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吉報vol.3 『のびる』 主宰座談会


七星 今回は喜劇のヒロイン・劇団サカナデ・老若男女未来学園それぞれの主宰にお集まりいただき、合同公演「吉報」vol.3 「のびる」について色々とお話を伺っていきたいと思います

七星 ファシリテーターを担当いたします、劇団サカナデの七星束子です。よろしくお願いします。吉報は「こぼす」「かつぐ」に続いて今回で 3 回目の開催になりますが、まずは前回のvol.2 「かつぐ」について振り返っていただけますか?

吉報vol.2の振り返り

吉報vol.2 かつぐ 


_vol.2のタイトルである「かつぐ」は誰が提案して決まったんですか?

岡本 森くんじゃない?

森 僕でしたっけ

岡本 うん、森くん。覚えてない?

森 あれ。vol.1の「こぼす」も僕じゃなかったですか?

岡本 そうそう

七星 一人ずつ順番で決めるとかじゃないんですね

森 みんなで出し合って

岡本  たしか「かつぐ」に決めた時は新宮の案がどんどん先に消されていった。それに新宮が不平不満を言ってたって言う記憶がある

七星 へー

岡本 「森くんのばっかり残ってるじゃないか」って

新宮 森くんは上手なんですよね

七星 あー、ワードセンスがね

森 (堂々とした声色で)ルールの中で遊ぶっていうのがね

新宮 得意なんだね

七星 3文字で選ぶのがルールのようですけど、他にはどんな候補があったんですか?

岡本 「まざる」とか

新宮 まざろうって話だった

岡本 他のコミュニティの人とか違う世代の人とまざるみたいな。結局、「かつぐ」にしたのは言葉の面白みを優先した感じだよね

森 (「まざる」の意味として)3団体で交流したいってのはありましたよね。Vol.2までは各団体別々で稽古して小屋入りでやっと会うみたいな感じだったから

岡本 今回は合同稽古とか。この対談とかもいい感じで……

森 いい感じでやっていきたいですね

新宮 あれ、vol.2の話を聞かれてなかった?

森 vol.2はユースクエアを横向きに使って、すごい変な舞台でやりましたよね。

新宮 (横に)長かったですよね

森 結構難しかったな。広いですもんね

七星 作品を振り返るとどうですか?

吉報vol.2 上演作品 老若男女未来学園 『メタルおにぎり vs. ザ・ワールド』

『メタルおにぎり vs. ザ・ワールド』舞台写真

七星 タイトルからは想像できない感じがいいですよね

森 でも、わりとタイトル通りの話でしたよ

新宮 どの世界と戦うのかみたいなのが結構楽しみで、メタルおにぎりについてはあらすじの段階でもこういったものって明示されていましたけど、いったいどういうものが上演されるんだろうっていう、期待感がありましたよね。本当に楽しみだった

森 我々も脚本を書いてない状態でタイトルとあらすじだけ先に決めて、どうなっていくんだろうという楽しみながら作っていました

新宮 曲が入ってましたよね

岡本 生演奏もありで

七星 ミュージカル調でしたね

森 変なタイトルをつけちゃったんで、それに負けないインパクトを劇中で残せないとダメだよなと思って

新宮 良かったですよね。水野さんが出てくるとことか

森 サックスを持ってね

新宮 ぬまたさんの歌も素晴らしかったんですね。

森 そうですね。1 曲目の方はぬまたさんが作曲してて。ぬまたさん、いろいろできるからすごい助かりますよ。いろんなアイデアを稽古場で出してくれて

新宮 どうしても印象的だったのが、うめださんがメタルおにぎりを持ってくるシーン

岡本 カバンに入れてパントマイムみたいなやつ

森 微妙なクオリティのパントマイムね。「頑張ってやってます」ぐらいの。ギャグっぽくていいですよね

岡本 愛嬌があっていいよね

新宮 (作品に)華があって良かったですよね。最初に見に来たお客さんとしてはすごい気持ちが上がるような

森 一発目なんで。ガツンと

七星 ガツンとかましてやろうと

新宮 どうでしたか、反響は?

