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フォションホテル京都宿泊記
1. 概要
ホテル:フォションホテル京都
宿泊日:2024年12月15日(日)より1泊
部屋:907 スーペリア(ツイン)
予約経路:一休.com
宿泊人数:2人
美食ブランド フォション生誕の地「華の都パリ」と日本が誇る伝統と文化が息づく「雅な京都」。フォションと京都が出会い、この二都市が持つ文化・伝統・芸術が融合するフォションホテル京都は、ユニークで新たな京都を再発見する手掛かりになるでしょう。美食ブランド フォションならではのグルメを堪能しながら、フランスの洗練されたデザインと京都のエッセンスが結び付いた、雅で高級感漂う空間をお楽しみください。
今回の宿泊では、ホスピタリティに関する体験のみならず、パリという強烈な個性を持つ地で生まれたフォションというブランドがパリに続いて世界で2軒目のフォションホテルをあえて京都に開業した背景を考えるとともに、パリに引けを取らない存在感を持つ京都という文化が、ホテルという西欧文化の舞台において西欧の文化の発信地とも言えるパリとどのように融合しアイデンティティが表現されているのかを実際に宿泊を通して体感することが目的である。
2. チェックイン
チェックインは15時であったため、やや早い14時50分頃エントランスに到着した(図1)。
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到着するとすぐに入り口付近に待機していたスタッフより名前を聞かれ、スタッフがすぐさま荷物を預かるとともに、そのまま2階のレセプションに案内された(図2)。
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レセプションは2024年5月8日より10階にあったものが2階に変更され、代わりに2階にあったサロン ド テ フォションが10階へ移設された。2024年3月にバー利用でフォションホテル京都を訪問した際は従来の配置であったが、今回の移設により飲食スペースをグラン カフェ フォションとともにワンフロアに集約した形であり、バーとサロンの場所が同空間になったことで座席の共有が可能になった。移設後はレセプションとしては少々広すぎるものになったが、宿泊客の導線を考えると合理的な変更である。入り口スタッフからレセプションエリアのスタッフに対して口頭での名前の伝達は見られずインカムを通して伝えられたものと思われ、レセプションで再び名前を聞かれることはなかった。テーブル席に案内後、フォションのウェルカムティーとマカロンが提供され、チェックイン手続きまでの間の時間を持て余すことなくフォションの世界観へ導入された(図3)。
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この時のティーカップはNIKKOであった(図4)。
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チェックイン手続き担当のスタッフは数分してテーブルにやってきたが、その際同時刻チェックインと思われる別の宿泊客の手続き書類を持ってきたため改めて名前を伝えることになった。周囲にはほとんどチェックインの宿泊客はいなかったが、入口のスタッフから名前を伝達された際にこちらを認識できていなかった可能性がある。混雑時の対応は見ていないがどのようなものになるのか気になるところである。部屋までの案内はされず、部屋の番号と階数を伝えられるのみにとどまった。
3. クローゼット
部屋に到着するとすでに荷物は届けられていた。部屋の内側の扉にはDo not disturb カードがかけられていたが、通常のものとは異なり、白色の「京都を満喫中」とピンク色の「夢の途中です」という趣向を凝らしたデザインのものであった(図5)。
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ラゲッジスペースはクローゼットとテレビ横に2箇所あり、ゆとりある大きさだった。クローゼットはラゲッジスペースを挟んで2つある特徴的な造りであったが、2人での宿泊を想定した場合、各々が独立して使用できるのはメリットである(図6)。
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ただ、ハンガーは片方のクローゼットにのみ置いてあったためもう片方で使用するためにはハンガーを移動させなければならなかった。クローゼットは黒を基調に背面がピンク、差し色に金であった(図7)。
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スリッパはピンクのラインの入ったもの、パジャマは黒のラインが入ったものであった。パジャマはセパレートタイプでボタンは一番上と真ん中だけ留められていた(図8)。
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アイロンは通常あまり注目しないが、フォションホテルではアイロンも黒とピンクをしており目を引いた(図9)。
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セーフティボックスはさすがに黒一色であった(図10)。
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クローゼットには他にフォションの傘、靴べらなどあったが、ホテルではよく見かけるホテルデザインの紙袋はなかった。これは後述のグルメバーにあるフォショントートバッグがあるからかも知れない。
