードレンタルのサービスも行っています。
Grab eScrooter
Grab eScrooter はGrabアプリから利用できる電動キックボードレンタルのサービスです。海外では他国でも電動キックボードレンタルのサービスがありますが、Grab eScrooter は、降りるパーキングがきちんと定義されていたのが面白かったです。価格もそれほど高くなく、5分の利用で0.5SGDでした。
パーキング場所は地図に示されるのですが、降りる時にパーキングの地面に印刷されているQRをスキャンして、はじめて利用完了となります。この、パーキングを実際に見つけないとそもそも適切なQRコードがわからないため、適当に乗り捨てできない仕組みは、今まで利用したサービスでは区間内どこでも乗り捨てOKの仕組みばかりだったので面白かったです。なお、きちんとパーキングに止めない場合は罰金が10SGDとられる旨も書いてあります。
なお、電動キックボードが走っていい地域は、シンガポール全域ではなく、市街地の一部なのですが、今回私が利用したのはカトン地区で、地下鉄駅からはちょっと遠いのですが、eScrooterを利用することでサクッとみて回ることができて、ちょうど良い形で観光利用できました。
今回の滞在では、Grabアプリの機能のうち、配車、eScrooter、GrabPayを使ってみましたが、総じて使い勝手は良かったです。
インターネット環境
インターネット環境は、いくつか滞在したホテルのWiFiはどれも高速で、Google FiもLTEで接続でき、なに不自由ないネット環境でした。政府が主導しているWireless@SGの無料アクセスポイントもたくさんあり、高速な接続が可能でしたが、毎回SMSでの認証が必要なため、いささか接続が面倒でした。
Wireless@SGの速度。アクセスポイントの場所にもよると思いますが、十分高速です
滞在費用
シンガポールの滞在費用は、宿泊費が非常に高いです。街中では、狭い部屋でも一部屋借りると一泊1万強はします。そのため最近は日本でも増えてきている、高級カプセルホテルも増えているようです。ホテルサイトで検索するとすぐ出ると思いますが、宇宙船を模したカプセルホテルなど、いろいろ工夫されていて面白いです。
なお、食費は安いところでは安く、街中のホーカーズでは一食4〜6SGDほど、郊外のホーカーズでは2.5〜5SGDの料金で、中華・マレー・インド料理等々が美味しく食べれてホテルの料金を考えると相対的にかなり安価な食事も楽しむことができます。
名物カヤトースト。毎朝食べちゃう。
マレーシアのニョニャ料理のデザート、チェンドル。様々な国の食べ物が食べれるのも嬉しい。
毎日雷雨の天気予報
気候上、1日の短時間に雨が降ることがほとんどのため、週間予報を見ると毎日雷雨で面白かったです。たしかに、滞在した5日間に雨が降らなかった日はなかったのですが、そのなかでも雨が降るけど、しっかり太陽が出る日もあれば、一日中曇った天気もあって、現地の人がどううまく天気予報を活用しているのか、興味深いですね。
おすすめ観光地(?)、Pukit Panjang 周辺
いわゆるシンガポールのシンボル観光地である、マーライオンやマリーナベイサンズ、クラークキー周辺等々はどのガイドブックにも載っているのですが、6年前も行って今回もつい行ってしまった、Pukit Panjang 周辺が行きやすくかつ実際のシンガポールの人々の暮らしを見れる、という点でとても興味深く見て回ることができました。
Pukit Panjang駅は、Downtown Lineの終着駅で街中から30分ほどで行くことができます。ここの駅には環状線となっているモノレールが通っており、そちらに乗ると、ずーっと同じような10−20階建の高層公団住宅が続きます。ずっと住宅ビル、住宅ビル、住宅ビル…。またモノレールもウネウネと曲がりながら住宅地を進んでいくため、見たことのない住宅ビルのループが続いて、これが、住宅地、か、と非常に面白いです。
また、今回は環状線の途中のPending駅で降りてみたのですが、集合住宅のビルの1Fにはホーカーズだったりマーケットだったりが形成されていて、実際に中心部ではない人達の生活を見ることができます。
イスラム教(ハラル)もそうでない人々も同じ住宅エリアに住んでいるため、回収場所がハラルかそうでないかで分けられている
シンガポールは、面積や資源が限られた島にどのような都市国家を作るか、を考え抜いて作られているため、都市計画も国が基本行います。住宅も住宅開発庁が公団高層住宅を計画的に作っており、国民の8割以上が公団住宅に入居しているとのことで、そのシンガポールの都市計画の一部を垣間見ることができます。
個人的に、シンガポールの国の成り立ちがとても興味深くて、マレーシアからある意味切り捨ての形で独立を宣言することになってしまった1965年、島国で当時(というか直近まで)は水もマレーシアからの輸入に頼らないと供給できなかったぐらい資源の少ない環境で、都市国家としてどう生き抜くかを考え、背水の陣を敷きながら国の進化を優先し、開発独裁政治の下に進化し続けてきて約40年、国民一人当たりGDPで日本を抜き2007年にはアジアトップになりました。そのなかでは計画的な都市計画は勿論のこと、国の官僚報酬を民間企業の役員報酬以上にすることで、民間企業に優秀な人材が流れることを防ぎつつも汚職も防ぐ(民間からの賄賂ぐらいの額では心が動かない)ような、徹底したエリート主義など、リー・クワンユー首相めちゃすごいなぁ等々、とても興味深いです。
なるほど国が管理して徹底的に効率的な住宅地を作ると、こういう形で都市が作られるのかぁ、というのをPukit Panjang地域に行くと感じることができ、文化・アイデンティティとは、国民の幸せとは、高齢者の労働とは等々、色々考えさせられるため、感慨深いので、それらを見たい人にはとてもオススメの地域です。逆に、その辺に興味がない場合、まったく面白くない場合もあると思います。
この本がシンガポールの経済の進化についてもわかりやすく書かれている
なお、帰りは赤のNorth South Lineを北から回って電車で帰ると、中心部に行くまでは地上を走り続けるため、同じような計画的な高層集合住宅を延々と見れたり、工業地帯をみれたりと、いろいろな風景が見れるためこちらもオススメです。
終わりに
シンガポールは観光体験しやすさという視点では、決済のしやすさ、公共交通機関と安価なGrabによる移動のしやすさ、英語の通じやすさの点で、非常に観光がしやすいです。
また別の視点では、国民が中華系74%、マレー系14%、インド系9%と大きく三つの民族が住んでおり、国の言葉としてはマレー語、公用語は英語・中国語・マレー語・タミール語、宗教も仏教・イスラム教・キリスト教等々と幅広いです。街中では様々な言語が飛び交い、ハブ都市国家でもあることから様々な人達が行き交っており、食生活も多様で豊か。ダイバーシティとは、を考える国としても、また前述のような都市国家が経済発展するとこうなる、を垣間見れる国としても、とても興味深い旅先と言えるでしょう。
大型スーパーでは、卵の棚一つでも、様々な卵が売られている
個人的には、都市計画によって発展した都市が好き、というのが改めてわかって良かったです。