森 「面白い」という声もあれば、「意味がわからない」「真剣にやってくれ」という意見も

新宮 歌がすごく頭に残っててみたいな、帰ってからも歌っちゃうみたいな人がいた気がしますけど

森 いやー聞いたことないですね

岡本 飲み会とかで歌ってる人いましたよ

森 でもやっぱり、なぜ印象に残ったかというとその後の2団体が歌ってないからでしょうね。後の団体が歌ったらそれで上書きされちゃうから

岡本 そりゃそうだ

吉報vol.2 上演作品 劇団サカナデ 『裸体』


『裸体』舞台写真

岡本 (一人芝居なので)2人しか稽古場にいない状況が結構あって、だからもうとにかくしゃべる。しゃべりながら作るみたいな空気だったのは、今振り返ると結構楽しかった

岡本 俳優の立川さんは岐阜で同じ劇団にいてもう知ってる人だから、そこそこ踏み込んだ戯曲だったけど(※「裸体」はセックスレスを題材にした戯曲)、信頼関係の面でそういう踏み込んだ話をすることもできて、楽しかった。気楽に稽古場に行けた
だいたいプレッシャーがかかるんだよ稽古場に行くの。特に知らない人がいると負荷が高いんだけど、少人数でやると、負荷が少ない

森 2人だとコミュニケーションは密に取れますよね

岡本 そう、それが楽だった。気遣う要素がすごく少なくて
その 1 個前にやったのが本公演で、自分の中ではでかい規模でやってもう
ヘトヘトだ、ってなって。そのまま吉報の稽古期間に入っちゃって演劇をやることに疲れてたんだけど、逆に『裸体』の稽古の中で回復していった

森 今の僕みたいな状態だ

岡本 『アワ・マクベス』やった後の状態だね

森 帰ってきた感じが

岡本 ホーム感あってやれるっていうのは大事なんだと思う。常に気張った状態でいなきゃいけないのはきついから

森 わりとそういう感じで作ってたんですね。僕の印象では『裸体』は俳優さんの負荷がすごく大きそうだなと

岡本 お客さんの前に一人でって言うのは負荷が大きかったと思う。

森 あとはアイテムの使い方が良かったですよね。一人だけど味方がいる感じに見えて

岡本 あれも、ハコトバコの美術の荻山さんと「印象的なものだけを選んで置く形にしよう」と言う話をしてバスタブ、鏡、マイクだけを置く形になりました。

森 クールだなあ

岡本 クールなのよ。良い美術家なんです

森 いいですね。何でも置いちゃうから僕たちは

新宮 (老若男女未来学園も)華やかでしたよ

七星 小上がりがあって良かった

新宮 そうそう玄関マットとか謎だったんです(※玄関マットが4つ舞台にあった)