4. リビングスペース
テレビはBGMはかかっていないもののフォションの鮮やかな壁紙が映った状態であった(図11)。
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クロームキャスト搭載の50インチで機能や大きさに不満はないが、リモコンの操作性がやや悪かった。テレビボードには竹のデザインがあしらわれたり、文机を兼ねた光沢のある黒い横長のボードが違い棚のように配置されていた(図12)。
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文机にはアクセサリートレイ、便箋類、ティッシュ、電話機があり不足するものはなかった(図13)。
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コンセントは通常のものが1つとUSBタイプが2つあり、仕事をするのにも問題ない。文机の椅子は薄いピンク、ゴミ箱は黒と濃いピンクの配色であった。このゴミ箱は、通常のホテルにあるゴミ箱の1.5倍ほどはある大きさであり、小さくあまりものが入れられないというイメージだったホテルのゴミ箱において実用性の高いものであった(図14)。
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近くには姿見があったが、使用しないときは裏向きにするとピンク色のインテリアとしても映えるデザインになった(図15)。
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ソファはやはりピンク色であるが、西陣織で作られたもので、派手さの中に京都の繊細な美しさがあった(図16)。
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加湿器は特にそれ用に作られたスペースにあったわけではないが、黒というフォションの配色で設置されていたため、インテリアの一部として馴染み、悪い目立ち方はしていなかった(図17)。
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加湿器の水は満タンまで入っていたが、電源はついておらず使用は宿泊客の判断に委ねる形であった(図18)。
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特に冬の時期であるので、すでに運転している状態で宿泊客を迎えても良いだろう。天井のデザインも、折り上げ格天井とまでは行かずとも一段上がった部分があり、その部分の金箔と間接照明が部屋全体のデザインの間伸びを防ぎ、世界観の統一感を出すのに一役買っていた(図19)。
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5. ベッド周り
ベッドはハリウッドタイプのツインであった(図20)。
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38平米という部屋の広さの割に通常より少し広さを感じたのはハリウッドタイプのベッド配置による影響もあるだろう。布団にはFAUCHONのロゴが描かれており、枕は黒とピンクのラインが入ったものがそれぞれ1つずつとピンクのクッションが1つであった。ベッドボードには西陣織が採用されており、側面の壁にはテレビ横と同じく竹のデザインが施され、その隣には京都のデザインと思われるモノクロのシックなアートパネルがかけられていた(図21)。
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ベッドサイドは両サイドに照明スイッチ、読書灯、片方に電話機、メモ帳、もう片方に時計とスピーカーが設置されていた(図22、23)。
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電源は片方が通常のコンセントが1つ、もう片方が通常のコンセントが1つとスピーカーが充電されているUSBが1つあり、備品、電源いずれも不足するものはなかった。
6. グルメバー
フォションホテルの部屋の最たる特徴はグルメバーであろう。通常、ドリンクが用意されたスペースをミニバーというが、フォションは美食ブランドを謳っているだけあり、飲み物ばかりではなくフォションオリジナルのお菓子がグルメバーと呼ばれる大きな棚に用意されている(図24)。
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クッキーやマドレーヌをはじめ、八ツ橋も用意されており、フォションのお菓子と京都の伝統菓子がコラボした形である(図25)。
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ドリンクは有料であるがこのお菓子は宿泊費に含まれており、宿泊者以外には非売品のオリジナルトートバッグに入れて持ち帰ることができる。ただ、今回の宿泊日以前に宿泊した人の記録を確認すると、以前はより豪華なラインナップであったことがわかり、価格高騰や利益追求のためにややボリュームダウンしてきている印象がある。今後、今のラインナップのままで行くのかさらに少なくなっていくのか注目される。なお、冷蔵庫内のボトルのラベルやキャップの向きは特に注意していないようであった(図26)。
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もう一つのこのホテルの特徴として、蛇口から出る水が水道水ではなく「千年の水」と呼ばれるホテルの井戸から汲み上げるミネラルウォーターであることである(図27)。
