『東京15期未解決事件』配信視聴
ニューヨークの事は勿論、大好き。
ゴールデンラヴィットでオーケストラを従えた嶋佐OASISには、ウオォオオオオ!!と熱いものが込み上げてきた。
ただ、『東京15期未解決事件』は、奥田泰監督の最新作だと思ってる。
奥田さんの新作見なきゃ!って気分。
過去作を経てきて、私は完全に奥田泰監督を信頼している。
こんなエンタメジャンルを他に知らない。
これは「ニューヨークofficial channel」が開発してきた特殊なエンタメだとしみじみ思う。『ザ・エレクトリカルパレーズ』、『さよなら花鳥風月』、『シン・りょう』ときて、最新作『東京15期未解決事件』。お笑い芸人同士の人間関係のいざこざを探してきて面白がる、軋轢発掘系バラエティー。
このいずれに対しても、最初のテンションとしては「別に芸人の人間関係に興味ないしなぁ」なんて思いつつ見始める。それなのに、見終わる頃にはジーンと来て、見終わってから数時間アレコレと自分の過去のことを思い出したりして、気がつくと深い余韻に包まれていたりする。心の底から「見て良かった」と毎回思う。
『東京15期未解決事件』もまた、名作だった。
なんだこの気持ち。
胸がドキドキする。
閉じた蓋を開けられる思い。
まだ配信が見られるので、「これから」と言う人は、とりあえずこのリンク先に飛び、「① 今明かされる過去、同期のフィクサーとは?」から、動画を楽しむべし!
『東京15期未解決事件』はまず、様々な完成度がこれまでよりもグッと高い。
取材VTRを視聴するニューヨークと鬼越の様子は、ほぼテレビ番組。作り込まれた動画コンテンツとして、『シン・りょう』の時よりも相当ブラッシュアップされている印象を受ける。
配信ライブも、出演者のやりとりは抜群の安定感だった。見やすい。的確。華がある。
トーキョーナイトフィーバーのネタにも笑ったし、感心してしまった。さすが、できる人たちだなぁ!
配信ではフリー音源に差し替えられているエンドロール。こちらの曲をBGMにもう一度見た。これから配信を見る方は、エンドロールになったら本編の音をミュートして、この曲を流すと良い。それが監督の演出意図だから。
見終わって静かに、自分の中で閉じていた蓋が開き始めた。
奥田監督のこのシリーズ、毎回「自分はどうだったか?」を思い起こさせる不思議な力が働くようになっている。
モラトリアム。
社会に対して自分が何者でもない頃。
同じような若者が集まった時間と空間。
青春時代のようなもの。
自分はどの位置にいただろうか?
当事者なのにどこにも関わっていない「カズ(嶋佐)」って俺だな、なんて思って見ていた。この感じ俺っぽいなぁ、なんて。見ている時は。
でも、見終わって思い出した。
そんな事ない。ある輪においては確かに嶋佐だったが、ある輪においては完全に坂井だったし、アントニーだった。
こんな楽しいライブに昇華できないような、エグいエピソードと苦い思い出が一気に押し寄せてきた。我々もまた若く、尖っていて、不器用だった。異性にも翻弄されていた。
なんならその中心にいたじゃないか。
すっかり忘れて無かったことにしていた。
ヒロチョの恋も、横澤夏子の確執も、自分にもあった物語じゃないか。こんなこと思い出したくなかったのに、今どんどん開いてきて胸が痛い。
青春時代に悔いがあるのかもしれない。
こんな気持ちになっているのは私だけだろうか。
人は青春時代の未解決事件を抱えながら生きている。さらに言えば、青春を青春らしく謳歌出来なかった未練を引きずって生きているのだ。
普段は勿論そんなこと考えていないのに、忘れた頃、ニューヨークと奥田泰が開けにくるから困る。
長い余韻を残すのは傑作の証。
素晴らしかった!
見逃し視聴は3/6(月)まで。
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