七星 4箇所から入ると思ったのに

新宮 使ってるのは2箇所だった。左右からしか入らない

七星 前後は使わない

森 そう、だから(サカナデとは)対極的ですよ。ミニマムな、必要なものしか置かない劇団サカナデと、必要のないものを置く老若男女未来学園っていう

七星 なんで?ってなるのも面白いかもしれない

森 サカナデは画がずっと面白かったですよね。衣装も良かった。ワンピースで

岡本 自分の感性で決めず、相談して決めたほうがいいなと思う

森 ビジュアル面まで気を配れないことありますもんね

岡本 そういう意味でスタッフさんともコミュニケーションが取れて、勉強
になった

森 我々も真似していきたい。クールな舞台ってやってみたいですね

新宮 クールな舞台ね。真っ黒な中に姿見と……みたいな

森 ふざけずに……

新宮 ふざけてる感じしないですよ、狙いを持って玄関マット4つ置いてる感じがしますよ

森 喜劇のヒロインも舞台上の物が多かったですよね。絨毯と椅子がバーンってあって

吉報vol.2 上演作品 喜劇のヒロイン 『着ぶくれした王様』

『着ぶくれした王様』舞台写真

新宮 あとハンガーラックを後から持ってくるようにしましたね

七星 演出家の机も

森 そっか。舞台の端の、平台を降りたところにも演出家席があった

『着ぶくれした王様』の舞台写真②

新宮 客席と舞台の間にちょっとスペースがあったじゃないですか。そこが使えるなと思って

森 うまく使ってましたね。劇団サカナデも使ってたから……せっかくだから活かしたほうがいいよなって思いました

新宮 虚構性の担保は絶対そこ使わない方がなされるので、老若男女未来学園さんは使わなかったことで絶対に安心感持って見られたと思いますよ

岡本 喜劇のヒロインのやつはメタフィクション的なところがあって、
あれはすごく面白い

森 稽古場から始まる劇ですもんね

新宮 結構楽しく作れましたね。稽古場では

森 面白かったですよね

岡本 めちゃくちゃ面白かった

森 劇中劇があると2本見れた気がしてお得な感じがありますよね

新宮 劇中劇にしたいなって気持ちになってきちゃってメタを入れたっていう感じですね。どうしても1本だけじゃなくて、2層とかにしたくて。層で劇を作りたい気持ちがあるんで  

岡本 その目論見は当たってたよね。多分ね

新宮 そうですか?

岡本 稽古場っていう設定ができたことによって、暴力性とか権力性の話がすごくくっきり見える。劇中劇自体も面白いけどね

森 わかりますね

新宮 劇団員のかすがいさんと、vol.1にも出ていた山本くん、星の女子さんの二宮さんとハコトバコさんの安元さんに出ていただいたんですけど

新宮 本当に二宮さんがずっとちゃんと相談しながら作ってくれてて、ここも振り返った方がいいかなー。みたいな話とかを素敵なやり取りしながらつくってくれて
本当にありがたかったなっていうこともあるし、安元さんも結構、稽古場で質問してくれるんですよ。一方通行にならなくて、双方向でやり取りができるっていうのがすごい良いなと思って

