不思議な老人からの教え その⑧ 人は死んで名を残さず。 金を残せ!
この老人と、同じ家に住んでいた期間に
本当に、いろいろな話を聞きました。
全てメモをして取っておけば良かったと後悔していますが
でもそれは、僕の頭の中の、どこかに刻まれているようです。
いまさっき、思い出したことがあったので
忘れないうちに書き残しておきます。
20数年前のある日。
夕方に僕が帰宅したら
やけに、キッチンに煙が立ち込めていました。
その日彼は、
TAMASHIROマーケットに行って魚を買ってきたようです。
魚を焼いているところを覗いてみたら、尻尾の黄色い魚です。
魚の名前は分かりません。
ハワイの魚なんて、美味しいものがないと思い込んでいる僕は
焼き魚は、帰国した時にしか食べていませんでしたが
山根さんは、たまーに魚を買ってきては焼いて食べていました。
僕は、自室に荷物を置いて
手を洗った後、
仕事からの帰り道に
立ち寄って買ってきた韓国料理の弁当を広げて、
ダイニングテーブルで食べ始めました。
同じく、山根さんも
焼き魚と、梅干し、味噌汁とご飯を持って
ダイニングテーブルに来ました。
偶然同じ時刻に食事をする時は
広いダイニングテーブルで
こうやって男二人
顔を突き合わせて
無言で黙々と食べることも少なくありません。
このジイさん、超大金持ちっぽいのに無駄使いしないし
なぜか、食事も質素なんだよな。。と、毎日思っていました。
魚は何匹買ってきたんですか?
と、暇つぶしに聞いてみました。
そうすると彼は、
「二ビ」 と答えました。
にび?
なんて聞いたことないけど。
もしかして、2尾っていう事は2匹?と聞き直しました。
すると、
「釣ったあとの魚は、人が食い、後に残るのは、尻尾だけ。だから、1尾、2尾と数え、人は死んだ後に、名を残して、永遠に有名人、偉人でいたい、地位名声を欲しがるだろ、だから、1名、2名って数えるっていうんだが。
だが、人間の歴史上、今まで数百億人の人が生まれてきて、そして死んで行った。その中で歴史上、名前を残したのは、ほんの少し数えるくらいの人だろ。
99.99%の人間は、生まれてきて名を残さずにひっそりと死ぬ。
人は死んで名を残さない。大多数は名前を残さない。
だから、名前を残そうなんていう野心は捨てて、金を残せ。
1ドルでも多く金儲けすることが、人生の最優先課題なのだ!
本当の人の数え方は、1名、2名じゃなく、1金、2金とするべきである。」
この老人の、独特の考え方を聞きながら
あまり返事をしないで、僕は、黙々と韓国弁当を食べ続けて
自分の部屋に戻りました。
この老人、本当に変わり者ですが、滅多に会えない人だなあと思いました。