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第1子の予定帝王切開を受け入れるためにしたこと

「子育てと仕事を考える」がテーマで始めたこのnote。少しテーマ違いにはなりますが、第1子である息子を予定帝王切開で出産したときのことについて、時間が経って忘れてしまわないうちに、書いておくことにしました。

「緊急帝王切開で出産した後、気持ちの整理がつかない」という話はnoteやYouTubeや音声コンテンツなど様々なところで見聞きしましたが、それに比べると、予定帝王切開については、入院準備や出産レポートなどが主で、心理面についての発信は数が少ないと感じていました。

このnoteでは、私が予定帝王切開に至るまでに感じた葛藤や、受け入れるためにしたことをまとめました。同じようにこれから予定帝王切開に臨む方に参考にしていただければいいなと思います。


妊娠期間中ずっと逆子だった息子

私が帝王切開で出産することになったのは、逆子(骨盤位)だったためです。

安定期に入ったころから、産科の先生に「逆子だね~」と検診のたびに言われており、手術当日まで、とうとうひっくり返ることはありませんでした。ちなみに、左右には何度かひっくり返っていました。なぜy軸で回転するのだ、息子よ!(笑)

私自身も妊娠後期まで逆子で、臨月近くなって自然と頭位に戻ったと母から聞かされていたので、最初は「親子だなあ」なんて呑気に構えていたのですが、週数が進んでいくにつれ、不安が増していました。

とはいえ、逆子体操は効果がないと先生に言われ、私も「無理な体勢をとって赤ちゃんに負担がかかってはいけない」と思ったので、できることはそんなにありませんでした。鍼灸院でお灸をして、毎日お腹が張らない程度にたくさん歩いて、毎日湯船で体を温める。そしてあとは自然に任せてくるっと回転するのを待つことしかできませんでした。

通常、毎週通院するようになるのは臨月を迎える10か月からだと思うのですが、私は逆子の様子を見るために通院が多く、結果的には妊娠8か月から出産の38週まで毎週通院していました。

毎回、お腹にエコーを当てるやいなや「あ~回ってないね~」と、先生。9か月を過ぎたころには、自分でお腹を触って頭の位置がわかるようになり、「あ~やっぱりそうですよね~」と返せるようになっていました。

そしてある日、このまま逆子が続くのであればこの日に手術をしましょうと案内され、診察室のカレンダーに私の名前が書かれました。そこからは、心電図を取ったり、輸血が必要になったときのための血液検査をしたりと、帝王切開の準備が着々と進められました。

帝王切開が嫌すぎて、涙が止まらない夜

家族や友人など、周りの人に対しては、「逆子で帝王切開になるかも~。怖いけど仕方ないよねえ、息子よ回れ~」なんて鷹揚に構えているようでいて、内心はめちゃめちゃ嫌でした。

逆子である以上、母子の安全を考えたら帝王切開で産むのが一番安全だなんてことは、頭ではわかってるんですよね。それでも、暇さえあれば「帝王切開」「逆子」でググりまくってしまう日々。今思えば軽いノイローゼでした。

妊娠8か月ごろ、いよいよ現実味を帯びてきた帝王切開が嫌で嫌で、布団の中で1時間くらい涙が止まらない夜がありました。

せっかく女に生まれたのに、下から産む経験はもうできないなんて。子どもは2人産みたいと思っていたし、せめて第1子は下から産みたかったな。
(TOLACという手もありますが、命に関わるリスクは取れない性格なのです)

妊娠したらここで無痛分娩しようと楽しみにして通っていた産院だったのに、手術で産むことになるなんて
(最寄りの産院が、かなり前から無痛分娩に取り組んでいるところで、先生の腕と人柄が好きだったので楽しみにしていました)

手術なんて親知らずの抜歯くらいしか経験ないのに、メスで切って…?!人間を出して…?!縫う…?!万が一死んだらどうしよう。せっかく健康で傷一つなく生きてきたのに……お母さんごめん……
(妊娠前までは採血すら怖くて、毎回臥位でやってもらっていました)

毎日歩いたり、お灸したり、腹巻したりいろいろしてるのに、なんでずっと逆子なんだろう
(外回転術は胎児と身体への負担が心配で選択肢にありませんでした)