森 安元さんの役(演出家役)が難しそうでしたからね。

岡本 たしかに

森 芝居が二通り見れたじゃないですか?劇中劇のオンの芝居と終わった後のオフの感じが面白い

新宮 オフのオフ、稽古が終わって休憩に入るシーンが面白くて

森 1番ラフな空気感

新宮 言ったら、みんな同じ役なんだけど3つくらい演技態を持ってる

森 あれはやっぱり自然にできる人も少ないじゃないですか

新宮 それを体現されたのはすごい。ありがたかったし、作ってて楽しかったです

森 客観的に観察する面白さがありましたね

~~~

森 (吉報vol.2について)全体としてはどうだったんですかね?

新宮  vol.1から続けてきてくださってる方もいるし、新しくちょっと気になって観に来ました、という方もいて

森 ちょっとずつ知名度が上がって、あいつらなんかまたやってるね、っていうのが知れ渡っていきたいですよね

岡本 とりあえず 1 回で終わった企画じゃないんだよっていう継続性もった企画なんだよ、っていう目で見てもらえると嬉しいですね。

_vol.1 からの変化はありましたか?

森 なんか仲良くはなりましたよね。2回小屋入りしてると交流があって

七星 仲良さげだなって思いました。アフタートークも安心だなって思いました

新宮 vol.2のアフタートークは刈馬カオスさんに来ていただいて、これもありがたかったですね。言葉を尽くしていただいて

七星 注目されてますよね

岡本 やっぱ注目してほしい。お願いします

七星 見逃したこと後悔してほしいです。

森 そうですよね。Vol.1、vol.2を観てない人は危機感を持った方がいい(ウソです)

七星 vol.3を観て「こんなに面白いんだ。なんでvol.1、vol.2を観なかったんだ」って気持ちになるんじゃないですかね

岡本・新宮 そうなってもらえるように頑張ります

森 ほんまですね

新宮 毎回不安ですからね

森 ね。どうしたらいいんですかね

新宮 不安の話?

岡本 あとでゆっくり聞くわ

吉報vol2以降の各団体の活動について

_vol.2「かつぐ」からおよそ 8 ヶ月。Vol.3「のびる」が行われるわけですが、この間の各団体の活動も精力的でしたよね?

5月 せんがわ劇場演劇コンクール 喜劇のヒロイン 『いない、いない、いないっ!』

『いない、いない、いないっ!』イメージビジュアル

新宮 4月の吉報の後、5月にせんがわ劇場演劇コンクールがありました

森 すごい短い期間ですね、吉報と稽古は被ってなかったんですか?

新宮 ちょっとだけ被ってます。4月頭くらいから1、2回東京へ行って稽古して、吉報終わった後に5月からがーっと稽古する感じで

岡本 映像ですけど観て面白かったです

森 面白かった

新宮 森くんは劇場にいたよね

森 劇場で観させていただきました。良い街でした、仙川。キューピーの工場があって

新宮 良い街です、本当に。家族連れが多くて。たしか駅の発着チャイムが3分クッキングだったかな

七星 かわいいですね

岡本 せんがわで上演した作品は劇場の話でしたよね

森 演劇をやる人の話で、吉報vol2から続けてメタなので。メタに興味があるんだなと思って

新宮 そうですね、ポジティブに言うと、
フィクションを客観視したフィクションの方が、現実に対して強度があると思い始めた時期で、ネガティブに言えば現実が強すぎてフィクションでは太刀打ちできないんじゃないか。という思いで自分が客席に座っていることが多くて

森 何を見ているんだろうってなることはありますね、ドラマを見ていて

新宮 そこに対しての感覚を少しでも合わせたいなという気持ちがあって、フィクションに対して試行錯誤しようという感じでした

森 それから後の変化はどうですか

新宮 そうですね、メタフィクションを書くにしても、その基盤のフィクションをもっと強く書けるようにしたいという気持ちです。(作品について)ある程度面白いって言ってもらうことはあったからそれは糧にしつつ、ドラマもちゃんとして、戯曲としての精度を高めたいというのが個人としても団体としてもありますね。お客さんに純粋に楽しんでもらえるものを作りたい。

10月 老若男女未来学園 第三回本公演 『アワ・マクベス』

『アワ・マクベス』舞台写真

森 10 月には『アワ・マクベス』がありまして

岡本 どうでした?

森 いやー楽しかったですよ。勉強になりましたね。古典をちゃんとやるっていうのが面白くて。結構原作から改変してやったんですけど、現代の話に置き換えていく作業みたいなのが、楽しい

新宮 観に行きました

森 そうですか?

新宮 認識しといてよ(笑)

森 ありがとうございます

新宮 面白かったです

森 あれもね、場所が良くて。スタジオHIKARI。桜木町の駅から坂を登っていったところにあるんですけど

新宮 街の話が続きますね

森 街、大事ですよ。演劇ってその場に足を運ばないといけないものですから

新宮 道中何があるかは大事ですよね

森 初めてシェイクスピアに挑戦してみて、やっぱ面白いんだなと思いました。ただやっぱり難しい部分もあって。中途半端に現代に置き換えようとしちゃったから、辻褄があってこないぞということも多々ありつつ、うまいことやるっていうのに必死でした。
演出も難しくて、どういうお芝居の仕方をすればいいんだろうか?と。出ていただいたのが本当にいろんなことができる俳優さんたちだったので、逆にどうしていただくのがいいのかっていうので、めちゃくちゃ悩んじゃっていましたね。すごく勉強になりました。
あと90分の演目になったんですよ。それだけ長いものをやるのも初めてで。でもやってる分には90分っていう感じがしなかったですね。60分くらいで終わってるようなイメージ

岡本 結構夢中になって観れるような感じになった?

森 やってる側としてはそうでしたね

新宮 変わらず映像の演出があってあれはリアルタイムの映像を使ってるんですか?

森 一部リアルタイムです。あとそれとは別に、プロジェクターで原作のセリフを全部表示するっていうのをやってたんですよ。それが結構面白い印象になりましたね。僕が書いたセリフと原作のセリフが入り混じってるんですけど、その区別を分かりやすくしたというだけのつもりが、別の効果もあって

新宮 音で聴く楽しさと文字面で読んだ時の面白さが同居した感じが楽しかった

森 文字が出るとちょっと距離が出るじゃないですか、上演と観客との間に。そこを面白がるってことをやってたんじゃないですかね

新宮 あと部屋を掃除してるシーン、マクベス夫人が手を洗うところに重ねてずっと掃除をしてるところがあって、それがすごい面白かったですね。
どうしようもないとき掃除するもんね、人って

森 取り憑かれたようにこう、必死に掃除をするみたいな。あそこは俳優さんからの提案だったと思うんですけど、そういうやり方が僕には思いつかなかったから、あのシーンは俳優さんの力があってこそでした。演技で魅せるみたいなことをあんまり考えられないから、助けられましたね

古典の上演、自分以外が書いた戯曲の上演について

森 皆さんもぜひ古典やってみてください。

七星 吉報をシェイクスピア縛りで

森 『吉報 シェイクスピアスペシャル』?

岡本 ぐだぐだになるわ

森 ハムレット・ハムレット・ハムレットで

岡本 なんでだよ

森 一幕二幕三幕で分けてそれぞれやる

岡本 危険な香りしかしない

新宮 怒られそう

