僕らの金メダル 1話
僕らは大人になって、それぞれの道を歩き始める。それぞれの道で、その場所で、躓いたり立ち止まったりするだろう。
そんな時、振り返ってみればいい。そして、思い出す。僕らのいたあの場所と、僕ら9人の仲間のことを…。弱小チームの、少しずつだけど成長できた…あの日々のことを…。
僕らは弱かった。とは言っても、全く勝てないわけじゃない。ほんとに野球の好きな奴らの集まりだった。しかし、はたから見れば、のほほんとして、あまりガッツを感じられるチームではなかったんだろう。
あれは11月中頃の、一晩中冷たい雨が降り続いた後の試合だった。いつもは、ベンチかベンチの外で応援ばかりだった僕らが、久しぶりに、この9人で試合をする。させてもらえる。なのにだ、3対6で惨敗。それも、勝てて当然の相手にだ。応援に来ていた親の怒号、落胆した顔、昨夜の雨で出来た水溜りでグチャグチャになったスパイク…どれをとっても最悪だ。
でも、ここからだったんだ。ここから始まったんだ。このどん底からの、ゆるやかな僕らの快進撃が始まったのは。