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日本に宇宙産業を切り開くーー大樹町にスペースポートができる意義とは。


「北海道に、宇宙版シリコンバレーをつくる」そんなビジョンのもと、北海道大樹町内に民間にひらかれた宇宙港「北海道スペースポート」の管理運営や構想実現を推進する新会社「SPACE COTAN(スペースコタン)株式会社」が、4月20日設立されました。代表取締役社長兼CEOには、全日本空輸(ANA)出身で、エアアジア・ジャパンCEOなどを務めた小田切義憲が就任しました。
今回は、35年以上も前から宇宙のまちづくりに取り組んできた大樹町長の酒森正人氏と、弊社CEOの小田切が「北海道スペースポート(以下、HOSPO)」についてお話いたします。

―いま、なぜスペースポートが必要なのか?市場のトレンド、スペースポートが果たす役割、必要性について

酒森氏:世界的にも宇宙産業は成長産業だと言われており、2040年には100兆円まで拡大する試算がでています。小型人工衛星の打上げは2019年に年間350機程度だったものが、2030年には年間1000機程度まで増える予測です。この需要を満たすためには、小型衛星打上げのためのロケットはもちろん、それを打ち上げるロケット射場(以下、射場)が必要です。現在、国内の人工衛星開発企業も海外のロケット射場から打ち上げるケースが多いのですが、打上げ準備のための輸出入の申請や、オペレーターの長期滞在などの課題も多く、国内で打ち上げたいというニーズがあります。さらには、インターステラテクノロジズ(以下、IST)に代表される民間のロケットの取り組みが進んできたということ、大樹町が長い間力を入れてきた航空宇宙の取り組み、それがマッチングしたなかで、いよいよロケット射場を含む「スペースポート」を作ろうという機運が醸成されたのが今だと思っています。その北海道スペースポートの事業を具体的に進めるプレイヤーの役割を担うのが、SPACE COTANだと考えています。

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ーブレずにやってきたのはすごいですよね。

酒森氏:本当にすごいことだと思います。30年以上前に宇宙に取り組むといったときの町民や役場職員のリアクションも想像出来ないですし…それでも多目的航空公園を作り、1000mの滑走路を整備し、JAXAやソフトバンク、川崎重工、室蘭工業大学、IST等を誘致していきました。取り組み続けた歴代の町長の本気度が垣間見れますよね。

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JAXAの大気球実験

―北海道スペースポート(HOSPO)の計画はどのようにつくられてきたか、これまでの経緯や関係者など。大樹町の宇宙のまちづくりについてもきかせてください。

酒森氏:当初は国が開発していた宇宙往還機をスペースポートに誘致するイメージだったと思うんです。それが、時代と共に民間のロケット開発が活性化してきて、大樹町に拠点を構えるISTがロケットの開発と打上げをやっていることがあり、民間が開発するロケットの射場を最優先で進めていくべきだと考えて、ここ数年で具体的な準備を進めてきました。

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インターステラテクノロジズが打ち上げた観測ロケット「宇宙品質にシフト MOMO3号機」は国内初の民間ロケットとして宇宙空間に到達した。

ー北海道航空宇宙企画株式会社(HAP)を立ち上げた経緯について教えてください。

酒森氏:HAPは事業運営会社の準備会社として大樹町100%資本で2019年に立ち上げて、市場調査や事業計画づくりを進めてきました。国内だけでなく海外のロケット打上げ事業者への営業活動も行ってきました。さらに2020年には地域再生計画にHOSPOの構想を盛り込み、内閣府の認定も受けました。ここ2年くらいは、一歩どころじゃなく両足を踏み込んで更に大きく飛び越えているくらい、行政の枠組みを越えた動きをしていると思っています。航空宇宙の取り組みも、ロケット射場を作ることも、誰もやったことのないこと。実現するには、行政や民間という線を超えて取り組まなくてはならないと思いますし、しがらみに囚われず進めていきたいと思っています。

酒森氏:幸いにも、北海道や、北海道経済連合会、とかち航空宇宙産業基地誘致期成会、北海道スペースポート研究会、北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC)などの応援団をはじめ、元々JAXAで研究されていた研究者の皆さんや、民間で宇宙を目指されている方々など、大樹町の航空宇宙の取り組みに賛同してくれている方々がたくさんいるので、チーム北海道として取り組めているというのが実態だと思います。

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―北海道スペースポート(HOSPO)のコンセプト、想定顧客や今後の整備計画について教えてください

酒森氏:大樹町は種子島、内之浦に次ぐ、国内で稼働する3つ目の射場です。この3つの射場のうち、民間のロケット打上げができるのは大樹町のみ。射場だけでなく今後は宇宙旅行等を目的とした宇宙船(スペースプレーン)のための滑走路の延伸なども行います。私たちが目指しているのは、民間にひらかれたスペースポート。民間企業や政府、大学など宇宙に関わるすべての人たちが、自由に使える宇宙港が、北海道スペースポートです。なので、「みんなのスペースポート」がある意味コンセプトですね。

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大樹町は種子島、内之浦に次ぐ国内3つ目のロケット射場

ー地域創生の文脈としてはどうでしょうか?

