見出し画像

親に恋愛感情を持つとき。

誤解を恐れず言うと、私は同性の親(母)に恋愛に近い感情を持ったことがある。
恋愛感情と言っても「好き好き!」みたいな明るい感情ではなく、「守らないと。」と遺伝子レベルで全身に言われているような感情である。

元々あまり大人っぽくなくて、何にでも興味を持って色んなことに挑戦する可愛い母のことは大好きだ。
たまに鬱陶しいと思うときもあるが、仲は良い方だと思う。
だが、そういった優しい感情とは別の重くて暗い、執着にも似た恋愛のような感情を母に持ったことがこれまでで二回ある。

一度目は、父親が亡くなったとき。
朝早くに父が自殺したという知らせを聞いて、急いで電車で実家に向かった。
父の遺体の隣で母が泣きながら
「お母さんがずっと一緒におったのにこんなことになってごめんなぁ」
と言ってきたとき、私はこの人をこんな風に悲しませてはいけない、守らないといけないと感じた。
考える前に身体が反応して「大丈夫やから。」と言っていた。
実際全然大丈夫ではなくて、私は母を守れるほど強くもなくて、すぐに私も泣いてしまった。

二度目は、父が亡くなった1ヶ月後ほどに、母と一緒に妹の運動会に行ったとき。
写真が趣味だった父は子どもの運動会にはいつも有休をとって、はりきって母と来てくれていた。
父の一眼レフカメラは母には扱えなかったので、妹の運動会に一緒に来てくれないかと母に頼まれ、小さなお父さんの写真を持って二人で行った。
お昼になり、母の作ってきてくれたお弁当を二人で食べていると、母が
「いつもやったらお父さんと一緒なんやけどなぁ…」
と小さな声で呟き、おにぎりを頬張りながらぽろぽろと泣き出した。
父が亡くなってから母は少しやつれ、すごく小さく見えた。
当たり前のことだが、いつも私を守ってくれていた両親が完璧な強い人間ではないということを、私はその一ヶ月でやっと気付いた。
この悲しんでいる私の大切な人を守らないといけない、と強く思った。

これまで人に対してあれほど強い感情を持ったのは初めてだった。
私は今も母を守れるほど強くもないし、両親への恩返しもまだ全く出来ていない。

それでも、
「お父さんのカメラの使い方教えてほしいんやけど…」と言われれば帰省している時間いっぱいいっぱい使ってそれぞれのボタンの機能と
カメラからパソコンへのダウンロードの仕方、Photoshopでの編集の仕方、そこからFacebookへのアップロードの仕方を教える。

「朝焼け撮りに行きたいわぁ」と言われれば朝4時に起きて山登りにも付き合う。

「コーヒー豆から手で挽いてみたいねん」と言われれば、その日のうちにAmazonで注文し実家に配送する。

母が私にお願いを言ってくれるのは純粋に嬉しい。出来るだけ私の大切な母が長く、楽しく穏やかに過ごしてくれればいいと思う。
おかしいけれど、これはやっぱり恋愛感情が一番近いと思っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?