【登壇報告】RSGT2022|藤井が語る「構想と実行を共にする開発チーム」
採用担当の高田です。
今回は 去る1月5日に、弊社エンジニアチームリーダー・藤井が、
RSGT2022で「非IT企業の宿泊業なのに、なぜDXを推進できるのか?」というタイトルで登壇いたしました。会を主催してくださった皆様、ご参加・ご協力いただいた皆様、誠にありがとうございました!
本記事では登壇で使ったスライドなどを交え、藤井が発表した内容を補足をいれつつ私、高田より紹介いたします。
登壇者本人の藤井の感想は、本人のnoteに記載がありますので、そちらもご参照ください。
登壇概要はこちら↓
https://confengine.com/conferences/regional-scrum-gathering-tokyo-2022/proposal/16167/itdx
冒頭
会社紹介からはじまり、観光業界が置かれているコモディティ化の状況を、事例を交えながら説明。そこから星野リゾートが「脱コモディティ化」を達成すべく「独自の組織文化」を醸成していった話を展開しました。
独自の組織文化
組織文化の独自性説明するために藤井が用いたのは「就業規則」。この内容紐解きを行いました。就業規則全文を紹介することはできませんが、紐解いた「独自の組織文化」を
であると藤井が語りました。
重要と位置付けるフラットな組織文化を実現するために、星野リゾートは様々な取り組みをしています。その一例として、責任者を立候補で決める「立候補制度」を紹介。この制度は、2年目以降の社員なら誰でもどのポストにも立候補し、参加したその他の社員の投票で、採用・不採用を決めているというものです。
重要なのは経営層の一方的な指名ではなく、自発的に立候補をし、一緒に働くメンバーがそれを承認する、一連のプロセス。これによって、「トップではなく、私達チームが現場を作るんだ」という、マインドが作り上がっていくのだと藤井は語ります。
この他に、現場のスタッフ自ら、顧客へ届ける魅力を考える「魅力開発」という取り組みも紹介。醸成されたフラットな組織文化を土台に顧客に近い現場スタッフ自身が、自由に発想をし、イノベーションを起こす活動です。
イノベーションの一例として、青森県にある奥入瀬渓流ホテルの「苔ガールステイ」プランを紹介しました。
奥入瀬渓流のよく知られている魅力は、紅葉。そのため秋のハイシーズンの集客は良かったものの、他シーズンでの集客向上が課題でした。
「集客につながる現地にしかない魅力は何か」と探している時、苔に詳しい現地スタッフが「奥入瀬渓流は苔の宝庫である」と訴え、それを軸に魅力開発をスタート。「苔の魅力開発」は、当時あまりにも斬新で反対意見もありましたが、現場の熱意のもと滞在プランとしてコンテンツ化・売り出したところ、大ヒットしました。
他にも、現場で発想した魅力が商品化され、大ヒットしています。
このような発想やプランが生まれれやすい組織文化の醸成。それ以外にも星野リゾートでは、イノベーションを起こしやすくするための工夫は業務設計にもあると藤井は続けます。
その取り組みの1つが スタッフのマルチタスク化 です。
宿泊業では、食事担当のスタッフは食事のみ、清掃担当のスタッフは清掃のみ、と分業化が当たり前でした。しかしそれによって属人化やセクショナリズムなどが進み、労働意欲の低下・生産性の低下が起こっていました。
そこで1スタッフが顧客の滞在シーンにあわせて複数の業務をこなす、マルチタスク化を星野リゾートは推進。分かりやすいポジティブな変化としてはスタッフの手待ち時間の減少 = 生産性の向上などです。
しかしもっと重要なことは、顧客にあわせてスタッフ自身も動くため、以下のような流れが起こりやすくなることでした。
顧客接点の増加
→ 気づきの蓄積(隠れた顧客ニーズの発見)
→ 新たな魅力、イノベーションの創出
スタッフがマルチタスク化することで、業務の中にイノベーションの源泉が内包されていることになります。
これらの独自の企業文化形成を支える仕組みとして
「マチュアな価値観」を規範とし自立的組織を求める文化が星野リゾートにあること、その上で「明確な戦略共有」があることや、「素早い意思決定が可能な組織」も藤井から紹介しました。
これら全てを合わせ、藤井が感じたことは、
既に企業文化の中に
「滞在体験」というプロダクトに対してアジャイル開発のベースが存在していた
ということです。
では、その組織文化の中で
宿泊体験を作り出すためにシステムやチームはどう変化をしてきたか。
