IRR(内部収益率)について ②プロジェクトIRRとエクイティIRR
IRRには、プロジェクトIRR(以下PIRR)とエクイティIRR(以下EIRR)があります。
本記事では、2つのIRRの定義・違いについて説明します。
①プロジェクトIRR(PIRR)とは
PIRRとは、事業期間を通じた事業の収益性・投資利回りを図るための指標です。
建設費等の投資額(金融機関からの借入を含みます)に対して、当該事業から何%のリターンが期待できるのか、を表します。
ここでいうリターンとは、事業から生じるフリーキャッシュフローを指します。フリーキャッシュフローは、出資者及び金融機関等に支払うことができる現金の額のことです。
出資者・金融機関への支払原資となる現金額は、各事業年度の利益(金利支払前)とは一致しません。なぜなら、現金支出を伴わない費用(減価償却費等)、費用とならない現金支出(設備投資額等)があるからです。
そこで、各事業年度の利益(金利支払前)に、これらを加減するなど一定の調整をしたうえでフリーキャッシュフローを計算します。
PIRRは、投資額(建設費等)と、フリーキャッシュフローの現在価値総額を比較し、これら両者が等しくなる(ゼロになる)割引率です。
つまり、投資額に対して何%の利回りがあるとすれば、フリーキャッシュフローの額と一致するかを計算するということです。
②エクイティIRR(EIRR)とは
EIRRとは、事業期間を通じたスポンサーの投下資本(出資額等)に対する収益性・投資利回りを図るための指標です。
スポンサーの投下資本(PIRRと異なり、金融機関からの借り入れに相当する額は含まれません)に対して、当該事業から何%のリターン(株主への配当等)が期待できるかを表します。
対象事業から生じる出資者に帰属するキャッシュフローの現在価値の総額と、出資者の出資額を比較して、これらが等しくなる割引率として算出されます。
出資者が求める最低限のEIRR水準はリスク等に応じて事業ごとに異なります。
EIRRの計算例を以下の通り記載します。
【前提条件】
0年目に10,000百万円で投資
1年目から5年目まで配当性向30%の配当を受領
5年目で株式売却して13,000百万円を受領
この場合のEIRRは、7.2%と算出されます。
IRRは受け取れる配当金額が高いほど、そして受け取るタイミングが早いほど(時間的価値を考慮しているため)より高くなりますので、この数値例で配当性向を全期間40%にすると、EIRRは7.8%になりますし、1年目の配当性向を50%にすると、7.5%と計算されます。
参考文献
堀切聡(2021).『わかりやすいプロジェクトファイナンスによる資金調達』. 税務経理協会.
加賀隆一(2007).『プロジェクトファイナンスの実務 - プロジェクトの資金調達とリスク・コントロール』. きんざい