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降雪に耐えて芳醇な香りをまとう、金沢ゆず

湯涌街道沿いで、柚子を育てる髙田農園さん。この地で獲れる香り豊かな柚子は「金沢ゆず」のブランドで人気が高まってきています。蛍KANAZAWAでは、この金沢ゆずを使った新商品開発のために、ちょうど収穫期を迎えた農園に打ち合わせに行きました。



柚子を育てる髙田さん親子。インスタグラム「ともこの日常」で日々の様子も発信されています。https://www.instagram.com/takata.nouen_tomoko428/


数百本もの柚子の木が植えられた、湯涌ゆずの街道(みち)

金沢市街から湯涌温泉に向かう途中。湯涌街道沿いの浅川地区には柚子の木が立ち並んでいます。この通りは「湯涌ゆずの街道(みち)」と名付けられ、全部で2000本以上の柚子が植えられています。ここで獲れる柚子は、果皮が肉厚で香りが芳醇と評判で、「金沢ゆず」のブランドで広く知られています。設置された無人販売所は、金沢中心部からやや離れた立地ながら、収穫期になると毎年多くのリピーターでにぎわっています。

肉厚の果皮が、芳醇な香りをまとう

金沢ゆずの特徴は、果皮が肉厚で香りが豊かなことです。
これはこの地の気候による恩恵だそうです。南向きの斜面が多く、大変に陽当たりが良い一方で、山間地のため夜になると急に冷え込みます。この大きな寒暖差によって、果実はたくさんの栄養をため込みます。こうした条件が、香り豊かな金沢ゆずを作り出しています。

浅川地区の気候で、芳醇な香りをまとう金沢ゆず。


降雪に耐えて、力強く育つ柚子の木

しかし、柚子の栽培が最初からうまくいったわけではないそうです。特に、このエリアは冬の降雪量が多いため、かつては雪の重みで枝が折れたり、苗木が育たなかったりすることも多かったとのこと。そうした中でも、大切に柚子の木を育ててきた生産者の努力が、いま実ってきています。また最近になって降雪量が減ってきていることから、より生産に適した気候になり、さらに美味しい柚子を安定的に出荷できるようになっています。

湯涌街道沿いにある髙田農園さん


減反の農業を救った、ゆずの木

金沢ゆずの歴史は、昭和50年頃にさかのぼります。当時、この一帯は稲作が中心でしたが、国が減反政策をとったことで、水田を減らすことになりました。さらに湯涌街道(正式には石川県道・富山県道10号金沢湯涌福光線)の整備計画が持ち上がり、土地区画整理が必要となっていました。

この時、田んぼから別の作物への転換がはかられました。稲作をやめて何を作ろうかと考えたとき、真っ先に柚子が候補に挙がったそうです。当時、この地域の民家では、庭先に柚子の木を植えることが多く、いずれも豊かな果実を成らせていました。それを見て、柚子であればこの地でも元気に育つのではないかと考えたそうです。

陽当たりの良い柚子畑。柚子の鮮やかな黄金色は太陽の力を分けてもらったかのよう。


金沢ゆずとしてブランドに

それから50年もの月日がたち、いまこの地の柚子は「金沢ゆず」として一つのブランドとして知られるようになりました。金沢ゆずを使ったサイダーやカステラなど、地域の食品メーカーとコラボした商品も多く開発され、そのおいしさは全国へと広がっています。

ゆずの収穫は、タイミングの見極めが大事だそうです。少し青みが残る状態で収穫することで、流通の期間に成熟が進んで、食卓に上がるまでにだんだんと美味しい状態になっていきます。収穫のタイミングは短いため、一つの柚子の木からも、何回にも分けて収穫する必要があるそうです。


金沢ゆずの新しい魅力を

この秋から、蛍KANAZAWAでは金沢ゆずを使った新商品開発に取り組んでいます。髙田さんも「新しい商品でより金沢ゆずの魅力がより多くの人に伝わっていってほしい」と期待をされています。この地で50年もの期間にわたって大事に育てられてきた金沢ゆずの魅力を、存分に楽しめる商品になりそうです。

ひがし茶屋街、農園から作る和菓子

ひがし茶屋街の入り口。農園生産者と一緒に作る、新しい和菓子を提案する「蛍KANAZAWA」。髙田さんの柚子を使った、新しい商品も近日中に登場します。

※旧「ville de croquette」が2023年8月より「蛍KANAZAWA」へリニューアルしました。