情報システムグループのアジャイル開発の歴史
星野リゾートの情報システムグループが今の形になるまでは、苦労の連続でした。その理由として、自社システムが多岐にわたるにも関わらず、ウォーターフォール と 外部依存体質が長年続いたからだと藤井は語ります。
上記の原因を突き詰めると、いきつくのは・・・
「構想」と「実行」の分断
でした。
構想と実行が離れているため
・意思決定から実現までに時間がかかる
・問題提起と、それを解決するプロダクトが伝言ゲームでリンクしていない
・運用後の改善がしにくい
上記の「分断が生む問題」を解決するべく、情報システムグループは「エンジニアの内製化」に舵をきります。
しかし当時は、代表はじめ経営陣・社内には「餅は餅屋」思想が根強くありました。それでも「内製化にしか活路がない!」と情報システムメンバーは信じ、まずは小さな実績を積み上げることに。そこにジョインしたファーストエンジニアが藤井です。
藤井が注力したのは、小さな実績を積み上げること、そして
「構想と実行を近づけるべく」体制をシンプルにすることでした。
最初は小さいながらも着実に成果を上げ、1年後には代表をはじめとした経営陣の信頼を獲得するまでに至り、エンジニアの増員に漕ぎ着けることができましたのです。
そしてエンジニアチームの真価が問われたのは、まさにこのコロナ禍における対応だったと語る藤井。厳しい市場環境の中、経営陣と密に連携し、生き残るために必要なプロダクトを短納期かつ確実にリリースしたと言います。
大浴場混雑可視化プロダクトに関しては、以下のnoteに詳しく書いています
ので興味ございましたら、こちらもご参照ください。
そしてリリース後も、現場と連携しながら改善を続けています。
厳しい環境下でも、メンバーが一丸となって対応できたのは、今まで説明してきた、組織文化、多能工化などで培ったきた取り組みが大きく下支えしたことが大きかったと藤井は振り返りました。
現場出身者の活用
構想と実行を近づけるため、情報システムグループはチームビルディングにおいて、現場出身者を重要視していると藤井は続けました。
ノーコードツールの出現をはじめ、エンジニア以外のメンバーがプロダクトに関わる敷居は昔と比べ低くなっており、能力を高める仕組みを構築すれば、現場出身者の活躍は実現可能であり、メリットも大きいです。
ノーコードツール、弊社では主にkintoneを採用していますが、現場出身のメンバーがこれを使いこなし、布教することにより、情報システムグループ以外の、全国の施設にいるメンバーも、自身でアプリを開発することができるようになっているという社内状況を紹介。
プロダクトオーナーのポジションにおいても、現場出身者がチームで切磋琢磨することによって、高いスキルを保有するまでに至っています。
DX時代をどう生きる
これらの状況を我々を取り巻く環境をあわせて考える際、藤井は改めて経産省のDX定義に照らし合わせて、星野リゾートの現状を整理すると以下のように説明しました。
「デジタルで変革を起こす」のが目的ではなく、競争上の優位性を勝ち取るという本来の目的を達成するために、デジタル化能力 / DX が必要だと語る藤井。
「顧客の滞在体験」というプロダクトにおいてイノベーションをおこし続けるには、引き続き「構想と実行の分断を生まない」ことが重要。そのためには現場がもっとITを活用することが大切であり、それを促進し支えるための高度な技術をエンジニアが担っていくことが必要であると熱く語りました。
最終的に「私達が目指していく世界としては、アジャイル / スクラムにマッチした企業文化をベースにして、現場にまでスクラムをスケールさせることを目指している」と締めくくった藤井。
そして藤井は最後に、
「私達は、IT企業でもなければDX推進部でもありません。しかし一宿泊業者としてITを使いこなし、フラットな組織文化をベースにアジャイル開発をしていくことで、まだ見ぬ「顧客の滞在体験」を提供出来たらと考えています。」と語りました。
以上、藤井の登壇を紹介させていただきました。
当日、藤井のプレゼンの後、何人もの方からご質問をいただき盛り上がりました。私たちの組織文化や開発チームについて、すこしでも多くの方の興味をいただき嬉しい限りです。
今後もnoteを通してどんどん発信していきたいと思います。
長文最後までお読みいただき、ありがとうございました!
弊社は「まだ見ぬ宿泊体験」を一緒に作るエンジニアを募集しています。