10年後は宇宙が基幹産業!? 大樹町の未来を考える町民ワークショップ初開催
北海道スペースポート(HOSPO)では、航空宇宙関連産業が集積し、雇用が創出し、人口が増え、さまざまなビジネスが生まれていく「宇宙版シリコンバレー」の創造を目指しています。
HOSPOがある北海道大樹町は、宇宙関連の企業が集まり、ロケットや人工衛星の工場が増えてくると、多くの人が住むようになり、人口5400人の小さな町は大きく変化することになります。
大樹町はもともと、第一次産業が盛んな地域です。そこに新たにものづくり産業(宇宙産業)が加わった未来に、大樹町はどんな町になってほしいかを考える町民ワークショップが昨年11月30日、大樹町役場で初開催されました!
町民のみなさんが暮らしやすく、他の地域に誇れる理想の町になるにはどうすれば良いのか。活発に意見が交わされたワークショップの様子を紹介します。
一次産業が盛んな大樹町に、新たにものづくり産業(宇宙産業)が加わると・・
大樹町は北海道の十勝地方南部に位置する酪農を中心とした第一次産業が盛んな地域で、海も山もあるため、漁業、林業も盛んです。地域でとれた生乳でチーズをつくる雪印メグミルクの大きな工場もあります。
そんな大樹町が宇宙のまちづくりを掲げ始めたのは約40年前。ロケットを打上げる方角の東と南に海が広がり、民家や他の国の上空をロケットが飛んでいくことがない世界的にも宇宙産業に適した好立地のため、航空宇宙産業誘致に取り組んでいます。
世界的な宇宙産業の市場拡大を背景に、大樹町でもここ数年で関連企業の進出が相次ぎ、近年では民間ロケットの打上げや宇宙到達にも成功しています。民間ベンチャーは組織拡大するなど、優秀なエンジニアなどが町外からどんどん移住してきています。
2022年には、HOSPOの2つ目となるロケット発射場「Launch Complex-1(LC-1)」と滑走路延伸の工事もスタートし宇宙関連事業が進展を見せる中、町民のみなさまに宇宙の取り組みを知っていただき、未来の大樹町の姿を話し合う場を作りたいと考えました。
HOSPOや大樹町で今どんなことが起きているのか?今後の展望は?住民のみなさんはどう感じているのだろう?どのように進めたらみんな幸せだろう?
既存産業と調和した暮らしやすい10年後の町の姿を話し合おうと、SPACE COTAN主催で町民ワークショップを開きました。
出された案は大樹町とも共有しながら、今後の宇宙のまちづくり計画策定に反映していきます。
一次産業、商業、観光、移住、ロケット開発、教育、行政|
幅広い業種から10〜70代の18人が参加
ワークショップには、10〜70代の第一次産業、商業、観光、移住・定住、ロケット開発、教育、行政に関わる18人が参加しました。4グループに分かれ、お菓子を食べながらフレンドリーな雰囲気で宇宙の町の理想像を話し合いました。
ワークショップでは、最初に大樹町企画商工課航空宇宙推進室係長の大門英人氏が大樹町の宇宙の取り組みを説明しました。
1984年から宇宙の町としての歴史が始まったことや、JAXAとの連携協力協定締結、JAXA大気球実験での高度世界記録達成、ロケット開発ベンチャー「インターステラテクノロジズ」による宇宙空間へのロケット打上げ、SPACE COTANの設立などを紹介。2023年度にHOSPOの新たなロケット発射場が整備されることや、整備資金として全国100社以上から10億円近い企業版ふるさと納税をいただき、多くの期待が大樹町に集まっていることも伝えました。
次にSPACE COTANのCMO・中神美佳氏がHOSPOの最新状況や今後の展望、大樹町で起こりうる変化について話しました。
世界的に見ても北海道・大樹町がロケット発射場に最適な場所であることや、HOSPO周辺には多くのロケット会社、ロケット/人工衛星などの工場が集まる可能性があること、ロケット打上げで多くの観光客が来るようになること、北海道全体で年間2300人の雇用と267億円の経済効果が生まれることを話しました。また、牧場で出た牛の糞尿からメタンを作り出しロケット燃料にすることで、酪農の課題であった牛の糞尿の処理・におい問題が解決し、地域でエネルギーを自給自足できること。大樹町を舞台にしたロケット開発漫画がつくられているなど意外な波及効果についてもお話ししました。
「若者が残る町に」「町民と共に宇宙事業進めたい」など活発に意見交換
その後ワークショップに移り、「宇宙分野が新たな産業になったとき、どんな町になってほしいか」「こんな大樹町だと嬉しい!こんな大樹町はいやだ!」「まちづくりへの関わり方」などをテーマに4グループに分かれて話し合いました。
