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不思議な老人からの教え その⑥ まずは、種銭を貯めろ!(後編)         ゴミを売って金にしろ!

僕は、ヤフーオークションに 何かを出品してお金を稼ぐことに決めました。ゴルフツアー会社の給料を切り詰めて貯めても、少しも増えていく気がしなかったからです。
その出品する「何か」は、すぐには見つけられませんでした。

ヤフーオークションで、発送元がハワイ。という出品者は一人もいなかったので、まずは、そのハワイという地の利を生かした出品物にしよう!と考えました。

これを今読んでいる方々は、えー?まさか。信じられない!
と思うかもしれませんが
ヤフーオークションの初期の頃は、出品商品の写真もなく、文面だけで紹介していました。また出品手数料は、なんと無料でした。
しかし、その後すぐに写真をUPできるようなシステムになりました。

ネタ探しのために、ワイキキに出て行って、歩き回ってお店をチェックしてまわりました。
日本人観光客が何を欲しがっているのか?何を買っているのか?
何を探しているのか。
僕は試しに、ABCストアや免税店に来ている日本人観光客に声をかけて、ハワイで何を買って帰りたいのですか?と聞き取りをすることにしました。
その答えは、まず、ブランド物、時計、そしてビタミン剤やサブリメント類。ハワイっぽい小物。ハワイアンホーストのマカデミアナッツチョコ。

商品が決まらないまま、とりあえずABCストアでサブリメントを複数買いました。
そして、インターナショナルマーケットプレイスで、ハワイアンファブリックを数種類、10ヤードずつ購入して帰宅しました。
ファブリックは、モンステラ柄とハイビスカス柄を中心に薄手の生地を選んで買いました。
よくパレオなどに使っているような物です。さっそく、それぞれの品の出品価格を決めて、ヤフーオークションに商品を出品して、その日は1日が終わりました。

翌日、朝起きて
気になってヤフーオークションを開いてみたら、なんと!出品していた商品の半分ほどが売れていたんです!!これはすごい!。
早速、買い手とメールでやり取りをして、日本の銀行口座情報を知らせて、入金が確認できたら商品を梱包して発送。という事を繰り返しました。
今も存在するのか?わかりませんが、当時、日本国内の CITIBANK口座を使っていて、その銀行では、日本で入金したお金を、すぐにアメリカの銀行口座に送金できたのです。

そうやって、

⭐️商品購入ー⭐️オークション出品ー⭐️入金ー⭐️発送ー⭐️日本円をアメリカドルに変える。

という繰り返しをしていました。
今考えると、マネーロンダリングみたいな感じですよね、その頃は問題なくこんな事が出来たのです。

収支はなんとかプラスです。
でも、$1,000 使って売り上げが$1,200 になれば良いほうでした。要は、利益が20%くらい。でも、そこにはガソリン代や、僕の人件費、梱包材などを考慮していません。単に売り上げから商品代金を引いた差額が20%でした。

商品買付をして帰宅し
家のリビングで、今日買ってきたものを広げて、値段の書いてあるステッカーを剥がしたり、売れた商品を梱包したり。
そんな作業を毎日繰り返していた、ある日、山根さんがフラッと僕のところに来て興味津々に、何をしているのか?と聞いてきたんです。
僕は、これこれ、こうで、日本のオークションでこの品物を売っていると説明したところ、彼は僕が買い付けてきた商品をまじまじと見て


「次の日曜日、青空市場に行こう」
と言ってきました。
「あ、車はそっちの出してくれ」
と付け加えて。

日曜日になり、朝、約束の時間に僕の車で二人はスタートしました。
場所を聞いたら、パールリッジというのです。カネオヘではなく、パールリッジか。。と思い、彼の指示される通りに走っていきます。
着いたところは、カム ドライブインシアターという場所です。
そこは、広い駐車場に、数百店はあるだろうと思えるほど沢山の個人のフリマ出品者が店を出していました。
店といっても、トラックの荷台に自宅の不要物を積み込んで出店していてトラックがそのまま店になっていたり、自分の出店陣地スペースいっぱいに、汚い布を敷いて、その上に、ごちゃごちゃと物を置いている人も沢山いました。
うわー!と声を出してしまうくらい、すごい光景でした。

まるで、戦後の闇市にタイムスリップしてきたような景色です。
山根さんは、「青空市場」と表現していたのは、要するにフリーマーケットでしたが、まさに、「青空市場」と呼んだほうがピッタリです。

