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あやとり家族七十〜人生一度きり〜



夫から連絡が来るようになる


海外に来て心から楽しいと思えるようになったのは
アルバイトが始まったからだ
残り少ないこの生活だけど、充実してきた矢先
夫から頻繁に連絡が来るようになった

”不倫しといて今更”という気持ちの反面
見捨てられなかったという安心感から
電話を楽しみにするようになった

こういうところがいけない

自分がないから、アンテナは常に相手の方向を見ている
今までされたことを問いただすこともなく
悪魔でも相手のペースに合わせて、自分を出さないようにする
要するに自分の言いたいことは自分で無視することで事を終わらせる
嫌われたくないし、また連絡が途絶えてしまう不安よりは
そちらの方が断然良いという判断
自己肯定感のかけらもない

それでも楽しく会話ができていて
今思えばその不倫相手の女が出ていってしまい
急に、もの寂しくなって連絡をしてきたまでのこと
決して気持ちが私に戻ったわけではなかった

日本へ帰国する

あれだけ仲良く話していたのに、空港への迎えの話になると話を濁す
もちろん私の帰るところは夫と不倫女が一緒に住んでいた家しかない
一緒に住むことを拒んでいるような雰囲気の言葉が端はしに出る

元々優しい人だから、直接的に言葉は発しない
「帰ってきたらしばらく居るんだよね?」
とかそんな具合だ

でも明らかに夫の答えはこの時決定されていた

迎えに行くメリットがない

最終的に夫が空港に迎えに来ることはなかった
「迎えにいくメリットがないから」
相当ひどい物のいいようだが、それでも私は夫と再構築できる自信があった
「そっか、わかった。自分で帰るね」ここまでしても諦めない自分がいた

自宅に到着して

夜22時頃だったろうか、到着すると夫の家は真っ暗になっていて
インターフォンがないから、ドアをノックする
夫は出てこない、家にいる様子は伺える
何度かノックしようやく部屋に明かりが灯る
そして玄関に徐々に足音が近づく
1年3ヶ月ぶりの再会
こんな状況でも嬉しくてワクワクしていた

そして玄関が開く

想像とかけ離れた再会

玄関を開けるなり、夫は部屋に戻ってしまった
スーツケースこんなに重いのに、どうやって入れたらいいのか
リュックは重かったけど自力でなんとか入れられたが
スーツケースは到底無理だった
それでも諦めず頑張って部屋に入れようとしてもがいていると
夫がやってきて持ち上げてくれた
「ありがとう」
少々気まずかったのか振り絞るように
「おかえり」とだけ言い部屋に戻ってしまった

”あれだけ仲良く喋っていたのは離れていたから、良い距離感だったのか”
現実に今目の前で起こっていることは、態度として捉えると
”迷惑”以外の何者でもない

「どこで寝ればいい?」
「俺、こっちで寝るからそこで寝ていいよ」
2月ということもあり、寒い
一緒に寝れば暖かいのに別々で寝ることを決意された

なんとも居づらい雰囲気
私が帰ってくることを心待ちにしていると妄想していたが
実際は真逆
楽しみにしていたら起きて待っているだろう
その前に空港まで迎えにきてくれただろう

こんなことさえわかっていなかった当時の私
今考えても気持ちが重い

相手の気持ちがわからないADHD
この時は解ろうとする前に自我が先に出ていて
押し付けになっていたんだと今更ながら思う

本当に下手くそな生き方だけれど
人生一回きりだからこそ、全てが初めての経験で成り立っている

この状況から挽回させようと、自分なりに頑張っていくことになる



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