~~~

七星 人の戯曲を演出するのはやってみたいですか?

新宮 やってみたいですね

岡本 同世代とかの作品とかも含め?

新宮 そこも含めですけど、どっちかっていうと既成の名作、すでに一個出来上がったものがある状態に対してそれじゃない答えを自分が用意するってことが楽しそうだなと思いつつ、「できるのかな?」っていうのももちろんあります。やってみたくないですか?

森 怖いですよね。結局マクベスも正直にはやらなかったんで

新宮 じゃあちょっと僕もやめとこうか

森 やってください

新宮 とんでもない。自分の劇作に集中しますうつつをぬかさず…

七星 (新宮は)結構演出を人に任せたりしてますもんね

新宮 他の人に任せたことは何回かありますね。東京で『生まれる!』っていう作品を三輪舎の村山さんという方に演出してもらった事があったし、名古屋で『沈黙で金、雄弁でも金』って作品を荒井くんっていう大学の同期にお願いしたりしました。

『生まれる!』舞台写真


岡本 自分以外に演出を任せることに抵抗はない?

新宮 全然抵抗はないですね。自分でやった方がいいことも勿論あるし、人に任せることで自分だと諦めちゃうっていうか、自重しちゃうことをやってくれてる時とかがあって、それは絶対そっちの方が面白い。自分で触る時と違うような成果がある

森 (自分以外に演出してもらう場合)書いてる時の意識としては、演出のことは想像せずに書くんですか?

新宮 1回余白をめちゃくちゃ作りすぎた台本を渡したことがあって、それは全然機能しなかったんですよ、余白として。だから、そんなに自分が演出する時と変わらずに書いた方がいいんだなって思って

森 そうなんだ。今回僕はそれをセルフでやろうとしてて、演出のことを考えずに書いて、後で自分が困るっていう。でも考えずに書くの難しい。未来の稽古場に任せる感じ

新宮 それでいうと少し前に、「若冠」っていう、20 代の人が集まるショーケースに台本を書かせてもらって演出もしたんですね。その時書いた作品が『鯛』っていうタイトルで。魚を釣るシーンがあるんですけど、それどうやってやるんだろう?とか思いながら書いて。鯛じゃなくて「鯛」って言い張る海女さんが釣り上がるっていう話なんですけど。

森 本来であれば釣り竿の先に餌を咥えた海女さんがいてほしいわけですよね

新宮 どうやってやるのって感じなんですけど、それはそれでなんとか上手くいくし、そのぐらいしないと多分こじんまりしたものに陥りがちなんだなっていう

森 どうしようっていうのを考えずにもう書いちゃうっていうことですよね

新宮 こういうこと起きたら面白いってことを書いちゃう

森 人に任せるぐらいの感覚で

新宮 それができるようになってきたかもしれない

森 そうないですよね。僕も変なことをやっぱり書きたくなっちゃうんですよ。海女さんを釣り上げるもそうだけど。岡本さんどうですか?