小田切:各地で地域創生のプロジェクトに取り組んできましたが、切り口がほぼ観光産業しかないんです。観光地を巡って、美味しいものを食べて、温泉があれば温泉に入って泊まってもらう。そうすると、だいたい長くても3泊くらいしか滞在できないし、どこへ行っても同じようなフレームにしかならないんです。ところが、大樹町の特徴は観光と産業が組み合わさっていることが強みだと思います。この、航空宇宙産業を、観光や教育にも繋げていけないかと考えています。特に学生の修学旅行は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、これまでの1学年がまるごと移動するスタイルから、子どもたちの関心にあわせたプログラムで比較的少人数のグループでの旅行スタイルに変わってきているといいます。HOSPOは、民間の宇宙開発の最先端を体感できる場として修学旅行の聖地になるのではないかと思っています。まさにHOSPOを核として地方創生をやっていきたいし、もしかしたらみなさんが子どもの頃くらいまで人口が戻るかもしれないですよね。

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小田切:東京一極集中から地方多極分散への要となる要素を持っていると思います。ただ、こればかりは容易にできることじゃない。35年以上続けていた取り組みと、地の利がありますよね。地形的に非常に恵まれており北海道スペースポートをきっかけにいわゆるスターシティになる可能性を秘めています。

―世界中および国内でスペースポートの計画が進んでいますが、その中でも注目しているところはありますか?差別化のポイントは?

酒森氏:差別化ポイントは、民間複数社のロケットの打上げが可能な射場を目指しています。2023年にLaunch Complex-1、2025年にLaunch Complex-2という人工衛星用ロケットの射場を整備しますが、その後もニーズにあわせて3、4…と射場を増やすことも考えています。さらにはスペースプレーンの実験機のために滑走路を1000m→1300mに延伸する計画、さらにはスペースプレーンの商業打上げに向けた3000m滑走路を新設する計画もあります。また国内でも珍しいのは、垂直打上げと水平離着陸の両方に対応する宇宙港であることですね、アジアで唯一です。

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2023年に完成予定のロケット射場 Launch Complex-1

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2025年に完成予定のロケット射場 Launch Complex-2

小田切:いま、海外も含めて営業をしています。そのときに、やはり好評なのは、南と東の両方に打上げができることですね。オーストラリアのスペースポート等、南にしか打ち上げられない場所もありますが、今後は衛星コンステレーションなどで東への打上げが増えていくと言われています。また、アクセスが良いのは非常に重要ですね。人工衛星は飛行機で運びますし、ロケットは船で運びます。とかち帯広空港、十勝港などが車で1時間圏内にある。他にも、働く環境づくりも大事です。外国人はPlay Hard,Work Hardという考えの人が多いので、そういう方たちにも良い環境を提供できると思います。毎晩美味しいものを食べられますし、世界の射場は砂漠に一ヶ月缶詰になるとかもありますからね。早く海外に行ってセールスできる環境に戻って欲しいですね。

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―国内でスペースポートを整備するうえでどのような課題がありますか?

酒森氏:一番は、スペースポートを作っていく上での財源の確保でしょうか。寄付やふるさと納税の制度を活用して資金を確保し、さらに地方創生交付金でレバレッジをかけて射場の建設資金にする計画です。今回の取り組みで射場を作るのは大樹町の役割なので、そこは計画通りやっていきたいと思っています。先に述べた「みんなのスペースポート」の「みんな」というのは、大樹町の取り組みを応援してくれる方というのが非常に強くあります。それは企業や個人を問わず、そういう方々の支援を頂いた中で共に作っていくというのがコンセプトであるので、まさに共創していくために、どうやって応援してもらえる体制を作っていくのか、つまり財源をどうやって確保していくのが課題です。

酒森氏:そのためにはまず、北海道スペースポートの取り組みを日本の皆様に知ってもらうことが第一歩だと思います。まだ、十勝や北海道の域を出ることが出来ていないので、日本の新たな産業のために必要なんだと情報発信していきたいと考えています。ISTの人工衛星用ロケット「ZERO」の打上げが成功すれば、海外国内問わず宇宙ベンチャーがどんどん集まって来てくれると思っています。

小田切:そうなんです。大樹町のことなんですが、日本の新たな産業という点で日本のためになるということを、日本中の方に分かってもらう必要があります。その観点から、私たちは「北海道スペースポート」と名乗ったんです。スペースポートにならなきゃいけない、射場のシェアリングビジネスで終わってはいけないんですよね。

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小田切:スペースポートはまさに僕たちが子どもの頃に夢を見た、宇宙に行くとき宇宙船が離着陸している場所であって、それを達成しなきゃいけないというのは非常に高いハードルだと考えています。なぜかと言うと、「宇宙港」という規格をつくっていかなきゃいけないんです。規定、基準や法整備についても国と一緒に進めていく予定です。誰がどう管理していくのかという制度づくり、前例のないことなのでかなりパワーが必要ですよね。

―北海道に、宇宙版シリコンバレーをつくるというビジョンにこめられた思いは?

