ものもらい格闘記
待ちに待った三連休初日だった。
月締で山積みの仕事をうりゃあぁぁぁ〜と片付け、やっとホッとできる…
はずだった。
起きた瞬間から右目に軽い違和感が。
鏡を見てみるも、見た目には問題なさそう。
その日は友達と買い物に行く予定だったし、アイボンでバシャバシャ眼球を洗って、それなりのオシャレをし、コンタクトをはめて出かけた。
しかし、違和感は時間を追うごとに痛みとして確実に右目にのしかかってきていた。
“気のせい”ということにはもう出来ないレベルに痛い、重い、熱っぽい。
意識がずっと右目にいってしまう。
コンタクトはどうなっているんだろうか。
このゴロゴロした右目から、早く救出してやった方がいいんじゃないか?というか、すぐにでもこの場で外したい。
しかし、視力0.03の私が町中でコンタクトを外すというのは非常に危険を伴う。
余りの近視ゆえ、会社では灰色の掃除道具入れのロッカーと、その日、灰色のパーカーを着てきていた後輩を見間違えたという恐るべき実績がある。
そんなわけで、友達に事情を話し、早々に買い物を切り上げ家に帰ることを選んだ。
帰宅してすぐに鏡を見る。
うぎゃあぁぁ
なんじゃコリャ
私の右目の瞼はぼよよーんと赤く腫れ、ヤンキーに出くわしたら、即言いがかりをつけられそうなほど情けない負けボクサーの顔になっていた。
さて、どうしよう。
三連休の間に何とか直したい。
とりあえずコンタクトを外してアイボンだ。
液体をカップに注ぎ、右目をかっぴらいてカップを押しあて上を向いて、まばたきをパチパチして、いったんカップを外して中の液体を見る。
なんかモヤモヤと浮いているが、全く右目はスッキリしない。
もう一度だ。さぁ、アイボンよ、この右目の隅々に行き渡って、菌を全て飲み込んでくれ。
液体を注いだカップを右目に再度押しあて、上を向き、眼球をぐるぐると回す。
眼球の隅々にという思いが高まりすぎたのか、いつの間にか全身をヘビメタバンドの如くグルングルンさせて、洗面所で大暴れしていたので、通りかかった娘に
「ヲ…ヲタ芸…?」
という無駄な疑念を抱かせてしまった。
そんなヘビメタアイボンを持ってしても、痛みは取れず、右目はゴロゴロした負けボクサーのままだ。
よし、ではここらでググってみよう。
ものもらいとは、めばちことも呼ばれ、地方によって何種類かの呼び方があるらしい。
患部を清潔に保ち、痛みや炎症がなければホットタオルなどで温めても良いが、痛みや炎症があれば冷やした方が良く、抗菌目薬を差すと良いとのこと。
早速抗菌目薬を差してみた。
目薬は鼻の中を通って喉に落ち、何とも言えない不味さを放っていた。
苦行。
あとは、保冷剤を目に当てて、少し横になろう。
しかし、保冷剤をずっと手で当て続けるというのは面倒だったので、右目とメガネの間に保冷剤を挟み込み、ソファーで横になるといつの間にか爆睡していた。
帰宅した息子に声をかけられ目覚める。
「おかん…何で保冷剤がメガネの間に挟まっとん???」
そんなシンプルな問いかけを無視して、私は再び洗面所へと向かった。すまん、息子よ。
相変わらず負けボクサーだが、痛みは9割引いていた。
ググった時に、痛みがなければまぶたの際をマッサージすると良いと書いてあったのを思い出し、「膿よ、出ろ」の思いを込めて軽く押して見る。
そしてまたアイボンだ。
今度はヘビメタでもヲタ芸でもない、普通の所作でジャブジャブしてみる。
カップをのぞき込むと、たっくさんのモヤモヤしたものが浮いている!
豊作だ!!悪いやつがたくさん退去してきた!
数回、アイボンを繰り返し、カップを洗剤で丁寧に洗い、もう一度抗菌目薬をして、今度はベッドで朝まで眠った。
朝。
腫れはまだ少し残っているが、赤みや痛みはだいぶなくなった。
このまま、三連休中に治癒することを願う。