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大地球の怪談 「火の前」

 『今、火の前にいます。』

そう留守電に残して、田中は姿を消した。
私はこの件について、まったく心当たりがない。
彼の周りの人間にも、心当たりがあるか聞いたが

 『火ってあれやん(笑)便利なやつやん(笑)』

 『オチンチーン!(ライディーンを奏でながら)』

 『テレビの常識をぶっ壊す!』

 『誰?』

という返事ばかりだ。
はっきりいうと、全員頭が悪すぎる。
一体どういう生活をしていたら、こんな奴らに慕われるのか。
甚だ疑問である。
とにかく手がかりがない。
そんな絶望の中、一通のメールが届く。

 『はじめまして、"ブラウニー高岡だヨ!" というものです。
  先月姿を消した、田中さんについて何か情報を提示できるのでは
  ないかと思い、
  ご連絡させていただきました。
  よかったら私の家で話しませんか?
  コーヒー派ですか?
  紅茶派ですか?
  それとも、、、
  スリザリン派ですか?(笑)マルフォイマルフォイ(笑)
  返事まってまーす❗️😀👍
  ビヨンセッ』

とのことだ。
"ブラウニー高岡だヨ!" ですか。
名前から見るに、どう考えてもこの件の鍵を握っているに違いないだろう。
そして三日後、私は "ブラウニー高岡だヨ!"(以下、ブラウニーと略す) の家に
向かった。

ブラウニーの家は山奥なので、車で行くことはできない。
森に住んでいるリスが知性を身に付け、うんこのまきびしをまいているからだ。
『早くブラウニーの家へ行かなければ』と思ったが、足が動かない。
私のGoogleマップが、地球史上最悪のルートを示したからだ。
私の足腰耳鼻口臀部が悲鳴をあげている。

 『死ぬ‼️‼️‼️‼️‼️‼️‼️‼️‼️‼️』

私は必死に叫んだ。
こんなことをしても、誰にも気づかれず、ただ体力を消耗するだけなのを分かった上で叫んだ。
すると、目の前にポッと光が灯ったんです。
私は一目散に光に駆け寄り、それがなんなのか確認しようとしました。
そして光の前に立った時、その正体が分かったんです。
この熱気、触ったらダメ感、IHの普及により消えていくものランキング1位感。
火だ。
私は今、火の前にいる。

そして私はもう助からないと悟り、連絡先の人間に片っ端から留守電をかけ、
遺言を残しました。
いつのまにか私も田中になってたんです。
それから油屋で売上一位のスーパーブラジリアン踊り子になるんですけど
それはまたのちの話で。


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