岡本 僕はドラマを書こうとしててそこまでトリッキーなことは起こらないからあれだけど、書きながら場面転換どうするのとか美術どうする?みたいなのはめっちゃある

森 書いてたら登場人物が増えちゃったりとかね

岡本 それもある。吉報vol.3の話になっちゃうけど、元々二人芝居として書いてたけど、後になってもう一人必要だってなって書き直したんだよね、それは一人二役を使おうと思って書いてたんだけど、稽古場に入る前に演出の頭で考えると違うんだなみたいなことはあった

吉報vol.3「のびる」について

吉報vol.3 のびる


_さて、いよいよ来年1月に迫った吉報vol.3「のびる」。とても楽しみなんですが、観客の皆さんに期待してほしいことはありますか?

森 どうですか?期待してほしいこと

新宮 振りかぶってください

岡本 そろそろ僕らもこの公演形態に慣れてきてるし、vol.2とvol.3の間にもそれぞれ、僕は戯曲の講座通ったりしてたし、二人は上演をしてたわけだし。だから経験値や、脂の乗り方が多分ちょうどいいぐらいに今、来てるんじゃないかな?って思ってるんだよね

森 そうそう、前回より面白そうっていうのが毎回ありますよね。vol.2のときも、vol.1より絶対いいなと思ってたし。どうですか?

新宮 そうですね。vol.2が僕の中で面白かったのでなかなか、あれを超えるというのは難しいところですよね

森 そう、でも面白くなっていくと思うんですよね。なんかね…来てるんですよね

岡本 すごい感覚派だ

新宮 マリック?

森 自分の中で来てるんですよ、吉報が。演劇がマイブームなんで、今



_各作品の内容についても教えてください。では、老若男女未来学園さんからお願いします。

森 はい。今回は客演に劇団ハイエナの小島さんをお呼びして『すき焼きにマジックマッシュルーム入れんな!』という作品を上演します。業者の男がエアコンを取り付けに行ったら姉妹がいて、すき焼きを食べてる。で、そこにマジックマッシュルームが入るのかどうかっていうあらすじで

岡本 すごいね。まったく思いつかない。

新宮 お正月にすき焼きを食べるってシチュエーションは結構ありますよね。

森 そうですよね。親戚が集まってちょっといいもの食べようか、みたいな

新宮 お客さんには、すき焼きが出てくるかどうかに期待してほしいですか?

森 やっぱりタイトル通りやるのが大事だという意識が最近あって、すき焼き、マジックマッシュルーム、エアコンといういろんなキーワードがあるんで、それがどう出てくるのか?っていう部分も楽しんでほしいです

_では続いて劇団サカナデ、お願いします。

岡本 僕らは『線を越える』っていう、仕事演劇を作ってて。営業の話なんですよ。僕が昔新卒で営業してて、その時に経験したひどい目とかを全部台本にしてやろう、みたいなモチベーションで書きました

森 プロレタリア・ルポ演劇ですね。

岡本 そうそう、そのモチベーションだったんだけど、最終的にはドラマになったから。だけどそれに加えて、ちょっとなんかこう、ドロッとした部分をうまく書き込みたい、というのはあるかな

森 結構実体験から着想を得てるんですね

新宮 サカナデさんの作品は観ててザワザワしますよね

岡本 うん、でも今までは、友達とか恋人とか、実体験の中のプライベートエリアの話を書いてたんだけど、今回は職場だから。もしかしたらそのドロドロ感はいつもと違うかもしれない。あくまで誰にでもある、職場の中で起こるストレスみたいな、普遍的な部分に持っていけたらいいなと思います

新宮 自分事だったらすごく嫌な状況、会話だけど、人がそれをやってるとまた違った視点で興味を持てそうですね

森 個人的な話を突き詰めていくと普遍的になっていく、みたいな言葉もあるし

岡本 そうそう。それを目指すべきなんだと思う

_では最後に喜劇のヒロインさん、お願いします。

新宮 僕らは『縮縮』という作品を上演します。最近家族の話をあんまりやってなかったんで、家族に設定しようと思って。今回は兄と妹と妹の3兄弟、だから姉妹が出てくるんですけど

森 そうなんだよ、(姉妹が出てくるという点が)一緒なんだよね

新宮 そう、だから家族の会話をちょっともう一回書いてみようと思って。お兄ちゃんと久しぶりに会うときの、その距離感を想像して書いています。…どこまで喋ろうかなって思ってますけど、相談事が兄にあって、ってところまではあらすじで明示してありますね。いつもふわっとオブラートに包みがちなので…

森 面白いですよね。家族間でもいろいろ距離感違ったりしますもんね。自分の経験から物語を作るような部分もあったりするんですか?

