タイトル「脱、」

 パンダがタバコをくわえながら椅子に座る。
みしっともぎしっともとれるような音を立て、椅子は少々苦しそうだ。
「君、ここに来るまで随分時間がかかったようだね。道に迷っていたのかい?」
 パンダの穏やかな口調に、青年は緊張した面持ちで答える。
「笹の分別がつかず、仕分け作業に手間取りました。遅れてすみません」
 正直に答えた青年に、パンダはタバコを灰皿に擦り付け豪快に笑った。
「竹も笹もさほど変わらんよ。君も今度食べてみるといい」
 パンダの寛容な態度に青年は胸をなでおろし、頭を下げた。青年が部屋を出るのを見送ると、パンダは新しいタバコに火をつけ、深く息を吐いた。換気扇の音がよく聞こえる。
「もう随分と笹は食べていないけどなあ」

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