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これは2024年春より開始されたもので、これによってミネラルウォーターのボトルでの提供はなくなり、デキャンタに入れられた状態で水が提供されるようになった(図28)。
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また、容器の水がなくなったとしても、洗面台の蛇口から汲むことで好きなだけ井戸水を飲むことができる。この取り組みは他のホテルで確認できた例はなく、美食を謳うフォションならではのこだわりと言える。なお、グルメバー内のグラスはステムレスのワイングラスがドイツのショットツヴィーゼル製、通常のワイングラスがオーストリアのリーデル製であった(図29、30)。
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その他、カトラリーやティーカップなどが整然と収納されていた(図31、32)。
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また、一般的なホテルでも用意されているコーヒーや紅茶もフォションでは提供スタイルに独自のものがあった。それら専用のお重型の箱に入れられ、テーブルの上に置かれていた(図33)。
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紅茶ブランドとしての存在感が示される提供方法であったが、種類はコーヒー、紅茶がそれぞれ2種類ずつと一般的なものであった。グルメバーはフォションらしさを表現する優れたアイデアだと感じた。
7. 水回り
水回りは元々ビジネスホテルだった建物を利用しているためか、開業は2021年であるものの最近のホテルで見かける、仕切りを解放して部屋を広く見せる仕掛けではなく、リビングルームとは壁によって仕切られていた。水回りは通常ダークな色で仕上げられていることが多い中で、真っ白な空間に金、黒、ピンクの差し色が入った色合いは他のホテルではまず見ないデザインであり、ここにもフォションの色が全面に出されていた(図34)。
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ハンドソープはフォションを代表するケーキ“ビスビス“を模ったデザインであった(図35)。
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ドライヤーはダイソンであったが、ピンクと黒の組み合わせはまさしくフォションそのものであり、これ以上このホテルにふさわしいドライヤーはないのではないかという感じである(図36)。
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シャワーはアメリアのコーラー製で、色合いの相性が非常に良いものであった(図37)。
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水圧は変えられるタイプではなく一定だったため、使いづらいと感じる人もいるかも知れない。シャワールーム内には椅子が用意されており、実用面で気が利く配慮であった。タオルはハンドタオルが2枚、フェイスタオルが2枚、バスタオルが2枚、バスマットが1枚と、最低限のものが用意された内容であった。ハンドタオルまたはフェイスタオルは予備のものも置いてあるとより快適に過ごせるのではないかと感じた。バスローブはロゴ入りのもので、一般的な生地と思われるが吸水性に優れていた(図38)。
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アメニティに関して、所定の位置にボックスに入った状態で置かれていたが、ヘアブラシがその文字の向きからして上下逆さまに置かれていた(図39)。
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また、以前はシャンプー類もミニボトルで持ち帰れるようなものであったが、昨今の環境に配慮する動きからか、ボディローションを除いて備え付けのボトルになっていた(図40)。
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ホテルの楽しみ方の1つに、石鹸類のアメニティを持ち帰って自宅でも使えるというのがあるが、今後そのようなことができるホテルも減っていくのかも知れない。トイレは自動で蓋が開閉するタイプで使い勝手に問題はなかった(図41)。
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トイレットペーパに関して、一般的な三角折りではなく、ただ山折りするだけの四角く畳むスタイルで、珍しいタイプを採用していた。何らかの意図があってその畳み方にしていると思われる(図42)。
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8. 夕食
今回は夕朝食付きのプランだったため、夕食は10階のグランカフェフォションに向かった。18時からの予定であったため、17時50分過ぎくらいに向かうとその時点で他に夕食を食べにきている人は1人もおらず、窓際の席に案内された(図43)。