新宮 そうですね、多少は影響してると思います



_最後に、皆さんにとって最近伸びたものを教えてください。靴下とパスタ以外でお願いします

森 靴下とパスタ以外となると結構難しいですよね。靴下とパスタだったら伸びてるんですけど…パスタって伸びるかな?

新宮 塩入れずに茹でると伸びるよ

森 茹でて、湯切った後は伸びないじゃないですか?うどんとかそばの方が伸びるよね、麺類だったら。つゆに浸かってるものじゃないと伸びない

新宮 昨日富士そばに行って。席に着いた時にお手洗いに行ったんですよ。お手洗い行って戻ってきたら、その間にそばが出てたみたいで。「ずっと呼んでたんですけど」って、富士そばの店員の人に怒られて

森 あー、自分で取りに行くスタイル

新宮 そう、取りに行ったら「ずっと呼んでたんですけど」って言ってた人と別の、調理担当の人に「麺伸びちゃいますから」って言われて。自分の作ったものに誇りを持って提供されてるのに申し訳ないなと思って。2人セットで責められて「すいません」って言いながら取って食べたら、やっぱり伸びてた

森 それは取りに行かないのが悪いから

新宮 すぐに食べ頃になるように設計されてるんですよね、きっと

~~~

森 人って伸びなくなっていくんですよ、年取っていくと。身体的にも精神的にも、能力とかも、もういろんな面で

新宮 わかるわかる、頑固になっちゃうよね。それはすごく感じるんだよ。柔軟性がなくなるから

森 「もうこれはこれでいいや」って思うことが多くなっていきますよね

新宮 それを絶対にやめないと。でも現状を疑い続けちゃうと、本当に自信がない人になっちゃう

森 確かにね。「ここだけは」という信念があるといいんだけど、それが変なところまで広がっていったのが老害だから

~~~

新宮 褒められたら伸びるよね。みんなね

森 褒められたら伸びますよね。でも疑い深くもあるんで、本当に言ってるのか、っていうのは……

岡本 もうまっすぐ受け取れない

新宮 それをやってると褒めてくれる人がいなくなるんだ、っていうことに最近気づきましたよ。褒めてもらってるんですけどね

森 でも周りの人どんどん褒めてくれなくなりません?劇団員も慣れてくると何も言わなくなってくる

新宮 最初から面白いって思ってるからこそ、もう言わないんじゃないですか?

森 いや、でも言わないと。松屋とか行った時も「本当に美味しいよな」って言った方がいいと思う

岡本 いつもと同じだけど美味しいよなーって?

森 そうそう。改めて新鮮な気持ちで食べると本当に美味しいなって。富士そばでもそうです

新宮 でも、個人でやってる定食屋さんだと「ごちそうさまでした」って言いたくなるけど、マックで食べた後に「ごちそうさまでした」って言って出て行かないじゃないですか?

森 いや、言った方がいい。僕ドトールでも言いますから。レジの横を通って出て行くときに「ごちそうさまでした」って

新宮 そうするとドトールが伸びるんだ

森 そうそう、どんどん豆が良くなってくから。「あ、先週来た時よりおいしい!」って

~~~

岡本 それで言えば僕、髪の毛伸びるのめっちゃ早いんだけど

森 あれ、いつも短いイメージでした

岡本 それはずっと通ってた美容室が行けば行くほど、僕の髪を短く切ってくれる、そういう特性のある美容師さんだったんだけど、ちょっと産休に入られちゃって。最近美容室変えなきゃいけなくなって、髪伸びてる。これでどうですか?

新宮 いいんじゃないでしょうか


最後までお読みいただきありがとうございました。
吉報の本番はもう目前に迫っております。皆様のご予約、心よりお待ちしております。
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