バス停のある風景:稚咲内第2
稚咲内(わかさかない)第2
沿岸バス 豊富稚咲内線
2021年3月31日廃止
北海道天塩郡豊富町字稚咲内
1995年10月 フィルムカメラにて撮影
1990年代の晩秋、札幌から夜行急行「利尻」に乗り、早朝の宗谷本線豊富駅で下車。
豊富には豊富温泉、サロベツ原野という観光地というべき場所があるが、目的は、日本海に向かい、利尻島をというより利尻山を眺めること。
利尻は島全体が一つの山のようになっている。
豊富駅から稚咲内第2行きのバスに乗り、サロベツ原野を横目に稚咲内の小さな集落を抜けると終点の稚咲内第2。
辺りには漁港と倉庫のような建物があるだけの閑散とした場所だった。
まずは、海を目指して漁港方面へと歩く。
予想はついていたが、曇天下利尻の島影さえ見当たらなかった。
北海道の島に関しては運がなく、国後も2度見に行ったが天候の関係で見ることができなかった。
帰りは、稚咲内漁港より来た道を歩いて戻り、サロベツ原野のど真ん中にあるバス停からバスに乗って帰ることにしていた。
稚咲内の集落を抜けると、全国でも有数の稚咲内砂丘林がサロベツ原野と稚咲内を隔てている。
稚咲内砂丘林は東西約2キロ、南北25キロにわたる天然の砂丘林になっている。
砂丘林を通り抜け、ふと振り返るとクマ出没注意の看板。
生まれて初めてクマ出没注意の看板を見て、少々ビビった記憶がある。
辺りは何もないし、当然人もいない。
走る車もわずか。
ただ、昨今と違い、クマ出没注意は砂丘林に入るときの注意書きで、当時は今ほど簡単に人前にクマは現れなかった。
砂丘林部分を通り抜けると、サロベツ原野が広がる。
原野のど真ん中を貫く道道444号線。
原野以外周囲に何もないと、距離感がつかめない。
原野の真ん中あたりの道路沿いに建物が見えて、あのあたりにバス停があるはずと歩みを進める。
目測では500m、約10分も歩けばつけるだろうと予測。
ところが、歩いても歩いてもバス停に近づかない。
結局30分はかかり2キロほど歩いたであろうか。
広大な原野の真ん中で豊富駅行きのバスに乗り、豊富駅へと戻った。
サロベツとはアイヌ語で芦原にある川の意。
ワカサカナイとはアイヌ語で水の飲めない川の意。
豊富は資源が豊富であるところからつけられた地名であるらしい。
利尻はアイヌ語で高い島の意。
稚咲内の海岸から利尻山を眺めるために再訪したい土地ではあるが、その機会が再びあるかどうかはわからない。
稚咲内訪問の際に利用した夜行急行利尻、沿岸バス豊富稚咲内線は共にもう走っていない。
30年も経てば交通機関が変わってしまうのは仕方がないが残念だ。
豊富駅に戻った後は、宗谷岬を目指すべく稚内へと向かった。