やっぱり人間が好きーGunslinger Girlー
みんなやっぱり人間が好きなのだなと気づいた話。
GUNSLINGER GIRLを知らないと読んでもわかりません。
ずっとGUNSLINGER GIRLという漫画が好きである。
どんな話か。
ざっくりいうと少女の改造人間"犠体"を運用するイタリア政府非公式の暗殺機関の話である。
後のためにもう少し詳しく内容を補足すると、その暗殺機関は表向き、公営の福祉公社を装っている。身寄りがなかったり、重病で親に見放されたり、社会的に見捨てられた少女を治験体として引き取り、大量の薬品による洗脳と、人工筋肉、臓器への置換による身体強化によって殺戮人形に仕立て上げる。
彼女らを実際に殺し屋として運用するのが公社の大人たちなのだが、彼らもまた、才能がありながら前職になじめなかったり、運命のいたずらで正規ルートに乗れなかったり、不運な才能が集まっている。
大人と子供がペアを組み殺し屋として反体制派と戦うわけだが、ストーリーのメインは彼ら彼女らの葛藤である。
幸福とは言い難い境遇で、少女たち、おじさんたちの揺れ動く心を抒情的に丁寧に描いた名作である。
『病弱な少女』
『薄幸の少女』
『銃を持った少女』
『洗脳された少女』
『人体改造を施された少女』
『人形』
全部好きなので。
まあ、見事に嵌ったわけです。
以下、原作を読んでない人には訳わからん話になります。
さて、この漫画をいろいろな人に布教している。
貸し手である私への気遣いもあるとしてもそこそこの評判である。
そんな布教した人たちに必ず一つ聞いていることがある。
「推し犠体は誰か?」である。
ヘンリエッタ、リコ、トリエラ、アンジェリカ、クラエス、ペトルーシュカ、あとはほとんど話に絡んでこないベアトリーチェとかキアーラ、初登場が死体だったエルザ。主な犠体はこんなところである。
7人程度に聞いたところ、
一番人気はペトリューシュカ、時点がトリエラであった。
それ以外を上げたのは1人だけだった。
この結果を受けて気が付いたことがある。
やはりみんな人間が好きなのだ。
比較的軽い洗脳で人間らしさを残すというコンセプトで創られた二期生のペトリューシュカ。
パートナーであるヒルシャーの方針で、(比較的)軽い洗脳で人間性を残されたトリエラ。
両者に共通することは他の犠体と比べて人間的であることだ。
ジョゼの贖罪の道具としての印象が強いヘンリエッタ。
感情に乏しく、ジャンの復讐の道具だったリコ。
運命に翻弄されて、ただ壊れていったアンジェリカ。
クラエスはどちらかというと語り部的な役割が強いから、、まあ、選ばれにくいだろうな。
彼女らは人間としての葛藤の描写ももちろんあったが、それよりも大人に、組織に、世界に翻弄された不幸な道具としての印象が強すぎたのではないだろうか。彼女らのパートナーの大人たちは、彼女らを見ているようで、実は彼女らに投影した自分を見ている。彼らにとって犠体は贖罪なり復讐なり、なにか別の目的を達成するための依り代である。一方で犠体たちが見せるパートナーへの愛情も盲目的で、洗脳という作為の影が見えてしまう。このパートナーとのかみ合わない一方通行な関係性が彼女らの道具性を際立たせる。
比較すると選ばれた二人は不幸な境遇で足掻く人間としての印象が強い。パートナーとの関係性も教師と教え子、或いは恋人のような、健全で対等な双方向の関係が描かれており、先の4人とは対照的である。
我々と境遇は違えど、物語の中で彼女らは、
等身大の人間として喜び、悲しみ、苦悩して、愛を知る。
彼女らが人間らしく足掻く姿がみんなの心を打ったのだ。
みんな、この哀れな犠体に残された人間性に惹かれたのだ。
つまりは、みんなやっぱり人間が好きなのである。
ちなみにペトラとトリエラ以外を選択したもう一人は、
私の友人の中で最もモラルが欠落した人間だった。
彼の答えは「リコ」。
なるほど、流石である。
そんな私の答えは「アンジェリカ」。
私も、そんなに人間が好きじゃない。
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