Society of Hospital Medicine Converge 2023 参加報告
今回は、私本田が参加した米国Society of Hospital Medicine(SHM)のConverge 2023について、ご報告します。2023年3月27-29日にテキサス州オースティンで開催された、米国Hospitalistの学会のいわゆる年次学術集会です。
自施設のデータを用いた臨床研究の結果をポスター発表しました。
本稿では、学会のコンテンツや運営を中心にご報告します。
もちろん全てを観られたわけではなく、自分の関心の強い研究関連を中心に参加しておりましたので、内容が偏っていることはご容赦ください。
プログラム全般
生涯学習のためのClinical updates
日々の診療やマネジメントにつながるPractice Management、Perioperative/Co-Management、Palliative Care、Technology
研究関連のAcademic/Research
医療の質・安全関連のQuality、Patient Experience、High Value Care
さらに、Diversity Equity Inclusion、Vulnerable Populations
そして、Wellness、Health Policy
といった多様なテーマのセッションが開催されていました。
Pediatrics、Early Career、NP/PAという特定の対象者向けの企画もありました。
様々な特定の関心領域を持つ参加者の集まり、Special Interest Forumsも行われていて、情報共有やディスカッション、交流の場となっていました。
日本の学会でも各セッションを大きなテーマでグループ分けして提示すると参加者にとってわかりやすいなと思いました。
コンテンツのテーマとしては日本プライマリ・ケア連合学会と日本病院総合診療医学会の学術集会で行われているものと重なる部分が多かった印象ではありますが、
Clinical updatesはやはり米国のHospitalistがほぼ全ての内科領域の入院診療をカバーしているということから、最も大きな割合を占めており、Hospitalistではなく、各領域のエキスパートがHospitalistの視点に沿ってレクチャーをしていた点が印象的でした。
研究
Academic/Researchのセッションとしては、研究の口演発表に加えて、研究の手法等についてのレクチャーがあり、日本の学会と比較して、研究演題の数は多いですが、コンテンツおよび学術集会全体に占める割合としては同様の印象でした。
年間Best of Research and Innovationsのセッションはめちゃくちゃでかいメインホールで行われ、TEDばりにステージ上を動きながらプレゼンしていて圧巻でした。
研究発表の内容としては、医療の質改善・患者安全関連の実践が様々な施設で大規模に行われていて、その成果を学術的に報告するという熱意が感じられるものが多かったです。
Pediatric Hospitalistからの発表も多く、盛り上がっている領域なのだと感じました。
ただ、比較研究でなかったり、交絡調整していなかったり、基本的な研究デザインに問題があるような発表も見受けられました。Hospitalistは臨床だけでなく研究もやろう、というような研究のススメとノウハウを示すようなレクチャーもあり、SHMでも研究を増やすことや質のボトムアップがまだまだ課題なのだろうなと感じました。
臨床家とアカデミアとの連携に課題があるということでしょうか?
交流
SFHMであるカタールのDr. Anand Karthaが声かけをしてくださり、International Hospital Medicine Group Meetingが開催されました。
スペイン、オランダ、ブラジル、パナマ、カタール、サウジアラビア、オーストラリアといった国々からの参加者に加え、米国のHospitalistからも複数の歴代のSHMのPresidentを含む参加者が参加して、交流しました。
各国のHospitalistの状況の共有や、International GroupとしてどのようにSHMに貢献できるかといった議論が行われました。
初日には初参加者のためのBreakfast会場が設けられ、朝食を食べながら初参加者どうしで交流したり、そこにセッションを開催するようなシニアの人たちも交流に来てオススメのセッションを教えてくれたり、といった場になっていました。
日本の学会でも初参加者が溶け込みやすいような配慮がさらにできると良いと感じました。
学術集会の運営
学術集会の運営という視点でも少し考えてみました。
経済的な規模が日本とは全然違うとは思いますが(参加費だけみても日本の学会の6-7倍でしょうか)、設備の豪華さ、会場で提供される朝食や昼食、学会グッズなどに驚きました。
ただ、写真撮影のパネルは先日の獨協主催の病院総合診療医学会の圧勝ですね。
日本の学会では現実的でないかもしれませんが、朝食や昼食がビュッフェ形式で提供され、そこに足を運べば交流の場になるような形になっており、良いなと感じました。
また、上述した、Special Interest Forumや、初参加者のBreakfastもそうですし、名札に貼り付ける自身の特性を示すリボンが多数用意されていて、参加者の共通点からコミュニケーションを促すきっかけ作りがされていると感じました。
プライマリケア学会では導入されていますが、学術集会用のアプリがあり、スケジュールの把握や計画、スライド閲覧、参加者の検索やメッセージ送信などができ、便利でした。
このアプリに顔写真やメールアドレスも含めて自身のプロフィールを登録したことで、International Groupのお誘いを頂くことができましたし、日本のシステムのことを教えてよとメールをくれた方がいて交流につながりました。
ポスター発表はePosterで、ずらっと並んだモニターにePosterが掲示され、25分区切りで演題が切り替わっていく形式でした。ePosterは学会後3か月間はアプリから閲覧可能で、これもコストがかかるのだろうとは思いますが、現地に行かなければポスターが観られないのはもったいないので、ぜひ導入したいところだなと思いました。
大半のセッションがオンデマンドで視聴可能ですが、オンデマンドのみ参加という選択肢はなく、やはり現地参加で交流したり盛り上がりを感じて士気を高めたりするというのが現地開催する意義として大きいのかもしれません。
まとめ
実際に参加することで、SHMの様子がわかり、交流することもでき、良い機会になりました!
コンテンツとしては、もちろん日米の背景や健康課題の違いに依存する部分は大いにありますが、扱うテーマとしては日本の総合診療の学会と大きく変わりはないと思いました。
研究に関しては、病院内での医療の質改善の実践が大規模に行われていて、その成果を報告するようなものが目立った点は大きな違いかなと感じました。研究演題の数は日本よりはだいぶ多いものの、まだまだ発展途上というところではありそうな印象でした。
学術集会の運営として交流を促す工夫などは参考にできる点が多いのではないかと感じました。
今後、さらに国際的な学術活動を行っていきたいです!
文責:本田優希(聖隷浜松病院 総合診療内科)