無量寺に襖絵を見に行ってみたい人に「取材ディレクターが教える串本の旅行ガイド」
和歌山県串本町の無量寺まで、芦雪や応挙の作品の数々をご覧になりたい方にアクセス方法や周辺の飲食店、観光情報など私の経験を元にご紹介いたします。
ちなみに私、初めての串本旅行を前にわくわくした気持ちを抱えつつ『まっぷる南紀』を購入したのですが、紙面には全く「無量寺」が紹介されていませんでした。えー!? そんなにマイナーな存在!?
でも現地に行って、龍図と虎図を間近で見て、
来てよかった!超最高!
素晴らし過ぎる!
ここに来ないと、こうは見られないし、気になっている人がいるなら絶対絶対絶対行った方がいいよ!!と鬱陶しく断言するまでになりました。
本仮屋ユイカさんは無量寺で涙していましたがこれはマジなのです。そのくらい見る者の感情を揺さぶる凄い作品なのですから。
文化財を守ったアクセスの悪さ
無量寺さんの住所は、和歌山県東牟婁郡串本町串本833です。あんまり行かない場所ですよね。
ですが、このアクセスの悪さがいずれ国宝になるであろう作品を守りました。
よく引き合いに出しますが、美術史家の山下裕二先生が私に言った言葉です。
「京都あたりには貴重な襖絵のお寺とか、沢山ありそうな気がするでしょ? でも焼けちゃったり改変されたりして、大乗寺みたいに残っている所って他にないんだよね。結局、香住と南紀に残ったんだよ。」
私、香住の大乗寺さんにはご縁があって何度も行かせてもらったんですが、ずっと行ってみたかったのが、香川県の「金刀比羅宮」と、和歌山県の「無量寺」でした。
今年はこれを全て叶えてしまいました。
ちなみに本仮屋ユイカさんも大乗寺を訪ねたことで襖絵の愉しみに目覚め、今年プライベートで「こんぴらさんの若冲展」を訪ねたとか。「でも、若冲より応挙の虎が良かったです!」とのこと。意気投合。まるで自分と話しているようでした。(余談終わり)
①羽田空港から南紀白浜空港へ
東京から最短で行くことを考えた場合です。
航空会社はJAL一択。
1日3便ある「羽田」から「南紀白浜空港」行き。
羽田空港 第一ターミナル。
お友達と待ち合わせするなら、最寄りは検査場「F」です。
②南紀白浜空港からはレンタカー推奨
南紀白浜空港から車で1時間です。
レンタカーを借りるのが良いと思います。
ただし、超絶注意点があります。
無量寺の周辺は漁師町独特の狭い路地が広がっており、車で行くなら、小さめの車や軽自動車推奨です。
私は取材のために無量寺さんを2回訪れています。
1回目は飛行機に乗り、レンタカーのヴィッツを借りて行きました。
2回目は、撮影スタッフと機材を大量に詰め込んだロケ車「トヨタのヴェルファイア」で東京から串本まで行ったのですが、何度も何度も、狭〜い道を往復することになりました。
動画を撮ってみました。
③行ったら何が見られるの? 事前学習
行けばそれなりに感動があるものですが、眺めるだけでも長沢芦雪の本を見ておくと、現地でより深く感動できるので参考文献をこちらに置いておきます。
参考文献① 福田美術館の学芸課長 岡田先生の本
参考文献② 府中市美術館の学芸員 金子先生の本
さらに現地に行くと、売店で『ようこそ無量寺へ』という1冊まるまる無量寺の所蔵作品集があるので、そちらもオススメです。
④いざ、無量寺! まずは「収蔵庫」へ
無量寺には、見学可能な建物が2つあります。
1つは「収蔵庫」。こちらはマスク着用です。なにしろ襖絵はガラスケースに入っていません。作品を剥き出しで見ることができます。喋ったりして唾が飛んだりしないよう、マスク着用となっています。
大乗寺や金刀比羅宮では廊下からの鑑賞でした。わりと離れた所から襖を見なければなりませんでしたが、ここは違うのです。かなり間近で芦雪の筆を感じることができます。迫力満点で味わうことができるはず!
