脇本平也『宗教学入門』を読む 第17回
第五章「宗教の構成要素」
2「宗教思想」
教義と表現したが、もっと幅広く「宗教思想」「宗教的信念体系」として考える
人間の本質として、「考える」という働きがあるが、「考える」ことが表現されたものとして、宗教思想・信念体系がある。
内容と形式の二つの側面から考察。
【内容】
人間の考えることすべてが含まれるだろう。ただ、大きく3つに分けることができる
①人間観
②世界観
③実在感
①人間観:人間をどう見ているか。人間とは?(人間の本性と運命、生と死の意味、迷いと悟り、苦悩と救済など)
突き詰められると「自己」とはなにか?
②世界観:世界をどう見ているか。世界全体の見方。空間的な広がりを持つ世界(自然とか)。時間的な広がりを持つ世界(過去・現在・未来)などなど。また、「あの世」極楽、天国、地獄などの他界観も重要なテーマの一つになる場合がある。
③実在観:リアリティ、本当の姿とは?(本当にあるもの、本当であるものなど。キリスト教における神であり、仏教における法、など)真実在を究極的なよりどころとする。真実在は人格的にとらえられる場合もあり、非人格的な場合もある。超越的(日常世界を超えたところ)なもの。自己が出会う聖なるもの。究極的なもの
このような内容が相互連関し、宗教思想の体系を構成することになっていく。どれか一つとかということではない。
【形式】
①口伝伝承と文書伝承
釈迦やキリストの言葉が口から口へと伝承された
それがのちに文書にまとめられ聖書や経典として成立していく
口伝の段階でも思想内容の整理や組織化がなされるが、文書になるとより一層その動きに拍車がかかる
そして、さまざまな角度から注釈や議論が展開されて、教義書・思想書ができていく
宗教思想は時間の経過とともに組織的に整理され、順序だてられる傾向にある。組織化の過程は、
①神話→②教説→③教義
①神話(ミスmyth):神々の物語。社会集団のなかで自然発生し、宗教的な知恵を含む。人生の意味など。あまり体系化されていない。
②教説(ドクトリン):創唱者の教えなど。神話を批判的に乗り越えるタイプのもの。キリスト教の福音書、原始仏教の阿含経、新宗教の御筆先(天理教にもおふでさきがある。笑)多少は体系化されているけど、十分ではない。
③教義(ドグマ):思想の体系化・組織化が最も進んだもの。教団の形成確立される過程と並行して展開するのが一般的。教団として存続確立されるなかで、制度的に規定された教義が成立し、公布され、信仰の規範として権威をもつようになる。教団としてのアイデンティティの確立みたいなもの。さらに進めば、神学・宗学・教学といった学問体系となる
宗教思想はことばで表現される部分が大きい。ただし、もともとは宗教的体験があり、それには非言語的、非合理的な側面がある。実際に体験してみないとわからない(禅などで修業しないといけないのはこのため)
つまり、宗教思想というのはたんなる知識の集合体ではなく、宗教実践と密接に関連している
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