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【将棋】大駒を使いこなす-2-

序盤戦における飛車と角行の有効な使い方を検討する「大駒を使いこなす」シリーズ、前回は「にらみを利かす」ことの重要性についてみてみた。

今回の記事からは特に角行という駒に注目して、角行特有の”斜めの利き”をテーマに盤上を紐解いていきたい。

まず最初に<第1図>。角交換はどうしても衝動的にしてみたくなる一手であるが、先手の手損という結果に終わることが分かる。

<第1図>

互いに角道を開けた局面で、☗2二角成と飛びつくと痛い目に遭う。以下☖同銀→☗8八銀と進んで、いつのまにか手番が後手側にいっているのである。本来は先に銀将といった小駒を動かせる先手という立場であるはずが、後手番が先に銀将を動かしている。先手・後手同形であるのにもかかわらず、後手の手番になっているのだ。

手番が後手にいってしまった

上位者のなかには「一手損角換わり」や「筋違い角戦法」といった敢えてこの手順で指す人もいるが、いきなりこのような定跡を覚える必要性はないだろう。序盤の角交換は先手が手損する、という認識のほうがはるかに重要である。


さて、大駒を持ち駒にできたときに、すぐさま盤上に打ってしまいたくなるのもまた人情というものであるが、例えば<第2図>の盤面で、すぐさま☗8六角と打ってしまうのかいささかもったいない使い方といえる。

<第2図>

確かに後手の離れ駒となっている6四のマスの歩兵を取ることはできるが、次に☖6三銀と受けられてせっかくの角行の効果がぼやけてしまう。

一般的に、持ち駒は好きなタイミングで好きな場所に打てるため、盤上の駒よりも少し価値が高いとされる。持ち駒はしっかりとした効果を見込めるか、見極めてから打ちたいところ。明確な基準はないが、例えば<第3図>の配置では、持ち駒の角行を5六のマスに打ち込むと必ず馬に成ることが約束される。このような手は効果のはっきりとした一手といえる。

<第3図>

持ち駒は持っているだけで十分に相手にプレッシャーをかけることができ、存在価値があるのだ。

〇「序盤は飛より角」

中盤から終盤にかけて最大の威力を誇るのはもちろん飛車だが、序盤ではむしろ角行の斜めの利きを生かした駒組みがなされることが多い。

一例をあげると、<第4図>のような盤面。角行の斜めのラインが絶妙に利いており、後手は受けにくくなっている。後手は間に銀将が入っているが、ここからどう攻めていくのが有効であろうか。

<第4図>

いきなり☗3三角成は前回の記事で述べた「大駒のにらみを利かす」という原則に反するうえに、すぐに取り返されてしまうため悪手。ここでの良い手は、☗3四歩と弱点になっている銀将を狙う一手であり、☖同銀はもちろんできないため、身動きが取れない状態で、銀将はおとなしく取られる運命となる。

<第5図>

<第4図>から後手が受けられるとすれば、3二のマスに金将を打つことだが、☗3三歩成→☖同金のやり取りをした後に、再び☗3四歩と打つことで同じ状況となる。

このように角行の斜めのラインでにらみを利かせる技を「コビン攻め」と呼び、今回の例では「コビン攻め」によって後手は金将と銀将の2枚を失う結果となった。受けてもキリがないのがこの「コビン攻め」の特徴である。

これだけの威力を持ちながら、実際の角行は1マスも動いていないのである。これこそが「にらみを利かせ」て後方にどっしりと構えておく良い大駒の使い方なのだ。

大駒をうまく扱うものが序盤を制するといっても過言ではない。次回の記事では、さらに序盤戦における角行の効果や威力についてみていきたい。

             ―B.―

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