参加者からは「大型商業店を呼んで便利で暮らしやすい街になってほしい」「人とお金が集まる稼ぐ町にしたい」「若者が残る町になってほしい」「将来は十勝地方の中心都市に」「宇宙と既存の産業との調和が大事」「宇宙のまちだからこそ、宇宙の恩恵を一番受ける町になってほしい」と自由な意見が出されました。
一方、「課題やリスクはないのか」「宇宙産業の集積が本当に実現するのか」「もっと町民に対する説明をしてほしい」など心配する声やご意見も。「宇宙産業によって人口が増えるのは嬉しい面もあるが、町民と共に進めないと成功しない」「みんなが宇宙の取り組みを良いよね、と思えるような取り組みを」などと、より多くの情報提供を求める声もありました。
各グループの意見をご紹介します。
マクドナルドが欲しい!グループA
牛の排泄物からロケット燃料を作るエネルギーの地産地消が印象に残った。エネルギーが海外の情勢に左右されない点がよい
人口が増えて、マクドナルドや無印良品、3coinsなどのチェーン店、大きな商業施設がある便利なまちになってほしい
牛の排泄物を利用することでたい肥の臭いがなくなっているなどの例は、宇宙によって生活が良くなるとみんなが実感できる
人口もお金も増やしてまちづくりに投資できるようにするために、ふるさと納税や観光事業で収入を増やす
町民へのコミュニケーション・空き家や土地不足を指摘 グループB
宇宙版シリコンバレーが実現すると町民はどれくらい増えるのか。もっと具体的に道筋や展望を示してほしい。
町民が置いてけぼりになっている。もっと町民に説明、コミュニケーションを。
人口1万人。海外の人が多いくらいの面白い町へ。人口が増えることに対してネガティブは良くない。
空き家がほぼない。土地や不動産を有効活用するための施策をきちんとやってほしい
宇宙関連の人とそれ以外の人にならないように、まち全体でウェルカムな雰囲気を作りたい。
既存産業(一次産業)と宇宙産業の調和を グループC
既存産業との調和がとれるのか。宇宙産業によって既存産業がもっと強くなるといい。
周りは人口が減る町ばかりの中で、人口が増えるのは嬉しいこと。人口1万人と言わず、もっと発展してほしい
工業のまちは苫小牧のように寂しい景観になることが多い。大樹町なら自然と調和した「新しい工業地帯」を作ることができる!
高齢者や低所得者の方々も恩恵を受けられるように。
子供が大樹町で良い教育を受けられる、良い働き口がある
辛口ながらも応援してくれるグループD
新産業創出→人口増→地域波及効果→国内だけでなく海外からも技術者が集まる。人口が増え新産業を作ろうという動きがあるまちは他にない
他のところは県知事が旗振りをしているが、北海道はどう考えているのか
宇宙の取り組みを30年以上やってきて、町民のためのものになっているのか?報道でよく見るが、町民に対して説明は足りていない。
宇宙産業と教育は連携がとりやすいはず。しかし実際は地域との乖離を感じる。教育×宇宙の取り組みをスムーズに推進できるよう理解促進が必要。
若者が大樹町に残ることができる環境になってほしい
今回のワークショップでは多様な意見が出され、宇宙の取り組みに対する町民の本音をお聞きすることができました。また、ワークショップという対話の機会を作ることで、宇宙の取り組みだけでなく参加者同士の地域への想いを知ることができたという感想もいただいています。
今回のワークショップの内容以外にも、町内・町民へのヒアリング調査なども進め、北海道大樹町の宇宙のまちづくり検討委員会での議論を行なっています。これらの情報をベースに、2023年3月を目処に大樹町の宇宙のまちづくりの計画策定を進め、2024年からスタートする大樹町の第六期総合計画にも提言していく予定です。どんな将来像が描かれるのか、楽しみにしていてください!
HOSPO整備へ、ふるさと納税募集中
大樹町、SPACE COTAN株式会社は、HOSPO施設の拡充のため企業版ふるさと納税や、個人版ふるさと納税を募集しております。
「北海道に、宇宙版シリコンバレーをつくる」というビジョンに共感いただける皆様のご協力をお待ちしております!
〈ふるさと納税詳細〉https://www.town.taiki.hokkaido.jp/soshiki/kikaku/uchu/hokkaidospaceport.html
〈ガバメントクラウドファンディング〉
https://camp-fire.jp/projects/view/637366?list=search_result_projects_popular