ニリンソウ
1990年代に上高地(長野県松本市安曇。撮影時は南安曇郡安曇村)を訪れたときにフィルムカメラに収めたもの。
上高地河童橋から梓川左岸沿いの道を2時間ほど歩いた徳沢付近で撮影したもの。
ニリンソウ。
キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草で春山を彩る花のひとつ。
一つの茎から二輪の花が咲くところからそう呼ばれる。
上高地には30回以上出かけているが、春に出かけたのはわずか数回。
その数回のうちの一つがこのニリンソウの群落の写真を撮った時。
小さな花の群落はかわいらしく、見ていてほっとする。
上高地訪問は夏や秋の紅葉期にもでかけたが、最終的には人の多いのが嫌で、紅葉が終わり風景がモノトーンになるころに出かけることが多くなった。
モノトーンの風景が大半を占めるころでも、上高地のカラマツは最後まで黄色い葉を残していた。
静かな上高地から徳沢方面へ歩いていくのが好きだった。
梓川のせせらぎの音が気持ちよい。
落ち葉を踏みしめる音も気持ちよい。
引き締まる冷たい空気も気持ちよい。
行き交う人は少なく、時折出会う人はほとんどが黙々と歩いていく登山者。
静かな道。
自分のカメラのシャッターの音だけが申し訳なく響く。
新宿からの夜行快速があるときは、徳沢まで往復していた。
やがて夜行がなくなり、明神までの往復に短縮した。
そして例のウイルス禍。
少し収まったかと思えば、上高地でクマ騒動。
季節外れの静かな道をのんびりと一人歩くのは、危険と隣り合わせになってしまった。
クマにおびえながら歩くか、それとも人ゴミをお守りにクマのことをあまり考えず歩くか…。
上高地も手放しで楽しめなくなってしまった。