以前、アロハスタジアムのフリーマーケットは行った事がありましたが
このカム ドライブインシアターには初めて来ました。

ゆっくりと店と店の間を歩きながら、それぞれの 「店」の商品を見ていると、全て値段が書いていないんです。
そして、まさに不用品、ゴミみたいなものばかり。
穴の空いたブーツとか、錆びた工具とか、子供が成長したので、もう不要になったから売っているんだな。とすぐにわかる汚れた人形とか。履き古した汚いスニーカーも有ります。
引き出しに30年くらい入れっぱなしだったような埃だらけの小物なども。

僕は、一人のローカルのオジサンがパイプ椅子に座って出店している商品の前で立ち止まりました。
そのオジサンと少し会話をしてみたら、彼はアメリカ陸軍の退役軍人だと言っていました。
売り物は、古い腕時計でした。1950年代から1970年代あたりの、イリノイやロンジン、ハミルトンの腕時計です。殆どが軍用の時計でした。
僕は、ロンジンは知っていましたが、イリノイとハミルトンというブランドはその時初めて聞いた名前でした。

なんとなく良いデザインだな!と感じたロンジンの手巻き軍用時計を手にとってリューズを動かしてみました。
12時00分に合わせようとしても、長針と短針がピッタリ重なりません。。
要するに壊れている。
風防がガラスではなく、プラスチックのため、傷だらけ。汚れていて汚い。
修理が必要なジャンク品という事でした。
こんなの買ってヤフーオークションで売っても売れないだろう。
と、その場を去ろうとした瞬間
僕の隣で、何も言わずに一緒に見ていた山根さんが、

「幾らか値段を聞いてみな」

と言うんです。僕は、買う気は全くないのですがオジサンに冷やかしで聞いてみました。
このロンジンのWatchは幾らか?と。
そうしたら、オジサンはすぐに答えずに、確か10秒ほど時間を置いて
「へンドレッ」 と答えてきたんです。
きっと日本人だと思って少し高めに売りつけようと考えた、その間が10秒だったのでしょう。
ローカルだったら、50ドルくらいで売るのかな?とか思いながら
僕はThank Youと言って立ち去ろうとしたら、山根さんが引き留めて、これは買ったほうがいい!と強く言うのです。

そうか、山根さんがそれほど言うなら、まあ何事も経験だ!と思って
ダメ元で「フィフティ」と言ってみました。
オジサンの答えは
「セブニーファイブ」

傷だらけの壊れた汚い時計を 75ドルで買うなんて狂気の沙汰だ、と自分に呆れながらも、まあ、騙されたと思って。と、そのロンジンの時計を買って帰ったのです。

帰宅後、何をしたかというと、買ってきたロンジンの時計のベルトを外して
時計本体に石鹸を付けて歯ブラシで洗いました。リューズから水が入らないように慎重に。
歯ブラシで擦っていると、洗っている水が真っ黒になって、これ、戦争で兵隊が使った後50年くらい一回も洗ってないんじゃないか!?と思われるほど汚かったのですが、丁寧に何度か洗浄していたら、傷だらけでしたがステンレスのBodyも輝きを見せてくれて、風貌も少し透明になって、綺麗になったと言うよりは古いけど清潔になった感があります。
僕はその後すぐに、ロンジンを握って車に乗り、アラモアナショッピングセンターに走りました。ショッピングセンターの白木屋とい言う店の中に、時計の電池交換と修理の小さな店があった事を覚えていたからです。

ショッピングセンターに到着して、その時計修理屋に行き、店の人にロンジンを見せました。その修理屋の人は、すぐにロンジンの裏蓋を外して色々いじっていましたが、オーバーホールが必要。修理代は100ドルだと言います。
もうここまで来たら、後戻りできないので、修理依頼しました。

1週間経ち

翌週に出来上がったロンジンを受け取りに来ました。
修理屋の人は、僕から$100を受けとった後に
良い時計だ!と言ってオーバーホール後の ピカピカのロンジンを渡してくれました。
彼は、チャイニーズで、Alexと名乗り、何かあったらまたいつも来てくれと言ってくれました。

僕は帰宅し、早速ロンジンをデジカメで撮影し、ヤフーオークションに出品したのです。うる覚えですが、3万円くらい?で出品しました。
そして、まさか思いもしない事が起きました。

毎日多くのビットが重なって、見る見るうちに、8万円くらいまで価格が上昇していったのです!オークション最終日は、その終了30分くらい前からパソコンにへばりついて価格を見守っていました。
終了の1分前くらいから複数のビットが入り、結果10万円での落札となりました。
2万円の物を10万円で売った瞬間です。

山根さんにこの事を話したら、

「店頭で売っている物を買って
それを又売るなんて考えるのは、愚の骨頂。金儲けしたかったら、タダみたいな物とか、ゴミを拾って、それを高く売れ。そこに商売の妙味がある。」


と教えてくれました。

僕は深く深呼吸をして、「なるほど。また一つ勉強になった」と思いました。































































































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