ゆじゅく金田屋 〜歴史を感じながら養生ご飯と温泉で生まれ変わる〜
プロフィール
岡田 洋一
大学卒業後、海外を船で回る。40代で四万温泉を経て、5代目として金田屋を継ぐ。サービス精神旺盛で明るい性格の5代目のファンも多く、会えば様々な話題で盛り上がる。読書が趣味。
岡田真理子
1974年2月2日川越生まれ。大学卒業後、東京で営業職として勤務していたが、岡田社長の長男との結婚を機に金田屋へ。芯の通った気丈な若女将。かつての趣味はスノーボード。
創業150年。若山牧水も愛した宿“金田屋”
湯宿温泉金田屋といえば「若山牧水が投宿(とうしゅく)した宿」を思い浮かべる人も多いかもしれない。
創業は1868年。約150年続く老舗の温泉旅館は時代に合わせ改装を重ねながら、館内の至るところに当時の面影や調度品を残し今に続いている。
金田屋は、湯本館の館主の息子である和三郎(初代)が1868年に土地を分けてもらい、暖簾分けの形ではじまった。
その後、高度経済成長期で客数の増加が予想され、赤城国体もあったことから増築をし現在のかたちに。
広々とした玄関を入ると、若女将の岡田真理子さんが現れた。
休養中の5代目岡田洋一社長に変わって、現在は真理子さんが一通りを任されている。
金田屋の魅力① “格別の湯”
今回のインタビューでは、若女将の真理子さんにたっぷりお話を伺った。
まずは、現在の宿運営について、以前は一泊二食付きだったが、朝食のみの提供に変更すると若い世代やおひとり様が増えたという。
筆者も旅先の宿は素泊まりを選択するタイプなので、豪華な夕飯より自分たちのペースで過ごせる旅程を好む傾向の表れとも感じた。
今回は取材とともに、宿泊客の気分でお風呂と朝食を体験させてもらった。
高温で知られる湯宿温泉(源泉は60℃!)。こちらでは加温も加水もせず適温にしている。
湯に身を沈ませると、体の表面からじわ~っと温泉成分が染みていくような感覚に覆われる。
ゆったり全身浴と半身浴を繰り返していると、心も体もほぐれてポカポカ。
坪庭に面した窓からは、松の木と季節の草花、ししおどしと小さな祠(ほこら)を眺められる。
風呂上がり、「飲水思源」と書かれた張り紙と共にロビーに用意されている湧水を口に含む。丸くて柔らかな飲みごこちで温浴効果をさらに高めてくれる気がする。この湯宿一帯の水道は大峰山の湧水で賄われているのだそう。
金田屋の魅力② “真心こもった朝ご飯”
お次は朝ごはん!
この日の献立は卵焼き、あぶらかれいの焼き魚、春菊の白和え、とろろ、フキの煮物、自家製タレ添え野菜と豚バラのせいろ蒸し、つけもの(きゅうりの塩麴漬け・新ショウガの甘酢漬け・昆布とシイタケの佃煮)、小松菜とお揚げとジャガイモの味噌汁、酵素玄米、豆乳餅きな粉かけ、ほうじ茶とコーヒー。
料理のすべてが滋味深く素材の味が生きていて、目を閉じゆっくりと噛んで味わった。食後には「はい、整いました。」と口からこぼれそうになる。作り手が心と手間暇かけたものは、自ずと伝わるのだと確信した。
基本的に食材は地場のものを使い、既製品より手作りにこだわるのが金田屋のおもてなし。連泊の宿泊者には同じ献立が続かないよう配慮するといった心遣いもうれしい。
館内にはさりげなく草花が飾られていて、目を和ませてくれる。こちらも真理子さんが自然の造形をそのままに活けている。
牧水と金田屋
急な階段を上がり、隠れ部屋のような「若山牧水の部屋」へ。文机や硯と筆、マントと編み笠など岡田洋一社長の牧水愛が溢れる空間となっている。
机の上には110冊目となる湯庵徒然旅日記が。宿泊客が自由に記述できる芳名帳のようなもので、それぞれの宿への気持ちが綴られている。
湯宿のおすすめスポット!
最近は「ね」です!と迷わず真理子さん。「Plants & Coffee ね」は、湯宿にある唯一のカフェで、移住者の手島夫婦が運営している。夜な夜なクラフトビールのイベントなども開催されているようで、イベント目当てに、金田屋に宿泊するお客さんもいるそうだ。
ゆじゅく 金田屋
部屋数:9室
チェックイン:15時〜
チェックアウト:10時
日帰り入浴:13時〜17時
駐車場:あり
休館日:月曜日、火曜日
この記事を書いたライター紹介!
小室 史
1976年11月北海道釧路市生まれ。上京後、俳優・ライター・和菓子販売・きき酒師など興味関心のあることすべてに手を出し、2019年みなかみ町に移住。こむろ農園営業部長、みなかみ町SDGsコーディネーター、和菓子教室企画など。晩婚晩産の当事者として、well-agingについて模索中。Instagram→@fumi.k._h
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