[ゼミログ] 観劇(1):『フレ フレ Ostrich!! Hayupang Die-Bow-Ken!』

note初投稿です。はじめまして。
環境情報学部3年のほしのと申します。
音楽の研究会に属しながら、第一回のログを書いたモハさんの作品制作に参加させていただいてます。
また、高校の頃から演劇をやっていて、サークルなど学生演劇の運営にはそこそこ携わりました。

さて、この記事は2021年度から始まった、SFC演劇自主ゼミ(x-Performanceゼミ)の10/13の一コマのログとなります。
演劇ゼミの説明や経緯などに関しては、先輩方の記事を添付するのでご覧ください。

演劇ゼミに半年入ってみた感想としては、たとえ自分とは嗜好が違う人とでも、幅広い演劇のテーマについて話し合える貴重な場になっていると感じています。
劇団はもちろん、サークルや部活などの創作団体では、劇団員の趣味嗜好に応じて議論が平行線になってしまうことがある気がしています。
一方、探究をテーマにする当ゼミでは、分け隔てなく演劇の知識や感想を交換できる場になっていると思っています。

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今週のテーマ:作品議論『フレ フレ Ostrich!! Hayupang Die-Bow-Ken!』

春学期は演劇史や今の演劇をとりまくトピックについて調べ報告、意見交換をする形がとられていましたが、秋学期になり、より具体的に、実際の作品をテーマに、それをゼミ生全員で観た上で議論するという形式を試してみることとなりました。
第一弾の題材として、東京芸術祭のプログラムの一環として、ジェームズ・ハーヴェイ・エストラーダ(フィリピン)、Aokid(日本)、額田大志(日本)のディレクターチームによって、10/6~8に南大塚ホールで上演された『フレ フレ Ostrich!! Hayupang Die-Bow-Ken!』を取り上げました。

東京芸術祭2020 APAF Exhibition で注目された作品をリクリエーションした本作は、オンライン&南大塚ホール、2つの会場をつないで行われるハイブリット作品です。劇場公演のオンライン配信でもなく、オンライン演劇でもない新しい体験がアジアの若手アーティストの協働で生まれます。(東京芸術祭2021 Webサイトより)

この作品の最大の特徴は、上記の通り、オンラインとオンサイト両方に演者と観客がいて、それを織り交ぜたハイブリット形式になっていることです。オンライン側ではzoomが使用され、演者と観客双方が「ソーシャル・アジア・シアター」と命名されたその劇場に集いました。会場である南大塚ホールの様子も、カメラマンによって撮影された映像がzoomを通じて配信されました。一方、オンサイトの会場である南大塚ホールでは、オンラインの劇場の様子がスクリーンに投影されました。演者も、南大塚ホールにいる人と自室からオンラインの劇場に参加する人双方いて、交互、あるいは同時に演技しました。
他にも、ディレクターや演者が複数の国籍で構成され、舞台でも複数の言語が飛び交う国際的な舞台であること、ダンスや生演奏といった様々な舞台芸術の要素が組み合わされていることなど、春学期ゼミで扱ったテーマと近しい要素が複数含まれていることから、この作品を題材として扱いました。
また、ゼミ生の一部が実際にこの作品にスタッフとして参加していたこともあり、制作側と観劇側、両者からの議論が可能となりました。

ゼミでは、一人一人感想を述べあったあとに、それぞれに共通する部分や特に取り上げたいところを中心に議論しました。焦点として上がった主な議題は以下となります。


ハイブリット型演出の面白さと難しさ
まず議論されたのは、今回の舞台の特徴であるハイブリット形式についてでした。面白かった点としては、オンサイトでもzoom上のキャストから十分以上の迫力を感じられたこと、観客を演者として使うような演出がzoomであると映えることなどが挙げられました。また、オンサイトで見ていた観客からは、カメラでの視点と違い俯瞰して劇の展開を見ることができることが面白い、という意見がありました。
気になったこととしては、劇場が二つあるからこその演出過多が挙げられました。例えば、オンラインでメインの筋書きが展開されている際に、オンサイトでもサブの芝居や次の芝居のための準備が展開され、観客がどこを見ていいかわからなくなったことがその例として挙げられます。
ハイブリットになったことによる面白い表現もありましたが、オンラインとオンサイトでは会場や視点が変わるからこそ、双方に意識を向けて全てを構成することの難しさが確認されました。

複数の演出家
また、この劇は演出家がディレクターチームとして複数いることが特徴の一つですが、それについても議論の対象となりました。複数の演出家を立てることで、逆に作品としての統一感が下がってしまうのではないか、それが演出過多の原因ではないか、という意見があがりました。
他方、制作に携わっていたゼミ生からは、他の劇と比較して会場に入ってからのクリエイションが起きたという視点が述べられました。特に今回は言語と文化、分野も違うディレクターが集まっているため、そうした側面が強化されたのでは、という考察がありました。

カメラの存在
オンサイトでもカメラマンが撮った視点がスクリーンに投影されたことから、舞台上で見えるそのままの絵よりも、カメラマンの絵のが面白かったという、舞台とカメラの意義を問う意見が挙げられました。そこから、カメラマンの振る舞いや、映像と生の切り替えについての議論が行われました。事例として、撮影者がともに踊りながら撮った暗黒舞踏の映像や、大規模なホールだがアップのモニターを使わなかったPerfumeの公演の事例が取り上げられました。


zoomというツール
今回のオンライン劇場のツールとして使われたzoomにも注目が向けられました。特にオンライン授業に慣れた私たちのような学生は、「オンライン」ということよりも「zoomである」ということに意識が向けられるという、コロナ禍の日常による意識の変化の気づきが取り上げられました。
一方で、zoomならではの画質や音質に"エモさ"のような感覚を覚えそれを楽しんでいるのでは、という意見もありました。

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他にも議論されたことはありますが、以上が主な議論でした。コロナ禍からオンラインを活用した演劇については様々なところで探究が行われましたが、実舞台と組み合わせる際にどのように演出するか、というテーマはまだまだ探究の余地がありそうだ、と思わせる議論だったと思います。
次回のゼミは「地方と演劇」の予定です。

次回のゼミは「地方と演劇」です。
我々が生活や活動を行っている東京(神奈川)から離れた地方において、
演劇を含めたパフォーマンスアートがどのように展開されているか、
県や市などとどのように連携しているかなどについて調べてきたうえで議論しましょう。
例えば、青年団が拠点を移した兵庫県豊岡市やSCOTの拠点である富山県利賀村、
静岡の公立文化事業集団であるSPACなど演劇だけでも議論できる例が多くあると思います。

番外:x-Performance

会の終わりに、ゼミの名称についての議論がなされました。ひとまず、これまで演劇だけでなく舞台芸術やパフォーマンスといった周辺を扱ったことから、SFCのアカデミックプロジェクトである「XD(エクス・デザイン)」をもじり「x-Performance」という名称になりました。
演劇のみならずパフォーマンスにも関心ある方、興味あればご連絡ください。

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