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起業はしたい!でも薬局は作りたくない!!
ひどくわがままなタイトル。
こんにちは。
前回「在宅医療業務を請け負う」という事業で起業することについて記事を書きました。
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通常、薬局は患者から受け取った処方箋に基づいて調剤(薬を準備すること)を実施します。そして、従業員(薬剤師)が患者宅を訪問します。
ところが、様々な事情でそれが難しい。
では、在宅訪問業務を外部委託できる仕組みを作ろう!
という考えで起業しました。
ここでよく指摘されるのが
「自分で薬局を作って在宅すればよくね?」
です。
するどい。確かにその通り!!
自分で薬局を作って自分で在宅医療業務を完結すればそれが一番シンプルかもしれません。
でも、私は薬局を作りたくないのです。絶対に。
理由は3つ。
必要な資金とリスクが大きすぎる。
運営業務がつらすぎる。
既に世の中に薬局が溢れている。
単純な理由です。
理由1「必要な資金とリスクが大きすぎる。」から説明します。
まず、薬局1つを作るのに一体いくらのお金が必要でしょうか?
ChatGPTに聞いてみました。
「日本で新たに保険薬局1つを作るのに一体いくらのお金が必要でしょうか?」
ChatGPTより返答↓
「日本で新しく保険薬局を開業する場合、必要な資金は 1,500万円〜5,000万円 ほどが一般的ですが、立地や規模によって大きく異なります。以下、主な費用項目を挙げて概算を示します。」
[費用項目]
1. 物件取得・改装費(500万〜3,000万円)
2. 調剤機器・医薬品仕入れ(500万〜2,000万円)
3. 人件費(初月分給与 100万〜500万円)
4. 許認可取得費(50万〜100万円)
5. 運転資金(3〜6ヶ月分、500万〜1,000万円)
ChatGPTが言うんやから間違いない。
これだけの資金を準備するのはなかなか勇気が必要です。
それでも借金をして独立開業したとしましょう。
最初は経営を軌道に乗せることを優先させなくてはなりませんから少人数で必死に働き、少なくとも数年間は薬局運営を維持しなくてはなりません。
ほとんどの薬局は医療機関の近隣に立てたり、地域の患者から処方箋を応需して経営しますので、臨時休業は許されないのです。
スモールスタートですから、もしも1人欠員が出た場合のリスクが大きすぎます。まさに綱渡り。
近年は新興感染症、災害、物価高騰などのリスクが高まっています。
調剤併設型のドラッグストアの開店ラッシュも目に余るものがあります。
もしも近所にドラッグスストアができようものなら…
処方箋が一気に流れていくかもしれません。
私なら気が狂います。
そしてなんといっても昨今の「医薬品供給問題」
今、世の中で多くの薬が供給不安定となっています。
薬局の商売道具である薬が供給できないのです。
書ききれないリスクもありますが、これほどのリスク管理能力。
私には絶対ありません。
続いて理由2「運営業務がつらすぎる。」
怠けた理由でごめんなさい。
でもこれ深刻な問題です。
独立開局する薬剤師の多くは「地域医療に貢献したい!」とか「薬剤師として患者の健康に寄与したい!」とか、少なからず熱い思いと社会的使命をもっています。
私も開局したいなと思ったことも一瞬ありました。
事業継承の誘いもありました。
でも、いざ開局した時に、純粋な薬剤師業務以外の雑務がどれだけのしかかるか考えてみたのです。
・金融機関とのやり取り
・雇用関連業務
・従業員教育
・薬剤師会の業務
・診療報酬改定への対応
・薬局運営関連書類の維持,更新
・財務管理
・医薬品発注や在庫管理
・DX化への対応
・営業、広報
などなどなどなどなどなど…
考えているうちに恐ろしくなってきました。
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特に医療系の箱物を作る場合は、厚生局や保健所や行政への提出書類が山のように存在します。
なんのために薬局を作ったのか?
わからなくなるくらい膨大な業務に追われることは目に見えているのです。
プライベートな時間は大幅に(というかほとんど全て)削り取られます。
ゆっくり旅行や学会に行けない、本も読めない、家族との時間もおそろかに…
実際、独立開業した薬剤師の知人を見ていると、ゆったりと経営している者などほぼいません。
皆、猛烈仕事人間です。
(だからこそ、薬局の経営者の皆様を心から尊敬してます。卑下しているわけではないことをご理解ください)
理由3「既に世の中に薬局が溢れている。」
全国にいくつの保険薬局があるかご存じでしょうか?
正解は60,000件以上。しかもいまだに増加中。
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よく「薬局はコンビニより多い」と言われています。
これは、明らかに皮肉を込めた言葉です。
「人口減少に転じた日本においてこんなに薬局が必要なのか?」と。
私も薬剤師ながら、これ以上の薬局新設は必要ないのでは?と感じています。
(勘違いしないでください。薬局や薬剤師の存在自体は社会において確実に必要な存在です!)
これからは薬局を作り続けるよりも、既存の薬局の機能を活用したり機能強化する事業をした方が社会的貢献度が高いのではないか?
と考えるようになりました。
そこで思いついたのが「在宅医療業務の委託事業」というわけです。
今回は起業の経緯となった私の考え方を記事にしました。
今後も継続的に事業について書いていきたいと思います。
在宅医療特化型・薬局支援事業 Phast
代表 小林星太 (こばやししょうた)