朝の色#4 コーヒーと...
11月のある月曜日朝7時50分。
気温がグッと下がり、朝は特に布団の暖かさから抜け出せなくなってくる。
その体を無理やり起こして、スーツに着替えて
僕はひんやりした空気の中に飛び込む。
頭が急激に冴えてくる。
実家なら母親が無理やり叩き起こしてくれるのだが、
社会人3年目の今では、寒い日は外の空気にさらすことで
無理やり体を起こす技を覚えた。
数分歩いて、体が温まったところで、電車に乗ると通勤ラッシュの密集した生暖かい空気がむわっと広がり、体が熱くなってくる。
外ならひんやりして汗がでないのに、
この感じは好きじゃないんだよなぁ...
在宅勤務の人が増えても、落ち着いてきたら
またこの時間にもっと人が増えるのか...
通勤の電車に少しの不快感を感じながら、
今日のやることを頭の中で組み立てていく。
会社の最寄り駅に着き、出口に向かうとまた冷えた風に体が包まれる。
ストールを羽織り、コーヒーが入った紙コップで暖をとる女性を見て、
やはり寒いと体が震え、気温を再認識したところで、コンビニに入る。
朝買うのはアイスコーヒーとプロテインバーだが、
今日は寒いので、紙コップに入ったコーヒーを頼む。
朝のコンビニは早朝出勤を希望する年配のスタッフが目立つが、
ここで並ぶのはあのおばちゃんのところと決めている。
「いらっしゃいませ。」
「ホットコーヒーのSサイズください。」
「今日は寒いですものね。
カップをお渡ししますので、そこの機械でコーヒーを入れてくださいね。
コーヒーとこちらの商品で330円です。」
なんのこともないやり取り。
それでも最後には必ず、
「気をつけて。いってらっしゃい」
おばちゃんのこの一言で心がホロホロとほぐれる。
朝のこのちょっとしたやり取りが、心の栄養になる。
「行ってきます。」
最近実家に帰れてなかったから、
久々に母の小言でも聞きに行こうかな。
今日仕事終わりにでも、連絡してみるか。
急だと「何?急に!」ってびっくりするかな。
いつ帰ろうか、とスケジュールを思い浮かべて色づき始めた木々の間を歩き
今日も仕事に向かう。
この時期はコーヒーと人の真心がじわじわ染みてくる。