病院のマザークラスも、自治体のマタニティ講座も普通分娩のことしか話してくれないし、まるで帝王切開での出産なんて存在しないみたい

赤ちゃん自身のタイミングではなく、他人に勝手に誕生日を決められるなんて。なんか不自然な感じがして嫌だ

ほかにも細かいことを言えば、検診回数が増えて窓口で支払うお金が増える苛立ちとか、楽しみにしていた産前休業が短くなる残念さとか、いろいろあった気がしますが、結局つらかったのは、「自分、自分、自分……と、お腹の赤ちゃんよりも自分の気持ちにしか意識が向いていないこと」に対する情けなさでした。

「この子はこの体勢が落ち着くんだから仕方ないよ。ふふふ、待ってるね♪」と状況を受け入れて手術に臨んだ母親たちの発信を見ては、自分との差に落ち込む日々でした。

受け入れるための準備

そんな不安定な気持ちで妊娠9か月に入り、入院準備を整えなければならない時期がやってきました。帝王切開用の準備をしてしまうと、それが現実になるような気がして、腰が重かったですが、何かあってからでは遅いので、やるしかない。

さてあとは術後の腹帯と、傷痕テープと……、と入院バッグの空きと足りないものを確認していたとき、一番大切なものが準備できていないと気がつきました。

それは、帝王切開での出産を受け入れるための、心の準備でした。

こんな不安定な気持ちのまま、手術の日を迎えたらきっと後悔する。メンタルが落ち込んだ状態で子育てをスタートさせたくない。この出産を幸せな思い出として記憶に刻みたい。緊急帝王切開じゃなく、事前に手術するとわかっているからこそ、できることがあるんじゃないか。

そのとき、産休まであと2週間ちょっとというところ。業務の引継ぎは最後の仕上げという段階でしたが、意を決して上司に相談し、急きょ2日の有休をいただくことにしました。土日と合わせて4日間。
この4日間を、自分の体と心に向き合うことだけに使うと決めました。

やったこと①できるだけ安静にしてみる

妊娠中の体重が増えすぎないようにと、マタニティピラティスに通ったり、早朝にウォーキングをしたり、通勤で2駅歩いたりと、できる範囲での運動量を確保していましたが、もしかしたら頑張りすぎているのかもしれないと、うすうす感じていました。

そこで、「この期間はできるだけじっと横になって安静にしてみよう」と決め、ほとんど家で過ごしました。スマホを見るとまたいろいろ検索してしまいそうなので、できるだけ遠くに置いておきました。

残念ながらお腹の中に変化はありませんでしたが、体がふっと緩んだような感覚がありました。日に日に大きくなっているお腹や、業務の引継ぎのゴールである産休が近づいていることに対して、思いのほか体に力が入っていたことに気付かされました。

やったこと②オンラインカウンセリングを受ける

ここ数年以内に帝王切開を経験した人が身近に何人かいたのですが、「帝王切開になるのが嫌だ」という気持ちを話すことで万が一相手が傷ついたらどうしよう、と考えてしまい、話を聞いてもらうのは躊躇われました。自治体による助産師相談に頼るという手もありましたが、「どんなお産も立派なお産だから!」みたいなエールが欲しいわけでもありません。

そこで、cotreeでオンラインカウンセリングを受けることにしました。仕事や人生で深く悩んで行き詰ったときに何度か受けてすっきりした経験があったので、今回の悩みでも使えるかもと思ったのです。

話題が話題なので、女性に絞って予定の空いていそうなカウンセラーさんを探し、「カウンセラーの出産経験の有無を知ると気を使ってしまって話せないので、一切話題に出さずに、とにかく話を聞いてほしい」とリクエストして予約しました

リクエストに忠実に応えていただいたおかげで、変な気を使うことなく、思う存分不安な気持ちをしゃべることができて、すっきりしました。

やったこと③よもぎ蒸しに行ってみる

いわゆる温活です。せっかく休みをいただいたし、よもぎ蒸しにチャレンジしたいなと思いつきました。東洋医学よりも西洋医学を信じるタイプではありますが、体を温めるに越したことはないだろうし、とGoogle Mapで調べたところ、ラッキーなことに家から歩いてすぐ近くでやっているサロンを見つけました。

結果として、逆子に効果はなかったのですが、心の支えとなるような良い出会いがありました。それは、このよもぎ蒸しサロンのセラピストさんとの出会いでした。

セラピストさんは子供が3人いらっしゃる女性の方で、よもぎ蒸し後、私の体をマッサージしながら、赤ちゃんが生まれてくる喜びや、子どもの可愛さ、育てていく面白さを話してくれました。それはもう楽しそうに話してくれるので、不思議と聞き入ってしまいました。

