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冬季湛水の水田づくり(不耕起栽培・無農薬米)
豊かな圃場をつくるため、冬の間に田んぼに水を貯めることを冬季湛水といいます。
冬季湛水をおこなう最大のメリットは、
メタンガス(CH4)の排出を抑制できる。→ 温室効果ガスを抑える。
地球環境に優しい水田農法の新しい(かつ伝統的な)これからのカタチです。
国際的にみると日本(東南アジア)の水田農法は、メタンガスの排出が二酸化炭素(CO2)に次ぐ、温室効果ガスの要因として問題となってます。
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その他の付加的メリットもたくさんあります。
・水の力を利用して、フラットな圃場を作れる。よって、田起こしや代かきの必要がない。
・稲藁を巻いておくことで、栄養価の高い圃場ができる。よって、肥料を撒く必要がない。
・フラットな圃場に水深5cm以下の水を張ることで、好気性、嫌気性、両方の草の成長を抑制することができる。
ことが挙げられます。
デメリットとしては、
・水利権の問題などでご近所さんに理解が得られないと水路が使えない。
(冬季に水路を使うことで、水路コンクリートが傷むとクレームをつけられたりする)
と聴いたことがあります。
ちなみに、ここの水田の水路はウチ専用なので、特に問題はありませんでした。
2022年1月31日 「田んぼの水入れ」
まずは準備から。
レンゲの種を蒔いた圃場は、びっしり緑です。
ここに水が流れ込みやすいように、鍬で水の通り道を掘ります。
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そして、昨年収穫した稲藁(無農薬)を満遍なく撒きます。
これが田んぼの栄養分になります。
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準備ができたら、水門を開けて水を圃場に流し込みます。
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2022年2月7日 「水路の管理」
1週間経っても、田んぼになかなか水が貯まらないので
山から掘ってきた赤土を埋め、漏れている箇所を完全に塞ぐ。
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穴を塞いだところで、今度は入り(水の供給)を増やすため、水路を遡ります。
川からの取水口(堰)を整理して、水がたくさん入るように土砂を取り除きます。
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合わせて、水路に溜まった砂利を撤去。
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水がたっぷりと溜まってきました。
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さっそく、カラスや野鳥がたくさん集まってきました。
土中にいる小動物や昆虫があわてて、水上に上がってきていて、鳥たちにとっての最高の餌場になったみたいです。
これも生物多様性の一つの現れですね。
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2022年3月10日 「フラットな田んぼ」
やばい!春が近づき、田んぼや畑の下準備にどんどん追われる日々。
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自然農では、なるべく抑草をしたいので、理想は超フラットな水田。
なぜか!?
少し小難しいお話になりますが、、、
土壌には、嫌気層と好気層があります。
つまり、空気に触れるのが好きなヒトと嫌いなヒト。
ヒエは、空気に触れるのが好きなヒト。
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逆にコナギは空気に触れるのが嫌いなヒト。
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ヒエもコナギも、稲作には天敵。どちらも要りません!
てことは、水田の水が地表に限りなく近ければ、ヒエもコナギも繁殖しにくい環境になるというロジックです。
参考文献『ロジカルな田んぼ』
第2章「コナギが減ればヒエが増える」
理屈は分かった!
だけど、現実は凸凹(でこぼこ)満載の田んぼ。
ここは、なんとかしなくては!
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4/12 「種籾(たねもみ)の農薬を使わない消毒」
種籾の温湯(おんとう)消毒は、農薬を使わずに種が病気にならないようにする昔ながらの消毒方法です。
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累計日数温度100℃が目安。現在、水温16℃なのでで6-7日間。
4/20 種籾の播種(はしゅ)=育苗箱への種まき。
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4/30 「圃場に移す」
屋内に寝かせていた籾種から、芽が2cmほど出てきたので、田んぼに移動します。
なるべく圃場の環境に近いところで育苗します。
(少しでも早く圃場環境に慣れさすため)
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5/15 「冬季湛水田んぼの準備」
代かき開始です。といっても、ここは自然農水田なので、トラクターやコンバインといった重機は一切入れません。
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この時、草を一緒に剥ぎ取ることにより、枯れて栄養分になっていきます。
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田んぼの表面をかくことで、土が舞い上がり、均一なレベルのふわとろ層が出来ます。
5/21 「やばい!!苗が萎えるっ!?」
播種から1ヶ月。
うっかり2日間水やりを怠ってしまって、カンカン日照りの中、
苗ちゃんたちは、、、
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急いで師匠に連絡すると、安心してください。
「まだ枯れてないから大丈夫!」
とのこと。ホッ、、
これは自然の生理現象だそうです。
苗ちゃんたちは、水がなくなると「緊急事態宣言」を発令!して、
これ以上、光合成が進まないよう(光合成は水分をたくさん必要とするため)
葉っぱを自ら丸めて、休眠モードに入るそうです。
自然って
スゲー!!
改めて水をやったら、しばらくして無事に元の苗ちゃんたちに戻りました。
やっぱ自然てすごい!と痛感した1日でした。
5/28 まもなく田植え!
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JAから育苗箱を買うと綺麗に一律に整った苗箱が届きます。
これが、いざ自分で殺菌材消毒をせずに種籾(たねもみ)から自然に育てるといかに難しいことか!と。。。
でも、その殺菌や肥料を使わず、厳しい環境で生き延びた強い種が、結果的にすごいパフォーマンス(質と量)を生み出してくれることも、よく分かりました!
6/8 お田植え
いよいよ、田植え(手植え)の季節です。
冬からずっと水(と稲藁)に浸けて栄養分たっぷりとなった圃場。
少し栄養過多の可能性もあるんで、水を落として今一度、土を洗い流します。
一般的な手植えは、水を張った状態で、ヒモをガイドにして植えていきます。
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しかし、今回は水を落とした状態のまま、圃場にレーキで線を引き、それを目印に植えていきます。
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この方法だと、ぬかるみに足が取られることもなく、またしっかりと植え付けることができます。
不耕起栽培の圃場は、文字通り耕していないので、一般的な水田と比べるととても硬いです。ここに水をいれると、表層5cmはフワトロ層、そこから下は硬い地盤のままとなります。
結果的に稲の根が、垂直ではなく、水平に広がって生えていくので、しっかりと稲穂を支える丈夫な根ができるという仕組みです。
台風で倒れたりしない丈夫なお米が期待できます。
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また、通常の慣行農法では、条間20-25cmで、1ヶ所に3-4株植えるのがスタンダードですが、自然農では条間30-50cm、1ヶ所に1株だけの植え付けです。
ですので田植えが終わった状態は、慣行農法に比べて、だいぶスカスカに見えてしまいますが、ここから自然の力で株が分けつしていき、タワワに稲穂が実っていくという訳です。
自然農では、米は密植ではなく疎植が原則なのだそうです。
いもちなどの稲特有の病気も、疎にすることで風通しよく、伝染を防ぐ効果があるようです。
「密ではなく、疎にすることで、伝染病を防ぐ」
なんだか人間界と同じですね。
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さぁ、これからは草との勝負です。
しっかりと草引きをしながら、水の管理をしていきます。
(続く)