【チェス】王道の古典定跡を識る-20-
KIDに関する記事も今回で一段落となります。今回紹介するのはフォーポーンアタックの変化。5手目白f4と指す変化です。
白f4は、e5のマスを制圧することで黒のe5とポーンをプッシュする手を牽制しています。フォーポーンアタックは強力な中央支配の実現を可能としますが、その分弱点のマスを増やしてしまっています。黒はこの弱点を狙って、中央を突破することを目的とします。
e5に圧力がかかっているため、黒は将来的にc5としてd4のポーンを攻撃することを狙っています。
黒はいったんO-Oと指しますが、これは白のピース展開の遅れを利用した一手です。白はポーンを多く動かしてしまっており、白はe5とナイトを攻撃する手ではいささか悠長です。仮に白がe5と指した場合、黒はNd7と指して攻撃をかわしつつ、フィアンケットビショップとナイトによってe5のポーンを攻撃します。
白はNf3としてe5のポーンを守りますが、ここで黒は狙っていた通り、c5と指して弱点のd4のポーンを攻撃することができます。白がd5と攻撃をかわしてしまうと、黒dxe5、白fxe5、黒Nxe5、白Nxe5、黒Bxe5と順当にe5の地点でピース交換を行い、白はポーンダウンします。
また、白がdxc5とポーンをテイクした場合は、以下の手順で進行します。
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8. dxc5 dxe5 9. fxe5 Nxe5
10. Qxd8 Rxd8 11. Nxe5 Bxe5
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戦力は互角ですが、白にはダブルポーンが残ってしまい、黒は中央にポーンが残るため、黒が優勢となります。
このため、最も合理的な6手目の白の応手は、Nf3と指してポーンを進めるのではなくピースの展開を優先する一手です。黒は予定通りc5としてd4のポーンを攻撃しますが、白d5と攻撃をかわします。さらに黒はe6としてd5のポーンを追撃しますが、ここで白dxe6とテイクする場合は、黒fxe6として弱点であるf4のポーンを間接的に狙うことができます。
そのため、白はBe2とピース展開を優先しますが、黒exd5、白cxd5、黒Re8、白Nd2と進行して、今度はe4のポーンが弱点となります。
以上のことから、フォーポーンアタックは白が仕掛ける非常に攻撃的な変化ですが、最終的には残ったf4やe4のポーンが弱点となりやすいため、黒が優勢という結論が出ています。
さて、今回の記事でKIDについての変化はいったん最後です。次回以降はこれもまた王道の古典定跡であるスコッチゲームについてみていきたいと思います。
それではまた次回の記事で。
―B.―