そうするうちに、「怖いものは怖いけど、せいぜい1日かそこらの手術のことよりも、そのあと何千日も続いていく子育てのことを考えて過ごした方が楽しいな」と、自然と思えてきました。子育てに多くの喜びがあるなんて話はいろんな人から聞いていたはずなのに、不思議とセラピストさんのお話がすーっと心の奥の方に入ってきたような感覚です。

そのセラピストさんには手術の前日にもお世話になったのですが、なんと「よかったら今晩これを食べてリラックスしてね。生まれたら、ぜひ赤ちゃんを見せに来てね」と、スイーツをプレゼントしてくださいました。そういうセラピストさんの人柄と穏やかな空気感に、体だけでなく、心もほぐしてもらったのかもしれません。(後日、約束通り息子を連れていき、とても喜んでいただきました)

「できることはやった」という事実が私に勇気をくれた

この4日間を終えてみて、やってよかったと心の底から思いました。逆子に変化こそなかったものの、「自分にできることは全部やったんだ」という事実、そして「自分の気持ちを大事にしてあげられた」という事実が、内側から自分を応援してくれるような気がしました。

数日後、産休に入る頃にはすっかり気持ちも晴れ、あんなに嫌だった手術の日が待ち遠しいほど。「生まれてくる日がわかってるなんて、ありがたいなあ」なんて思うのですから、我ながらちゃっかりしています。今となっては、手術の日までお腹でじっとしてくれていた息子にも感謝です。

手術前日は、念のためと処方された睡眠薬がなくてもよく眠れました。この日のために休みを取ってくれた夫とゆっくり朝食をとり、出発前に家の前で笑顔で写真を撮って病院に向かい、予定通り無事に出産を終えました。

子育てのスタートとして、意外にも良い経験になったと思う

「下から産む経験をしてみたかったなあ」という気持ちがもうこれっぽっちもないと言ったら嘘になるし、ケロイドっぽくなってしまったお腹の傷を見ると多少しょんぼりすることはありますが、「子育てなんて思い通りにならないことの連続」を出産前から体感できたのは私にとってよかったと思います。

子どもなんて、親の意のままにはならないんですよね。へその緒でつながって一心同体の胎児すら思い通りにはならないんですから。生まれたら、もっといろんなことが起きて、その中には困難もあって、受け入れて、乗り越えていかないといけないこともある。そのことを息子は体をもって教えてくれたような気がします。

産後半年を過ぎ、産後鬱にならず育児を楽しむことができているのは、周りの人たちのサポートによる部分も大きいですが、予定帝王切開に葛藤し、それを受け入れることができたという経験が自分に自信を与えてくれているのだと思います。

参考までに、帝王切開だったことで逆に助かったことをいくつか挙げておきます。

・「急に産まれてしまって夫に赤ちゃんをすぐ抱っこさせてあげられないのでは」みたいな不安がなかった
・そもそも無痛分娩で評判の先生なので麻酔が上手く、術中も術後も痛み止めを積極的に投与してくれるので全然痛い思いをしなかった(これはラッキー)
・手術の数十分以外は夫がずっとそばにいてくれて、ゆっくり喋れたので、安心して穏やかな出産ができた
・出産そのものに体力がもっていかれず、入院も1週間と長めのおかげで、体の回復に専念できた(更に助産師さんや看護師さんがみんな優しくしてくれる)
・会陰切開しないので座るのが怖くない&痛くない
・医療保険で給付金が出たので、入院費用を払っても10万円以上お釣りが出た
・傷の経過を見るために1か月検診まで毎週通院があったので、赤ちゃんや自分の体で心配なことをすぐ相談できた

これから予定帝王切開に臨むことが不安な方に向けて

このnoteをここまで読んでくださかった方の中には、かつての私と同じように、予定帝王切開を控えていて不安な気持ちや、やりきれない思いを抱えている方もいらっしゃるかもしれません。

受け入れ方は人それぞれだし、なんなら「受け入れる」だけが正解ではないような気すらしますが、私が伝えたいのは「嫌だな、怖いな」という気持ちを無理に捨てようとしなくてもいいんじゃない?ということ。だって普通に怖いじゃないですか、お腹切るんですよ?

自分の気持ちは自分だけのもの。心の中は、お腹を切られたってって誰にも見られやしません。

私の経験が、これを読んでいるどこかの誰かにとって小さなエールになれば良いなと思います。どうかあなたの出産が、素敵な思い出になりますように。


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