朝の色#1 バスの車掌 青山さん
金曜日の朝7時45分。
この時間からまた一日が始まる…
少しでも気分を上げていきたいのに生憎の雨。
バスが来る。
いつものように、駅へ向かうバスだ。
でもこの日は違った―――――
「おはようございます!!お待たせしました!足元お気を付けください。」落ち込んだ気分を吹き飛ばすかのような明るい声がする。
しかも一人ずつに同じように明るく声を掛けている。
発車時になると「お立ちのお客様は手すりに掴まってください。」とお決まりのフレーズだけでなく、こんな言葉も。
「車内揺れますので、優先席でもいいので、お座りください。」
彼の気遣いにいつもの車内がなんだか、心地よい空間になる。
次のバス停でも彼は雨の憂鬱と反対に溌溂と声を張り、一人一人声を掛けている。
少し曇った気分でも思わず前を向いて挨拶をしてしまう。
それはあと一日の出社…と疲れた会社員や寝癖を直すまもなく慌てて出てきた学生にも効く、気分を奮い立たせるエナジードリンクのような薬。
こんな雨の日だから、こんなあんまり人と関わるのを避けられる時だから、
余計にキラキラと光る。
終点に近づく。
「お立ちのお客様は停まる際に大きく揺れますのでしっかりとお掴まりください」
バスが駅に着く、いつもより運転手側のドアから出るの人が多い。
今日も一日が始まる。
ただ、朝から気持ちよくスタートできたから、
今日はきっといい日になるはず。
初めましてでここまで多くの人の気持ちを上向きにできる、
挨拶と気遣いは何よりも素晴らしい。
ありがとう。青山さん。