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【たまごやきSuzuki】自分の技術を高めて、やり尽くして。これが「ミスター鈴木だ」という技術を残して死にたい。#窓の外美術館 #拠点紹介

5月14日からささやかに始まっている「窓の外美術館」。ほっちのロッヂから歩いて行ける距離にあるカフェや農園、寺院にて、このまちに集まった表現と、そのつくり手のイキザマに出会えます。7月14日までの会期中、その出会いをつないでくれる展示拠点のにない手の、これまた素敵なイキザマをご紹介していきます。

今日は6月1日(月)~展示開始の「たまごやきSuzuki」店主・鈴木保男さん。湘南で40年一筋、本格鮨料亭を経営されたのち、2019年はじめに軽井沢へ移住。ほっちのロッヂと目と鼻の先にある白いデッキが目印のお店は、5月21日よりオープンしています。

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—— もともと1年に1回はご夫婦で軽井沢へ遊びに来られていたという鈴木さん。どういう経緯で出店を決めたのですか。

湘南で店をやっていた時、自分の技術の最高峰を極めるためには、包丁人としてこれでいいのか、まだ(やることが)あるだろうという気持ちでやってきた。でも当時は、1日が終わるとどうしても、社員のこと、お客様のこと、経営状態のことを考えながらやっていて。技術は寝ないでやるしかないわけね。思い起こせば40年の間、2時間、3時間寝られればよかったね。よく大病しないでこれたなという気持ちです。

店を閉めることは50歳の時から思い始めました。25の時に独立したから、一般サラリーマンなら定年の65歳だと。キリがいいからね。

―― 軽井沢でどのようなことをやりたいですか。

自分の技術を高めて、やり尽くして、これが「ミスター鈴木だ」という技術を残して死にたい。今度は経営にかかわるしがらみを無くして、本当にお客さんに楽しんでもらえるような、自分の技術の最高峰を極める。僕の性分からしたら、終わりは多分ないだろうと思うけどね。

―― 納得のできる仕事をするためにはこの場所がうってつけだったのですね。

テラスのあるお店で、お庭を見ながら。ガラス張りのカウンターから見える緑があって、自然の風に浸りながら。僕の料理を食べて、お茶を飲んで、心を豊かにして過ごせて、あそび心を持って。これはお店のキャッチフレーズにもなっていて。そのようにお客様に過ごしていただけたらと思いますね。

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※店内に掲げられた鈴木さんの料理人姿。左上には「心豊かに過ごしたい時 洒落た語らいにあそび心のある処」の合言葉が。

―― これからはその極みを追求していかれると。

これは自分ごとなんだけど、あんまり突き詰めると入っていってしまうんだよ。その世界に。そうすると、顔が難しい顔になる(笑)。妻からもお叱りの言葉が出てくると思うんだけど(笑)。ほどほどにわきまえながら、両立させていきたいね。

―― ご自身が料理を通して表現される中で、アートもお好きだという鈴木さん。表現していく時に、何を大事にされていますか。

あまりこういうことは公言すべきじゃないけど、僕が一番大事にしているのは、自分の持って生まれた感性

僕にとっては料理がアートになると思うんだけど、自分が残した、やったということ全てが己自身の表現だと思っている。だからトイレのお掃除一つにしても、やった結果誰が見てもお粗末なら、それがあなたの人間性だと。何をやっても自分を表現しているということにいつもポイントを持ってやっています。

―― 出来上がったものから、その人の感性とプロセスを読み取ることができるというか。

例えば絵画や彫刻が大好きで。ただ見るだけではなくて、その人がどんな気持ちでやったのか(を考える)。例えば浅間山とふもとの風景なら、どの辺から描いたのかとか、なぜその場所を選んだのかとか、時間は何時なのとか。

仕事にしても、やっていくうちにどうしてこういう風になったのかと思うようになって。従業員に「汚いじゃないか、やり直せ」というのは簡単なんだよ。僕も20代の頃は(そういう伝え方を)したんだけど。言い方が悪かったのかな、忙しくて行き届かなかったのかな、ちょっと風邪で具合が悪かったのかな、悩み事があったのかなと。

「どうだ、悩みでもあるのか」と聞くと、大抵だね。目覚めたように「あ、何かまずかったですか」と言って、僕がココとココと言わなくても、自分で気づいて正す子もいたわけ。まず相手のことを先に、どういう考えでそれを作ったのかということを考えてあげて、導いてあげたいなと。

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※白とパステルカラーを基調とした店内は、「包丁人」として気分を新たに、あそび心をもって技に取り組む鈴木さんの気概をあらわすよう。

―― 鈴木さんにとって、自分らしい表現とは。

前に画家の方から話を聞いたことがある。「風景を描くにしても、そのまま100%すべてを同じように表現しているわけではないんだ。そこにはないものを足している時もあるんだよ。でもそれが僕自身だと思っているんだ」と。それを聞くと「じゃあ嘘をやってんじゃないの」って思っちゃうじゃない。

料理でも、基本は決まっているわけ。例えば卵焼きにも、手順や形に決まったやり方がある。ただ、どんなやり方をしてもいつも僕の思っているのは、口に入れた時の瞬間。テクスチュアと言うんだけど。お客様が口にパッと入れた2~3秒の間に、ウワッと口に溶ける。その瞬間を大事にしたものを、卵焼きの中に表現してるわけ。

だから画家の方が「付け加えたのは嘘といえば嘘だけど、これが僕なんだ」と言ったとき、これが自分を表現することだ、と思った。自分の仕事はもちろん、他人様の仕事を見るときも、その人の心はどこにあったのか、時間やその人の精神状況というものをいつも読み取りながら、作品を見てあげたいと思いますね。

《お店情報》
たまごやきSuzuki(軽井沢町発地1166-40)
電話:0267-46-8896
営業時間:9時~15時 ※ディナーは予約制
定休日:月曜日

《エミリーのオススメ・ポイント》
鈴木さんの腕を極めた「味の美学たまごやき」1,000円(約15cm)/ 2,000円(約30cm)、24時間テレビマラソンで出演者・スタッフに振る舞われた絶品「大名太巻」1,000円~など鮨料理はテイクアウトもOK。気軽に立ち寄れる喫茶メニュー(コーヒーとお茶菓子セット)850円など、あそび心も満点。いずれも税別価格。

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ほっちのロッヂ
info@hotch-l.com
書き手:唐川エミリー
文責:藤岡