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会うのをやめようと思った。

マクドナルドで店員さんが客に怒鳴りちらす動画を見て、こんな人身近にいたらやだな〜と思って朝スマホを手にしたら、セフレから怒りのLINEが入っていた。出張が長引いてしまって、予定していたお出かけをキャンセルしたいと連絡したのが昨日の夜中。

はじめからあてにしてなかった、みたいなLINEだった。どうせ断ってくるだろうと思ってた、とか他にもいろいろ書かれてあり、そのあとに、出張大変だね、体調が心配だよ、と書かれてあった。前半で攻撃してきた分、後半優しくしてバランスを取ったつもりなのかもしれない。

そういう気持ちがよくわかる。僕も昔は好きな人相手だからこそ、ひどいことを言ってしまったり、素直になれなかった。自分が凹んでしまった分だけ、相手を傷つけてしまわないと気が済まなかった。そうしてお互いに疲弊して、最悪な別れを何度も経験した。

僕はもう、この子と会うのは最後だろうな、と思った。大人になってから、もう傷つけられても戦わないと決めている僕は、その代わりに、明らかな敵意を向けられたら最後、もう会わないようにしている。

「付き合いたい」

というふうに何度も迫られた、女の子だった。はじめは干渉し合わない関係が心地いいと言っていたのに。向こうは僕といると落ち着くと言ったけれど、僕は一緒にいると疲れることも多かった。仕事の愚痴が多く、嫌味な言い方も時々してくる。それでも今まで一緒にいたのは、体の相性が良かったのと、嫌味な言い方もぎりぎり敵意までは感じなかったからだ。

応えてくれない僕に対し、向こうも我慢が限界だったのかもしれない。予定をキャンセルすることも何度かあったし、信頼も薄れていたんだと思う。もしも、好きになったのが僕じゃなくて、ちゃんと付き合ってくれて、予定も優先してくれる人だったら、彼女はわざわざ相手を傷つけるようなLINEを打っただろうか。

部屋にはその子が前に来たときの忘れものが少しある。これを自然に返して、水の波紋が消えていくみたいに関係を静かに終わらせる。いつまでも続く関係でないことはわかっていた。そのときが来ただけだ。今までありがとう。あなたの好きになった人が俺でごめん。

出張先のホテルからは海が近い。朝市の海鮮丼を食べに魚市場へ向かう観光客に混じって歩いていたら、何となく海の方へ来てしまった。風が少しあって涼しい。今年は海とか行きたいね、とか話してたことを思い出す。

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細貝祐天
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