夕暮れの色#1私しか知らない新しいモノ
水曜日夕方17時。
高く積みあがった、書類が少しづつ減り終わりが見えてくる。
あと少し、あと少しで終わる…と自分にラストスパートを掛ける。
今日は月初で特に忙しくなるのは分かってた。
しかも客先からのクレーム対応も重なり、連日22時退社が続いている。
あと少し、この書類を書き上げて、課長に申請して内容を説明して…
頭がフル回転し、この後の作業も含めた内容を組み立てていく。
それと同時に客先や社内への説明の文章を書き上げていく。
鳴りやまぬ電話…そして飛び交う言葉、いたるところから聞こえる
キーボードを叩く音。
ふぅっ…短く息を吐く。
ある程度の目途が着きそうなタイミングで私は席を立ち、化粧室へ行く。
個室に入り、パンツスーツとストッキングをおろす。
そこでちらっと見えるのは、
先週の土曜日に買った上下お揃いの新しい下着―
思わず、顔がにやける。
やっぱりレースが綺麗だわ~!
この色味の組み合わせはベストだわ~!
最近殺風景な黒やベージュのが多かったから、
カラフルな花の刺繍がクリーム色に映える…これは気分が上がる。
ーーーー女は急に着飾りたくなる。
それは二通りあると私は思う、
一つは恋人や友達、家族など特別な人に会う時や特別なことがある時。
もう一つは…ただ自分の気分を上げたい時。
私はどちらかというと後者だ。
別に見せる相手なんてここ二、三年いないのだけれども…
それでもたまには自分を甘やかせたくなるし、
綺麗に着飾って「いい女って思われたい」という心理が働く。
忙しいからこそ今日はそんな気分なの。
外見はいつもと変わらない私、誰も知らない、私だけの秘密で新しいモノ。
自分だけ知っている優越感。
少しでも色気漏れて、誰か引っかかってくれたりするもんなのかしら?
そんなくだらない妄想に耽っている頭を起こして、束の間の頭の休憩を終わらせる。
「さぁ、さくっと終わらせて帰りますか。」
お陰で気分よく終われそうだから、
帰りに寄り道して新しく出て気になっていたコンビニ限定の缶酎ハイと
つまみとシュークリーム買って帰ろうかな。
それとも…レイトショーとか?どーしようかなぁ。
帰りのおひとり様予定を立てながら、歩くヒールのリズムよく響く。
今日はオフィスへ戻る足取りが軽い。