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俳句連作「逢魔」 #BFC5落選展

  逢魔

鎧より花の香のする館かな

鏡その枝垂れ桜を映さざる

雲は地を忘れて軽し夕つばめ

放蕩や空に風船食はれをり

春昼の月を盗みし鷹一羽

梅ひらく一夜を谷の鳴きつづく

雉歩む山の暗さの首掲げ

うみどりの死ははつなつのうみのもの

全山の葉の嘶ける天狗かな

藻の花も藻に咽まれたる俗世かな

くちなはは殺めしもののかたちへと

蛇つるみたり仏像の半まなこ

便所より河童のこゑのやうなもの

鬣を隠され夏の秩父かな

扇風機いつしか木霊じみてをり

閻王や此の世を乱す夜の河面

鷹鳥を祀るが聲を食人墓

妖刀を新月がしたたつてゐる

月は緋にまなこは闇に猿の神

龍淵に潜む陶器のうすき罅

機機械械音音蜘蛛之囲之蜻蛉

窓口にオクラの神と名乗りをる

真面目とは囚はれること後の月

色鳥の喉より血の池のひかり

みなマスクして月蝕へ手を伸ばす

神木を伐るや狐火まはりくる

啾々と雲を吐きたる枯尾花

いつはりの人魚の木乃伊より雪片

さみしさは飢ゑと親しき雪女

三十槌の氷柱におほかみのけはひ

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