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oilje/오일제 茶室のようなわかめスープのお店@韓国ソウル
2024年12月末に家族で韓国旅行に行ってきた。きっかけは息子(12)が中学校の先生からお土産にもらった薬菓。韓国の伝統菓子で、韓国ではスーパーなどでも売っている定番のもの。これがヤングドーナツみたいで美味しかったということで韓国への興味が湧いたよう。その後、大好きなYoutubeの'Kevin's English Room'の韓国の食生活1週間の動画を見たことによって、行ってみたい気持ちが盛り上がり。
ちょうどJALのマイルがたまっていたので、冬休みの予定を調べてみると往復15000円くらいでチケットが取れることがわかり、とんとん拍子に話が進んだ。
今回の旅の中で最後に訪れ、もっとも印象に残ったお店が、わかめスープ1品(と食後のジェラート)しかメニューのない、わかめスープ専門店のoilje(オイルジェ/오일제)。
韓国に詳しいなかしましほさんの本で紹介されており、今まであまり意識することのなかったわかめスープに俄然興味が湧く。
予約しないと入れないことも多いと聞き、1週間くらい前に公式のInstagramに英語と翻訳ツールを駆使して書いた韓国語でDMを送った。1日も経たずに返信があり、第1、第2希望は無理だけれども第3希望の日程なら空きがある、と。その日の夜の便で帰国する予定だったので、最後の昼ごはんに間に合って良かった!とその時点で心が踊る。
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暖簾をくぐり、中に入ると、一目見て日本語で「予約はありますか?」と。
13時に予約していることを伝えると、少し早かったようで5分後に来てください、とのことで、少し道を戻り来る途中にあったGourmet Marketという食品店で暇をつぶすことに。
オーガニック食材などもあり、5分では足りないくらいだったが、欲しかった韓国海苔のふりかけを見つけたので即購入。同じものを空港でも見かけたが、値段がかなり違ったのでここで購入して正解だった。
再びお店に戻り、カウンターの席に案内される。
店内は10名ほど入れるくらいの広さで、私たちが行ったときは半分韓国、半分日本からのお客様、という感じ。
メニューは決まっているので、注文することもなく、店主の美しい動きを見つめながらわかめスープを待つ。
ラーメン店のスープのように大釜で煮込まれたスープとわかめを一つずつトゥッペギに合わせ、ぐつぐつと煮ていく所作は無駄がなくて美しく、ついつい無言で眺めてしまっていた。カウンターからよく見えるキッチンは最新のカフェのようにおしゃれだ。スープやえごま粉など、こぼれやすい食材を扱うにも関わらず、キッチンは隅々までとても綺麗で、一つ一つの所作をする度に店主が自然に拭いて清潔さを保っている。わかめスープに真剣に取り組む様子はまるで茶道のようで、この空間は茶室のような緊張感があった。
数分して、目の前に置かれたわかめスープと炊き立てのご飯、そしてタコの塩辛とからし菜のキムチ。このお店特有の食べ方なのか、わかめをしょうゆだれにつけていただいてください、とのこと。
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白濁しているのはえごまの粉のよう。牛骨で煮込まれたスープとトロトロでやわらかいわかめを口にした息子と夫が、隣りで目を丸くして美味しい、美味しい、と呟く。その様子を見て、予約して来て良かった・・!と喜びをかみしめるとともに、わかめスープの美味しさもかみしめる。今までわかめという食材をここまで美味しいと思ったことはなかったと思う。巨文島産の新芽わかめを使っているそう。ご飯はコシヒカリ。大釜でつやつやに炊き上げられている。添えられたタコの塩辛は辛いだけでなく、甘辛くてご飯に合う。辛いものが一切だめな息子も一口食べて、これなら美味しい!食べられる!と。そうはいうもののやはり辛そうだったので、残りは私が全部ありがたくいただいた。
旅行でお店を選ぶときに、私自身が食べたいもの、というのももちろんあるが、家族が美味しい!と喜ぶ顔を見られるかというのが一番の基準である。わかめスープという一見地味なメニューでそれを達成できるか、来るまでは少し心配もあったが、おすすめする方々を信じて良かった!
わかめスープを食べ終わり、当然のようにジェラートを頼む。
この旅で韓国語を勉強し始めた息子が、韓国語で注文したい!というので、オーダーを任せてみた。日本からのお客様も多いので、店主は日本語も英語もある程度話せるようだったが、息子のつたない韓国語のオーダーを聞いた瞬間に、穏やかな表情がくずれ、くしゃっと笑った。あぁ、こんな笑顔もする人なんだ、と感情が動き、少し泣きそうになった。
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出てきたミルクジェラートはココナッツミルクがかかっていて、身体に良さそうなトッピングがたっぷり。ここでも一粒もこぼさずによそう店主の所作の美しさに目を奪われた。
覚えたての韓国語で美味しかった、ありがとう、さようなら、と伝えるわたしたちを穏やかな笑顔で見送ってくれた。お店を出た瞬間に、息子がこれを家でも再現したい!というので来る前に行った食材店にまた寄り、えごまの粉を購入。帰国してすぐに三陸産新芽わかめとダシダ、買ったえごま粉で再現してみた。新芽わかめは美味しく、それなりに近いものはできあがったが、やはり牛骨から取るスープとダシダでは雲泥の差だった。
また韓国に来るときにはぜひ訪れたいお店だ。
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