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スタッフは基本的に1人のスタッフが担当のようになっていたが、そのスタッフはあまり必要以上のことは話すタイプではなく、淡々と説明と提供を行なっていた。提供された時のこちら側の反応に応じて何か追加情報を入れたり、軽い声掛けなどがあるとより良いだろう。まず飲み物を聞かれたが、特にメニューを見せられるわけではなく、アルコール、シャンパン、といった大雑把な選択肢を口頭で示されるのみであったため、こちらからどのようなものがあるのか聞き返す必要があった。食事メニューはフレンチのコースで、いずれも大変美味なものだった(図44)。
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ただ、メニューを見ると京都の食材を使っているというよりは全国から食材を取り寄せているようであった(図45)。
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パンにつける用のバターは、食事の途中でほとんど無くなりかけていてもそれに気がついて新しいものと交換するということは行われなかった。客数は最終的に4、5組くらいにはなっていたものの、少ない客数であるわけだからその辺りの些細な配慮は期待したいところである。
9. バー
今回の宿泊では一休ダイヤモンド会員特典により、バーでカクテルなどのアルコールが1人1杯無料になったため、フォションのロゼシャンパンを注文した(図46)。
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グラスに注がれる際、ボトルの中身が残り少なくなっていたため、全部入れてしまって良いかと言われ、通常より少しだけ多く注がれた。ホスピタリティと言えるかは分からないが機転を効かせた粋な計らいであった。バーは他の宿泊者が1組ほどいるだけで、静かな環境を楽しむことができた(図47、48)。
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バー利用中、スタッフにターンダウンの有無について尋ねたところ、リクエストの時間を過ぎているため今回はお受けできないという返答が返ってきた。ターンダウンは全ての部屋にデフォルトで行われる場合は事前に知らされることが多いが、リクエスト制の場合このホテルに限らずスタッフに尋ねてみないと有無や対応時間が分からないため、可能ならばターンダウンを行うことは避けたいのではないかという印象を感じた。
10. 朝食
朝食は夕食と同じ会場で提供された。夕食時と異なり朝食ではフロアの座席が一時満席近くなる程利用者がおり、朝食付きプランで予約する人が多いようである。朝食はアメリカンブレックファストで、飲み物と卵料理を選ぶことができた(図49)。
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卵は京都のものを使用していたが、それ以外については特に言及がなかったため京都に限らないと思われる。パンは振る舞いスタイルで各座席を回って提供していたが、1つ1つのパンが大きいので最初に1種類ずつ提供されたもので満腹となった(図50)。
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オムレツは初めて見るほどの表面の滑らかさであり、オムレツを作るのがホテル内で最も上手な人が調理したという情報をスタッフが教えてくれた(図51)。
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朝食のスタッフは夕食とは異なり、旅行できたのか、といった軽い質問を始め、単にメニューの説明に終始することなくその場の雰囲気にあった会話をすることができた。飲み物は最初に1種類選んだが、その後その飲み物を飲み終えるとすかさず追加の飲み物は必要か聞かれ、結局気になっていたものは全て飲むことができた。当たり前のようにこのような対応があるのは素晴らしいことである。
11. チェックアウト
今回はレイトチェックアウトのため13時にチェックアウトした。その際の担当のスタッフからは滞在はどうだったか、グルメバーの中身は持ち帰ったか、などの声掛けをされ、最後までスタッフのホスピタリティを感じながらホテルを後にすることができた。
12. 総括
今回の宿泊は、単なるホスピタリティの体験のみならず、フォションが世界観をどのように作り上げているのかを主に体験することが目的であった。都市名で言えば、パリと京都の文化の融合であるが、コンセプトで”FAUCHON Meets Kyoto.”とあるように、あくまでフォションという文化と京都との融合がテーマのホテルであった。全体として、圧倒的なFAUCHONカラーが出ており、これほど世界観のはっきりしたホテルは他にないと思わせるものであったが、FAUCHONの提供するものの中に、京都のエッセンスを加えることでコンセプトを体現しているようであった。部屋のインテリアにおいては、西陣織や竹の意匠、グルメバーにおいては八ツ橋とのコラボ、そしてスタッフにおいてはほぼ全員が日本人であり、日本人だからこその言外のやり取りも含む繊細なホスピタリティを実現しており、日本、京都の心遣いを感じることができるとも言えるかも知れない。フォションカラーでは、特に金色については金箔のような色合いが多々見受けられ、金屏風を見ているようなギラギラし過ぎない色であった。ただ、その一方で、グラスや食事の食材、説明が特にされない部分は日本でもフランスでもないものも多くあり、ぱっと見でわかる部分を徹底してフォションと京都にしているのであるから、注意してみないと分からない部分、あるいは産地などのこだわりにおいても徹底してFAUCHONあるいは京都のものを使用していると圧巻のクオリティに達するのではないかと感じた。総じた印象では、FAUCHONの存在がまずあって、その中から入れ込めそうな部分に京都の要素を入れている印象であった。