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湯宿で創業69年目。“群馬を支える、車のよろずや”山本自動車工業



プロフィール

山本俊一 さん
1961年3月4日生まれ。群馬県みなかみ町出身。湯宿生まれ湯宿育ち。ホンダインターナショナルテクニカルスクール(現ホンダテクニカルカレッジ関東)卒業後、本田技研工業株式会社へ就職。その後、1983年に父が創業した山本自動車工業に入社し、現在は代表を勤める。


湯宿と共に、“車一筋”69年 

インタビューの様子

湯宿温泉の国道沿いを走ると、赤色に「SUZUKI」の看板が一際目をひく建物がある。湯宿の地で、創業69年を迎える山本自動車工業だ。国道17号から新潟方面へ車を走らせたことのある人なら一度は目にしたことがあるかもしれない。 

店舗の事務所に入ると、山本俊一さんが「やぁ、来たね」と優しい笑顔で出迎えてくださった。山本さんは、山本自動車工業の代表を務め、整備士歴30年を誇る。もう現場に出ることは、ほとんどなくなったというが、今は信頼できる従業員に工場を一任している。一方で、山本さんは、日々さまざまな書類の処理に忙しいそうだ。

工場を案内してもらう様子

山本さんは、専門学校を卒業後、あの”HONDA”でお馴染みの本田技研工業株式会社に就職。3年ほど勤務し、地元の湯宿温泉に帰ってきた。当時について、山本さんは

「その時、親父はすでに亡くなっていて、母親が社長を務めてやっていたのだけど、人手が足りなくなって帰ってくることになったんだ。」

と振り返る。山本自動車工業は、1955年に山本さんの父が創業して始まった。現在は、妻のよしえさんが事務を担当し、夫婦で会社を支えている。よしえさんとの出会いについて尋ねると、「出会いの話なんて聞かれることがないからね。照れるね。」とはぐらかした。最初は、よしえさんがお客さんだったようだが、取材の日はよしえさんが不在だったため、これ以上詳しい話は聞けなかった。(笑)

お気に入りの工具について尋ねてみると「もう工具を持つ事はほとんどないからねぇ」と30年間相棒だった工具たちを愛おしそうに見つめる。その姿から、整備士として誇りあるお仕事をされてきた様がひしひしと伝わってくる。

工場を案内してもらう様子

“車のよろずや” 山本自動車工業 

店舗で管理している車

車検、塗装・板金、カーリース、レンタカー、保険の相談など車に関わるエトセトラを請け負っている山本自動車工業。今の事業について、山本さんは

「最近は現金で車を買う方が少なくなってきたから、カーリースの利用が増えているね。月々決まった料金内にメンテナンス費用も含まれるし、新車に乗れる。興味のある方は一度電話で相談して欲しいね」

と、優しい笑顔で語った。

山本自動車では、車検やメンテナンスが必要な時期は、はがきでお知らせしてくれる。加えて、タイヤの保管サービスも行い、雪の積もるみなかみ町では、大変ありがたい。山本さんは、「保険も含めて、車に関わることはすべてお任せください。気軽に相談しにきて欲しいね」と話す。山本さんは、車のことならなんでも頼れる味方だ。


馬から車へ。受け継がれるバトン

作業道具

山本さんが子どもの頃は、お店も人も多く賑わっていたという湯宿温泉。国道沿いだけでなく、湯宿の石畳の道にも、商店、クリーニング、牛乳屋、精米所など様々なお店が軒を連ねていた。山本さんは、自身の歩みについて

「祖父は馬の蹄(ひずめ)を交換する仕事をしていたんだ。当時は馬に乗る人が多かった。思えば祖父の代から乗り物に携わる仕事をしていたんだね。」

と振り返る。なんと、山本家は、車の時代が到来する前から、馬という当時の“乗り物”に関わる仕事をしていた。山本一家は、馬から車へ移動手段が変化するなかでも、“乗り物”のバトンを受け継いできたのだ。そんな山本さんは、今の湯宿について、

「今はお店もほとんど無くて寂しさを感じる。だからこそ移住や湯宿での起業は大歓迎。また賑やかになってくれたら嬉しい。」

と語り、移住者や湯宿で何かしたい人は大歓迎のよう。現在、湯宿では小学生・中学生の9学年を合わせても8人しか子どもがいない。“また賑やかになって欲しい”その思いは、この地域で過ごしてきた人々の願いだと感じる。


湯宿の営みに宿りし魅力とは

インタビューの様子

 長年、湯宿で暮らす山本さんに、湯宿温泉の魅力について伺うと「山本医院や片野歯科があるのも良い点だと思う。あと温泉に24時間入れるところも良いね。」と話してくれた。

小さいエリアで人口も少ない湯宿だが、近くに病院があり、調剤薬局も揃う。さらに、湯宿の共同風呂は、湯宿にお住いの方であれば24時間、いつでも好きな時間に入浴できる。湯治の湯に毎日浸かれるのも、湯宿温泉の欠かせない魅力のひとつだ。

また、山本さんは、「窓から見える燦々橋も良い眺めだよ」と窓の外を指差す。窓の先には、1996年に完成した湯の華燦々橋(ゆのかさんさんばし)が綺麗に見えた。山々をまたぐようにしてかかる燦々橋は、"脈々と湧き出でる水と出湯が、すべての生きるものに、愛と幸福の華として燦々と注がれる事を願って"と名付けられた橋。今でも湯宿住民にも愛される、ランドマークだ。

店舗から見た湯宿の景色

私と山本自動車

工場案内をしてもらう様子

実は、記者の私は、山本さんによくお世話になっている。私がみなかみ町にUターンしてきて間もない冬の日、寒さのあまり車のバッテリーが上がってしまったことがある。どうしたら良いか解らず、あわてて山本さんに電話をかけた。焦っていた私に、山本さんは「そりゃあ大変だね!これから向かうから大丈夫だよ」と優しい語り口で落ち着かせてもらい、対応していただいた。それは、山本さんの燦々と降り注ぐ優しさに触れられ、近所に頼れるお店がある有難さが身に染みた瞬間だった。

もし、車のことでお悩みがあれば、ぜひ山本さんに頼って欲しい。きっと、いつもの優しい笑顔で出迎えてくれるでしょう。


山本自動車工業

  • 営業時間:8:00~18:00

  • 定休日:日曜日

  • 駐車場:あり


この記事を書いたライター紹介!

並木かなえ
2021年にみなかみ町へUターン。漢方専門薬局で培った知識と経験を活かし、プライベート中医サロンカラダふわわにて漢方相談と推拿整体を行っている。


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