マスターのオムライス
オムライスがとても好きだ。
今一番おいしいのは、近所の中華屋さんのオムライス。
俗に言う町中華。昔ホテルの中華レストランでシェフをしていて首相にもふるまったことがあるらしい。(お店に写真がある)
そこの具は豚肉に玉ねぎのみで、くるっと巻かれていない天津飯スタイルのたまご。
そこに追いケチャップされた、わざわざ中華屋さんで食べなくてもいいんじゃないというくらいベーシックな味のオムライス。
思い出しただけで食べたくなる。
私はいつからオムライスが好きなんだろうか、思い返してみた。
社会人になってから、勤務先の真隣にあった洋食屋さんのオムライス。
毎日そこのにんにくの効いたカルボナーラと日替わりで食べていた。辞めるころにはめっちゃ太ってしまった。
高校生の時に初めて食べたポムの樹のドリアになってるやつ。
美味しさに感動してポムの樹ではそれしか食べたことがなかった。
友達に「あんたそればっかりやな」って言われていた。
うーん、もっと前やな…
小学生の頃、近所にあった串カツ屋さんでマスターが作ってくれたオムライス。
ローカルな串カツ屋さんで今の串カツ屋さんのネタより大きくて美味しかったのを覚えている。
串カツばかりだと飽きるだろうとマスターが作ってくれたオムライスが本当に美味しかった。
結構頻繁に通っていた記憶があるけど、毎回オムライスを食べていた。
どうやって作るのか聞いたこともあったけど、
「魔法の粉を入れてるんやで」と、詳しくは教えてくれなかった。
私が中学に上がる前にマスターは亡くなってしまった。
その後も奥さんがひとりできりもりして、オムライスを作ってくれていた。食べる度に奥さんとマスターを思い出話をしていた。
体力の都合でお店は閉店してしまった。跡地にはお好み焼き屋さんが出来ていた。串カツ屋さんだったころの形跡はなんにもなくなってしまった。
記憶がぶわーっと蘇ってきて猛烈に懐かしくなったと同時に、もうほとんど味も覚えていないオムライスが恋しくなった。
かすかな記憶だと、たぶんちょっとだけ串カツソースの味がしてたと思う。