さらに、ここには芦雪だけでなく、応挙作品もあります。
元々、無量寺から障壁画の製作依頼をされたのは師匠の円山応挙でした。再建する無量寺の本堂は6部屋もあります。ひとりで全部やるのは、かなり大変。
そこで応挙はどうしたか。
とりあえず、本堂の貴賓室にあたる「上間一之間」の絵だけ、自分で描くことにしました。仙人たちが波の上に浮かんでる、ちょっとシュールな絵を描いています。《波上群仙図》と言います。
これを京都のアトリエでサラサラッと描いて弟子の芦雪に持たせ「残りの5部屋、あと全部頼んだわー」と串本に派遣したわけです。
だからこの収蔵庫では、芦雪5作品、応挙1作品が見られます。
さらに、この収蔵庫には岡田先生が「真贋が怪しい」とおっしゃる猿回しを描いた衝立を見る事ができます。この作品は発想がとても面白いので、芦雪が描いたものを誰かが真似したのかな?と個人的には思いました。
⑤無量寺、続いて「本館」です。
無量寺、もう1つの見どころが「本館」。
実はここが凄いんです、色々な意味で。
メインとなるのは、芦雪と応挙の掛け軸です。かなり力のある作品で、ここだけでも結構な充実感を味わうことができます。
さらに、ここにはなんと無量寺さんが所蔵する若冲、白隠、狩野探幽といった人たちの掛け軸もあり、普通に「ここで、こんな作品まで見られるなんて!」と目がまんまるになります。
若冲が描いた髑髏の掛け軸があるんですが、これがかなりモダン。上にアルファベットを書き込めばロックTシャツみたいな雰囲気でめっちゃ面白いです。
そんな20点近くの掛け軸が、こちらも剥き出しで展示されているんです。
ガラスケースに入っていません。
私がお邪魔したのは暑い季節だったので、館内では扇風機が回っていました。なんと、その風を受けて掛け軸が揺れているではありませんか。
大らかだ!昭和や!こんな場所がまだあったとは!!と、朗らかな気持ちになりました。
そこには無量寺再建にあたっての棟札であるとか、応挙が再建のお祝いに贈った「盃のセット」なんかも展示されています。覗き込むと思わずニヤリとすること間違いなし。盃の中に「応挙犬」がいるのです。是非現地でお確かめを。
さらにさらに。
この本館では、なんとこの地域で出土した「縄文土器」など遺跡の出土品まで展示しているんです。
誰得!? 俺得や!!
行政の方で展示するスペースがなく、預かったものを展示しているんだとか。
そんな縄文土器たちはガラスの展示ケースの中に入っています。
スーパースター江戸絵師たちの掛け軸と、古代の出土品が同じ所に展示されているカオス空間です。テンション上がること間違いなしでしょう。
⑥貸出中かもしれません<要 事前確認>
無量寺に行くのなら長沢芦雪の代表作『龍虎図襖(重要文化財)』を見たいですよね。
でも、展覧会に出ていることもあるので、ホームページの「お知らせ」を見て確認を。
ちなみに直近はこんな状況のようです。
つまり、11月中旬から12月、そして1月中は無量寺で「龍虎図」が見られそうです。芦雪が紀南に滞在したのもこの時期でした。是非、冬に暖かい串本を訪ね、無量寺へ足を運んでいただきたいと思います。
⑦運次第の本堂見学
山下裕二先生は著書『未来の国宝・MY国宝』の中で「無量寺に行ったら是非本堂を訪れて欲しい」と書いています。本堂には芦雪、応挙の襖絵のレプリカが設置されていて、実際の仏間を挟んで鎮座する「龍虎図」はかなり迫力があります。
しかし!
現在、無量寺さんでは基本的に本堂の見学はできません。
本堂で法事が入っていることもありますし、なにしろ本館・収蔵庫の見学も係員さんのワンオペのようなものなので、手が足りません。
ですので、たまたまお天気も良く、係の方の手が足りていて、法事もなく、お寺さんに余力があり、(ここからは想像ですが)お客さんの芦雪に対する熱量が感じられた時にだけ「本堂の方もご覧になりますか?」となります。
ですので、本堂が見られたら、それは超ラッキーだと思ってくださいませ。
ちなみに、応挙が担当した本堂の貴賓室にあたる「上間一之間」には、後に、14代将軍徳川家茂が宿泊しています。
⑧周辺観光ガイド
番組スタッフが泊まったのは、ダイワロイヤルホテルです。
(以下、詳細は画像をクリックすると公式サイトに飛びます)
串本駅前では、是非、名物「かつお茶漬け」を食べてもらいたい。お店の名前は「萬口」と言います。
行き帰りのどちらかで是非寄って欲しい場所があります。
南紀白浜空港近くの食のテーマパーク「とれとれ市場」。ここ、凄い施設でした。何時間でもいられそうです。
無量寺本館の売店にも「芦雪」グッズが販売されていますが、市内で他に芦雪印のお土産と言えばこれしかありません。串本町にある和菓子店「儀平」の『芦雪もなか』です。串本の絶景「橋杭岩」の前にお店があります。橋杭岩には無料の駐車場があり、便利でした。これは数十年前に無量寺さんが許可したというオフィシャルグッズです。
参考になりましたか?
串本の無量寺、本当にオススメですので、是非是非、行ってみてください!!
こちらも是非💁