お豆腐の発酵と腐敗の経過に自分の姿を重ねる
私は時々、腐る。
冷蔵庫の上から2段目の棚の
左隅のいちばん奥にひっそりとある
小さな真空パックに入った
お豆腐のように。
白く形の良いパックは、一見
何でもなくそこにあるようだけど
透明のフィルムの中をのぞいてみると
なかなか大変なことになっている。
私はそのお豆腐に
自分の姿を重ねる。
お豆腐=私を浸している水分が
お豆腐である私から溢れ出ているだろう
ネガティブエッセンスで濁り始める。
視界が悪くなってきて
私は目が開けていられなくなる。
お豆腐である私から溢れ出ていた
ネガティブエッセンスが
完全に流れ出てしまうと
私はひび割れを起こし始める。
それがなかなかの
強い痛みを伴うものだから
私は痛みを感じたくなくて
ひたすらひたすら眠り続ける。
私は、存在はしているけど
もはや
自分が自分だと感じない状態へと
静かに形を変えていく。
冷蔵庫の扉の開閉の振動で
時々目を覚ますけど
ひび割れた苦痛は
どんどんひどくなっていくから
もうイヤだ!と投げやりになって
ふてくされて、また眠ってしまう。
ハッ!
最後に痛みを感じてから
どれだけの時間が経っただろう。
「コレ、ずーっとココにあるよね」
ひび割れたお豆腐となった私は
だんなさんの何気ない
冷蔵庫チェックによって目覚め
しかるべき場所へといざなわれる。
月曜日
ひび割れたお豆腐となった私は
♪ドナドナド~ナ~ ド~ナ~状態で
決められた袋に入れられて
決められた場所まで運ばれて行かれる。
火曜日
ひび割れたお豆腐となった私が入っていた
白く形の良いパックは
透明のフィルムがはがされ
キレイに洗われて
こちらもまた
決められた袋に入れられて
決められた場所まで運ばれて行かれる。
このお話は
とあるお宅の冷蔵庫の中に
長い間放っておかれて腐ってしまった
よくあるお豆腐の物語である。
そしてこの物語から
私の中にこんな“脳内ファンタジー”が生まれた。
私のだんなさんは
普段の生活の中で
お豆腐である私を
決して
見過ごしているのでも
忘れているのでもない。
お豆腐である私の状態が
発酵している感じなのか
腐敗している感じなのか
経過観察をしているが如く
静かに見守っているのだ。
そして
どうにもこうにも
心根が腐っていく私をチラ見して
絶妙のタイミングで
いつもの私を
思い出させてくれるのだ。
うるわしきMEOTO美談・・・?( ˘•ω•˘ )
普段の私の暮らしは
もう一人の自分と
おしゃべりしている時間が長い。
だから、ついつい私は
世間に毒づき
そのうち自分に毒づき始め
自分のことがイヤになっちゃったりして
わざわざ自ら進んで
心根をどうしようもなく腐らせにいく。
でも
何気なくだんなさんが向けてくれる視線は
私自身が今、ココに存在しているコトを
確認させてくれるのだ。
それはまるで
長い間放っておかれて腐ってしまった
よくあるお豆腐の物語のように
繰り返しになるけれど
うるわしきMEOTO美談・・・?( ˘•ω•˘ )