【チェス】王道の古典定跡を識る-18-
KIDの一般形から、5手目白f3と指すのがゼーミッシュバリエーションです。統計的には、白Nf3と指すクラシカルバリエーションを選択することが多いのですが、ゼーミッシュバリエーションも人気の高い変化になっています。
この手は、e4のポーンをサポートしながら黒のNg4を牽制するという目的があります。将来的には白はBe3、Qd2とピース展開をして、O-O-Oと指すことを考えています。そして、フィアンケットした黒のホールを狙うために、g4、h5とキングサイドからポーンストームを仕掛けていきます。
シシリアンディフェンスのユーゴスラブアタックと考え方は同じです。
変化の一例をみてみましょう。黒O-Oと指す手に対して、白はBe3と予定通りピース展開を図ります。黒はクラシカルバリエーションと同じように、d4のポーンを狙います。黒がd4に攻撃を当てるためには、e5、c5、Nc6という3つのパターンが考えられます。
〇6. … e5
白はd5と指して攻撃をかわしますが、さらに黒はc6と指してクイーンの道を開けつつd5のポーンを攻撃します。白は予定通りQd2と指してO-O-Oを準備する手を指します。黒cxd5、白cxd5とポーンをテイクし合った後、黒はa6としてb5のマスを牽制しつつ黒b5と指すことでクイーンサイドへのポーンストームを準備します。
〇6. …c5
e3のビショップの斜線が利いているため、これは黒のギャンビットになります。いわゆるゼーミッシュギャンビットと呼ばれる変化で、以下の手順で黒はポーンダウンします。
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6... c5 7. dxc5 dxc5 8. Qxd8 Rxd8 9. Bxc5
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黒はポーンダウンはするものの、dファイルをルークによって完全に制圧することができており、開いた盤面で指しやすくなります。そのため、評価値をみても盤面は互角になります。
黒はビショップによってe7が攻撃されているため、Nc6とポーンをサポートとし、d4のマスにナイトを配置することを狙います。白はNe2とd4のマスを牽制します。この後の変化としては、黒Nd7とフィアンケットしたビショップの斜線を開けつつ白のc5のビショップを攻撃する手に対して、白Be3と攻撃をかわします。
<第4図>から黒がNe5と指してc4のポーンを攻撃する手に対して、白はNf4と指してビショップでポーンを守ります。
黒はここからNb4と指してc2のフォークを狙いつつ弱点となっているd3のマスにナイトを配置する手を狙います。
白はRc1と指してc2のマスを守ります。この盤面では、白はすぐにb3と指すことができずに進みすぎたc4のポーンを守ることが非常に難しく、黒の強力なフィアンケットビショップとルークの利きに悩まされることとなります。
そのため、一般的には白はギャンビットを回避することが多く、7手目dxc5とポーンをテイクするかわりに白Ne2とナイトでポーンをサポートする手が指されます。この後は、黒cxd4、白Nxd4、黒Nc6と続き、ACDに合流することとなります。
〇6. …Nc6
こちらはパンノバリエーションと呼ばれる変化になります。
単純に白がd4と指してナイトを攻撃する手では、黒Ne5と続き、強力な位置にナイトを配置されてしまいます。そのため、白はNe2と指すことでd4のポーンをサポートする手を選択します。続く黒はa6と指して、b5のマスを牽制しながらポーンストームを準備する手を指します。白は予定通りQd2とピースを展開してO-O-Oの準備をします。黒はRb8と指して、次にb5とポーンを展開していきbファイルからの攻めを意識します。
この後の変化としては例をあげると、白O-O-O、黒b4、白g4と互いに狙っていた手を指していきます。互いにポーンストームを仕掛けていき、白はユーゴスラブアタック、黒はマイノリティアタックのような変化となっています。
今回の記事では、5手目白f3と指すゼーミッシュバリエーションについて考えてみました。
次回の記事では、5手目に白Be2と指すKIDの変化の一種である、アベルバッハバリエーションについてみていきたいと思います。
―B.―