酒森氏:まちづくりにおいて、企業誘致して経済的な部分を作っていくというのは重要なポイントなのですが、近年の大樹町において、企業誘致の成功事例としては間違いなくISTなんです。最初は数名だったのが、今はもう60名を超える従業員を抱えていて、新社屋を建て、事業を展開し経済活動をしてくれています。ですので、まずは核になってもらいたいのはISTです。

酒森氏:その取り組みが拡大していくなかで、関連企業や研究機関が増えていくと嬉しいと思っています。JAXAの実験場もありますし、2020年には室蘭工業大学がサテライトオフィスも開設してくれました。このように、産業の核が拡大していくと、北海道経済連合会が掲げた宇宙版のシリコンバレーがこの地域に形成されていくことになりますよね。


酒森氏:大樹町や十勝に限らず北海道のどこかに宇宙関連の企業が来てくれると、そういう集積がきっとみんなのためになっていくので、北海道全体がシリコンバレーになるというイメージは持っておきたいですね。

小田切:すぐに大樹町だけでは収まらないくらいの規模になると思います。

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小田切:航空宇宙産業のクラスター(産業集積地帯)を作るという点から言うと、それを求めている人はいっぱいいるんですね。例えば自動車産業ひとつとっても、ガソリンから電気自動車にシフトしていっています。その過程で、多くの技術者や企業が新たな産業を求めています。宇宙産業ではロケットを飛ばすのにエンジンが必要ですが、車のエンジンを作ってきた技術者が活躍できる可能性があります。

酒森氏:北海道庁や十勝総合振興局がISTと道内企業、十勝管内企業とのマッチングの場を用意してくれて、実際に商談につながっていると聞いています。ひょっとすると宇宙のうの字も関係ないと思っていた企業が、自分たちの技術で宇宙に関わることができる、というケースも増えていくかもしれない。新たな取組として、地場企業の新規事業にもなるかもしれないですよね。

小田切:いまISTがロケットを作る過程で、本州企業に外注しているものもあると聞きました。もしそれが北海道で賄えたら、良いですよね。ISTだけだと足りないので、いろんなプレイヤーが揃えば、サプライヤーや取引先なども北海道に来てくれると思います。HOSPOとしても「我々も宇宙関連事業者を積極的に誘致していくので心配しないで来てください」と言っていきたいです。

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ー小田切さんは北海道スペースポート計画に参加されたきっかけや、大樹町にどんな印象を持ちましたか?

小田切:前職でも会社として宇宙への取り組みをしていて、今後は宇宙産業として広がっていくだろうという認識をしていました。そんな中、たまたまお声がけ頂いて、実際の現場を見るために大樹町を訪れ、約36年の歴史を知りました。

小田切:着実に宇宙の町としての取り組みを進めてきた先達の皆様には敬意を表します。いまこの大樹町があるということは、36年間一度も止まることなく、諦めずに続けてきたからだと思うんです。続ける努力は本当に大変だったと思います。また、現地視察の際にISTの皆さんのお話を聞いて、宇宙の町づくりの面白さを実感し、参画することにしました。

ー参画にあたって、どんなところで力を発揮したいとお考えですか?

小田切:今回のSPACE COTANの機能は、航空業界で言うと空港運営会社であり、ISTは航空会社で、そのISTのような会社が作るロケットに搭載される人工衛星が航空業界でいう乗客、つまり最終的なお客様ということになるので、まずは宇宙港としてその土台をしっかり作ることが大事です。航空業界の構造に近い部分もあるので、これまでの知見を活かして貢献したいと思っています。

ーこれまでやられてきた航空業界と、これから挑戦する宇宙業界、どのような違いがありますか?

小田切:よく人から「航空と宇宙で随分違いますよね」なんて言われます。確かに距離的な点でいうと違いはあるかもしれませんが、いわゆる地上の管理運営会社としてやっていくことに関しては大きな違いはないと思っています。成田空港での勤務経験も活かせるであろうと考えています。

―言い残したことはありますか?

小田切:北海道スペースポートから始まって日本を元気にするというのが一番大事だと思ってます。一番を目指すんだという気概を持って、みんなで取り組んで行きたいと思っています。

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大樹町では、北海道スペースポートへの寄付金を募集しています。

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宇宙版シリコンバレーの実現に向けて、北海道スペースポート建設のための資金として、寄付金を募集いたします。北海道スペースポートプロジェクトのビジョンに共感いただいたみなさま、ご賛同いただいたみなさまよりご支援・ご協力を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

寄付の受付方法
①北海道大樹町(自治体)への直接寄付(個人および法人・団体対象)
②ふるさと納税を活用した寄付(個人の方対象)
③企業版ふるさと納税を活用した寄付(法人・団体対象)
詳しくはこちら(https://hokkaidospaceport.com/donate/join-us/

SPACE COTAN株式会社
https://hokkaidospaceport.com/

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