【チェス】王道の古典定跡を識る-16-
前回の記事の続きから。KIDのメインラインから、<テーマ図>の盤面までを考えていたところでした。
前回では、ここから白Ne1とナイトを戻して、ビショップの斜線を開けつつマニューバリングを狙う一手を紹介しました。こちらは一般的な白の応手で、もちろん好手ですが、今回の記事では9手目白b4と指すベイオネットアタックについてみてみましょう。
Ne1は明確な目的を持った応手とはいえ、やや消極的な手であり、キングサイドへの干渉力を弱めてしまいます。黒はキングサイドからのポーンストームを容易に仕掛けやすくなります。
そのため、最近の研究では、白b4と指してキングサイドへの圧力は保ったまま、クイーンサイドへの攻撃を早める手が優勢です。
b4と指すことで、次の白c5を準備することも可能であり、間接的に黒のd6のポーンを攻撃しています。また、白Ba3とビショップを回すことで、強力な斜線にビショップを配置することもでき、こちらもやはりd6のポーンに攻撃が当たることになります。
黒にNh5と指す手を譲る結果となりますが、白にとってこの手はさほど脅威ではありません。この後の手順として以下の通り進行し、将来的に白のナイトがe6という絶好のアウトポストに配置することで、黒の攻撃を緩和することが可能だからです。
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9. … Nh5 10. Re1 f5 11. Ng5 Nf6 12. Bf3
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ベイオネットアタックを仕掛けられた際の9手目の黒の応手として、一般的であるのはa5と指し、b4のポーンを攻撃する手です。黒は白のクイーンサイドからの攻撃をいったん受ける手を指しますが、対して白はBa3と指し、b4のポーンをサポートします。その後は、黒axb4、白Bxb4、黒Nd7と続き、c5のマスをナイトによって牽制します。
次に白は一貫してクイーンサイドから攻撃を仕掛けるという観点から、a4とポーンをプッシュします。黒はe6のアウトポストにナイトを配置される懸念があるため、すぐにf5とポーンを突くことはできず、ナイトの展開先であるg5のマスを牽制するために黒Bh6と指します。
この後は一例として、白a5、黒f5、白Bd3、黒Kh8などと続き、この変化では、相対的に攻撃の早さは互角な状態になります。これはベイオネットアタックによって白がクイーンサイドの攻撃を早めた結果です。
今回は9手目白b4と指してクイーンサイドへの圧力を高めるベイオネットアタックについてみてみました。
次回の記事では、<テーマ図>の盤面からもう少し戻って7手目白O-Oと指さない別の変化について考えてみます。
それではまた次回の記事で。
―B.―