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釜揚げ師走 #毎週ショートショートnote

この土地には“師走”と呼ばれる山菜がある。それは生だと少々渋く、青臭い。しかし、熱い湯で茹でると丁度良いほろ苦さになり、色も鮮やかな緑に変わる。

また、この“釜揚げ師走”は乾燥させると次の夏まで保存することができる。ここでは、昔から冬でも食べられる貴重な青物だった。

それは、毎年十二月に入る頃に土から芽を出し、山に群生することから師走と呼ばれるようになったようだ。


と聞いていたが、どうやら違うらしい。

縁側に座った婆さん曰く、

「師走さんが走った所に生える山菜だから、師走って呼ぶようになったんだよ。師走さんは暑いのが嫌いで、寒くなると起きてくるんだ」

何だ、そのよくわからない者は。

「何てことを言うんだい。冬に緑の恵みを齎してくれる有難いお方なんだよ」

確かにそうだ。

「でも、何で師走さんって呼ぶんだ?」
「師走さん、坊さんの恰好をしてるんだよ」

成程。正しく、師走。


今日も師走を採って釜揚げ師走をつくる。ここも師走さんが走ったんだろうか。


/416字



今回、初めてたらはかに(田原にか)さまの企画 #毎週ショートショートnote  に参加させていただきました!
よろしくお願いいたします。




アホだから、お題が楽しすぎて2700字書いてしまったので削りました。
ルール違反にも程がある。



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冬野
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